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[社説]大浦湾側で着工 埋め立ての意味を問う

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月21日 4時0分

 「私の心に、くいが刺さったような気分だ」

 名護市辺野古の新基地建設に抗議し、キャンプ・シュワブのゲート前で座り込みを続ける男性は悔しさをかみしめた。

 沖縄防衛局が、大浦湾側の埋め立てに向けた新たな護岸工事に着手し、長く太い鋼管くいを海底に打ち込んだからだ。くいで囲った部分に土砂を入れ、護岸を造成する。

 準備が整えば、海底の軟弱地盤を改良し、他の護岸も整備する。護岸で仕切った海域に埋め立て土砂を投入する計画だ。

 地域住民の利益を守るため、公有水面の埋め立てには知事の承認が必要とされる。その承認が得られないまま、くいが打ち付けられた。

 この海は誰のものか。

 知事選や県民投票で埋め立て反対の民意が示されている。沖縄の自治を踏みにじり、自然を破壊する工事を、日本政府がまたも強行した。

 県は事前協議で7回、290項目の質問を重ねている。水質汚濁による生態系への影響を示すデータがそろっていないことなどから協議は調っていないという認識だ。

 着工を受け、玉城デニー知事は「一方的で誠に遺憾」と批判した。

 失われた環境を取り戻すのは不可能である。埋め立てにどれだけの正当性があるのか。

 県は、司法の場でもたびたび国に説明を求めてきたが、納得できる答えがあったとは言い難い。

■    ■

 その裁判で県はことごとく敗訴し、法的に打つ手が乏しい。県議会は野党多数で、辺野古反対を貫く知事には逆風だ。

 ただ、埋め立て工事がスムーズに進むかどうかは見通せない。

 軟弱地盤の改良では、深い海域に7万本を超える砂くいを打ち込むなど、困難な作業が待ち受ける。再び設計変更になれば、知事の承認が不可欠になる。

 当初見通しの2.7倍の約9300億円とする総工費は、資材や人件費の高騰で膨らむだろう。

 玉城知事は「完成する可能性は極めて低い」と述べ、税金の無駄遣いとも言及した。

 完成まで12年以上かかるとされるが、こうした状況でさらに延びる可能性がある。

 普天間飛行場閉鎖の道筋もいまだに見えない。

■    ■

 翁長雄志前知事は「国防のためとはいえ、十和田湖や松島湾、琵琶湖を埋め立てるか」と日本の景勝地を取り上げ、この海を埋め立てる意味を世論に問いかけていた。

 世界に誇る貴重な海をどう守るか。玉城知事は来月訪米する。沖縄の置かれた不条理を踏まえ、新基地建設の実態を伝えるなど、工事を止める手だてを尽くしてほしい。

 自民党は総裁選に向けた渦中にある。「自民党が変わる」というのであれば、新体制では課題が山積する新基地建設の作業を中断し、県が求めている対話に臨むべきだ。

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