[社説]「南西シフト」賛成76% 本土との溝示す結果だ
沖縄タイムス+プラス / 2024年8月27日 4時0分
日本世論調査会が今月初めにまとめた平和に関する全国郵送世論調査の数字が気になって、今も頭から離れない。
台湾有事を念頭に政府が進めてきた南西諸島への自衛隊配備の拡大、いわゆる「南西シフト」について、調査では賛成が76%を占めた(反対は22%)。その数字のことである。
復帰50年に当たる2022年3~4月に沖縄タイムス、朝日新聞、琉球朝日放送が共同で実施した郵送による県民意識調査の数字と比べてみよう。調査時点はロシアによるウクライナ侵攻が始まった時期だ。
それによると、南西シフトを「よいことだ」と評価したのは57%だった(「よくないこと」は26%)。
調査方法も時期も異なるため単純な比較はできないが、二つの調査結果から浮かび上がってきたことがある。
「南西シフト」を肯定的に評価する声が、どちらの調査でも過半数を占めた。
その半面、安全保障を巡る本土と沖縄の意識の差が大きいことも明らかになった。歴史体験の違いと置かれた現実の違いを考えれば、住民意識に違いが生じるのは当然だろう。
県民意識調査で、台湾有事の武力衝突に巻き込まれる不安を感じると答えた人は実に85%に上った。沖縄戦体験に根差した戦争への強い危機感を反映したものだ。
沖縄では、米軍から「見放される」懸念よりも、米軍の軍事行動に「巻き込まれる」懸念の方が強い。
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80年前の1944年、軍事の空白地帯と呼ばれた沖縄に日本軍部隊が相次いで配備され、学童を含む老幼婦女子の疎開が実施された。
軍事要塞(ようさい)化と住民疎開。沖縄戦体験者は、80年前に起きた現実を今の動きに重ね、「絶対に戦争を起こしてはならない」と、さまざまな機会を捉えて危機感を訴える。
戦後日本の自衛隊イメージは「災害救助」を通して形成された。「国を守る」ことと「住民を守る」ことが一体のものと考えられてきた。
自衛隊はしかし、有事になれば戦闘が本来の任務となる。住民保護は主任務ではない。
自衛隊の元幹部の中には、島しょ防衛において「島内反対派が流すデマ等により民意が誘導されやすい状態になる」と指摘し、情報戦への備えを強調する人もいる。
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自衛隊の情報保全隊に住民監視の役割を担わせるつもりなのだろうか。
沖縄戦が終わって九州各地の疎開先に流れたのは「沖縄の住民がスパイを働いたから戦争に負けた」というデマだった。
情報戦への備えを説くこの一件は、沖縄戦の暗い記憶を思い起こさせる。
平和に関する世論調査で、集団的自衛権の発動による武力行使への賛成は9%にとどまった。この健全性に依拠し「軍事力による抑止だけでは安全は守れない」ことを沖縄の地から発信する必要がある。
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