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[社説]大浦湾側埋め立て 工事中止を強く求める

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月20日 4時0分

 名護市辺野古の新基地建設に向け沖縄防衛局は、20日にも大浦湾側で本格的な工事に着手する。

 環境への深刻な影響、増え続ける巨額の建設予算、軍事合理性への根本的な疑問、県民投票で示された明確な民意-埋め立て工事を巡る疑問は、時がたてばたつほど膨らむ一方だ。

 大浦湾周辺海域には世界有数の「サンゴの森」が広がる(18日付写真特集)。

 防衛局は5月からサンゴ類の移植作業を始めた。

 だが、これまでに移植したサンゴの中には、絶滅危惧種のオキナワハマサンゴのように9群体を移植し7群体が死滅した例もある。

 今回、大浦湾側に生息する約8万4千群体を移植するというが、移植すればいいというものではない。

 専門家は移植時期や移植方法、移植後の評価の仕方に懐疑的だ。

 周辺海域では約260種の絶滅危惧種を含む5300種以上の生物が確認されている。

 軟弱地盤の改良のため7万本以上のくいを打ち込むという大規模工事は、生き物にとって大きな脅威である。

 生物多様性に富む「宝の海」をどうやって守り育て、次の世代に引き継いでいくか。差し迫った課題に背を向けるような計画だ。

 本島南部の激戦地から採取した土砂を埋め立てに使うという話に至っては、正気の沙汰とは思えない。

 こんな重大な問題にも、岸田文雄首相は明確にノーと言えず、あいまいな答弁に終始する。

■    ■

 街のど真ん中にあって米国防長官でさえ危険性を認める米軍普天間飛行場。

 小学校や大学などが隣接するこの「世界一危険な飛行場」に、米軍は日本政府の同意の下に、事故の絶えないオスプレイを配備した。

 1996年に普天間飛行場返還に合意しながら、政府はいまだに返還の時期すら示しきれないでいる。

 工費は膨らむ一方、工期は長引く一方。計画通りに進んでも完成は2030年代半ば以降、工事次第ではさらに遅れることが予想される。

 政府は「一日も早い危険性除去」と言う。「一日も早い危険性除去に向け、あと10年以上は我慢してくれ」というのは、県民を愚弄(ぐろう)するようなものだ。

 今や新基地建設計画は「止められないから進めている」という類いの公共事業になりつつある。

■    ■

 米軍は沖縄占領以来、軍事優先施策を取り続け、事件事故が相次いだ。冷戦の最前線に置かれた沖縄には憲法が適用されず、人権も保障されなかった。

 復帰後も日米一体の基地維持政策が進められた結果、米軍専用施設は今なお全国の約70%を占める。

 一地域に極端に負担を強いるいびつな安全保障政策は、分断と対立を深め、政策の国民的基盤を弱体化させる。

 岸田首相には残された任期の間に「聞く力」を発揮し、工事を中止した上で、県と協議することを強く求めたい。

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