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[社説]マイナ保険証一本化 混乱回避へ再考求める

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月28日 4時0分

 健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」に一本化する期限が12月2日に迫る。

 ところがマイナ保険証の6月時点での利用率は9.9%にとどまる。このままでは混乱を招きかねない。国民の理解は得られておらず、政府は立ち止まって制度を再考するべきである。

 利用率が伸び悩んでいる理由の一つに、情報管理への懸念がある。

 マイナ保険証に別人の情報がひも付けられて、受診履歴などの個人情報が他人の目に触れる事態が起きた。こうした誤登録は、判明しただけでも計約9200件に上った。

 政府はマイナ保険証の利用を増やした医療機関に支援金を給付するなど、あの手この手で普及に努めてきたはずだ。今年に入ってから利用率は微増したが、それでもわずか1割である。いまだに失った国民の信頼を取り戻せていないことを直視するべきである。

 政府は「デジタル社会のパスポート」として、マイナカードの機能性や利便性をアピールする。保険証をマイナカードに一本化すれば、過去の診療や薬剤の情報などを医療機関で共有できるといったメリットを強調している。

 それでも普及が進まないのは、使い慣れた現行の健康保険証に、国民は何の不便も不満も感じていないということではないか。

 そもそもマイナ保険証の取得は任意であるはずだ。保険証を廃止しての導入は事実上の強制である。

■    ■

 混乱の発端は2022年10月、河野太郎デジタル相が24年秋の廃止を突如表明したことだった。

 利用率が伸びない中で河野氏は今年4月、マイナ保険証が使えない医療機関を政府の窓口に「通報」するよう呼びかける文書を自民党の議員らに配布した。医療機関への圧力ともとれる行為である。

 また文書は、利用率低迷の原因を「医療機関の受付での声かけにあると考えられる」としている。利用率が伸びない責任を医療の現場に転嫁しており、看過できない。

 武見敬三厚労相は、マイナ保険証の利用率に関係なく、12月には保険証を廃止し、マイナカードに一本化する考えを示している。

 求められているのは、国民に対する政府の丁寧な説明である。12月の期限が迫る中、一本化ありきの姿勢は不信感を増すだけだ。

■    ■

 政府は12月以降、経過措置として、現行の保険証を最長で1年間継続して使えるようにし、マイナ保険証を持たない人には、保険証の代わりとなる最長5年間有効の「資格確認書」が交付されるとしている。

 デジタル化への対応が難しかったり、心身の機能が衰えたりしている高齢者などにも、不自由のない保険制度を保障するべきであることは言うまでもない。

 それでもマイナ保険証を導入するなら、現行の保険証廃止の方針を撤回し、期限をつけることなく併用できる制度とするべきである。

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