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[社説]岸田首相退陣へ 世論に見放された末に

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月15日 4時0分

 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選に立候補しない意向を明らかにした。

 ここにきて突然、不出馬を表明したのはなぜか。

 首相は派閥の裏金事件などを理由に挙げる。「組織の長として責任を取ることにいささかのちゅうちょもない」

 この説明はにわかに信じ難い。低迷する内閣支持率が示すように、首相は国民から事実上の不信任を突き付けられたのだ。

 党内からも「今の政権では次の選挙は戦えない」と交代論が噴出した結果、事態打開の展望を見いだすことができず、立候補しても勝てない可能性を感じ取り、身を引いたのではないか。

 6月に成立した改正政治資金規正法は、検討課題を列挙した生煮えの内容で、とても政治改革だと胸を張れるような中身ではなかった。

 各選挙の低投票率が示すように政治不信は深刻だ。

 政党に対する信頼が失われ、政治離れがさらに進むことになれば民主主義の土台が揺らぐ。

 自民党が、総裁選で「新しい顔」を誕生させ、その勢いで次期衆院選に臨む、という政局的発想に終始し政治改革を怠れば、有権者から愛想を尽かされることになるだろう。

 首相は会見で、今回の総裁選で「新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要だ」と強調した。

 繰り返すが、不人気な「党の表紙」を替えるだけの総裁選であってはならない。

■    ■

 支持率低迷に苦しみながらも岸田首相の在職日数は千日を超え、戦後の首相としては8番目に長い政権となった。

 宏池会を率い「ハト派」のイメージが強かったが、この3年で見せたのは、その変貌ぶりである。

 他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)保有や防衛費の大幅増を決め、安全保障政策を大転換した。

 沖縄に関しては、復帰50年の式典や慰霊の日の追悼式など重要な場で「基地負担の軽減に全力で取り組む」と何度も繰り返したことを思い出す。

 しかし、ここ数年で急激に進んだのは、その言葉とは真逆の南西諸島の「ミサイル要塞(ようさい)化」という負担増だ。

 民間の空港や港湾を整備し、自衛隊などが平時から使えるようにする動きも加速している。

■    ■

 名護市辺野古の新基地建設を巡って、岸田政権は全国どこにも例がない「代執行」に踏み切った。

 かつてない強権を持ち出して、大浦湾の地盤改良・埋め立て工事を強行したのだ。これにより地方分権改革で示された国と地方の「対等・協力」関係はもろくも崩れ去った。

 沖縄振興では「強い沖縄経済」を唱えながら、実際の沖縄関係予算は減額傾向が続く厳しい状況にある。

 基地問題で対立する県への「見せしめ」的なやり方で、安倍、菅政権同様、沖縄との溝を埋めることは、とうとうできなかった。

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