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[社説]北部訓練場跡の廃棄物 全域調査は国の責務だ

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月30日 4時0分

 あまりに無責任な対応ではないか。

 米軍北部訓練場の跡地で大量の米軍廃棄物が見つかる中、政府が一部エリアで実施している廃棄物支障除去作業を、全域で行う予定はないとする答弁書を閣議決定していたことが明らかになった。

 原状回復を図り返還跡地の「有効かつ適切な利用の推進」を目指す跡地利用推進特措法(跡地法)の趣旨に反する決定である。

 屋良朝博衆院議員(立民)の質問主意書に答えた。

 北部訓練場の過半(約4千ヘクタール)が返還されたのは2016年12月。沖縄防衛局は跡地法に基づき1年という短い期間で瓶や缶、プラスチックなどの廃棄物を処分した。「支障除去作業は完了した」として、17年末に地権者の林野庁沖縄森林管理署などに引き渡した。

 だが、実態はどうか。

 その後もチョウ類研究者の宮城秋乃氏が照明弾や空包など多数の廃棄物を発見している。引き渡し前の調査のずさんさを物語る。

 防衛局は「廃棄物調査等」の名目で19年9月~23年3月末に空包類約5万2千発、金属くずなど約23トンを回収した。しかしその作業範囲はヘリパッド周辺などわずか5ヘクタール、返還地の0.1%に過ぎない。

 生物多様性を誇る沖縄本島北部は21年、世界自然遺産に登録され、区域には北部訓練場跡地も含まれる。

 広大な訓練場は、ゲリラ戦などの訓練に使われてきた。ベトナム戦争で米軍が使用した猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布したとの証言もある。生態系への影響が危惧されており、全域での調査が必要だ。

■    ■

 国の限られたエリアしか調査しないという姿勢は、今後進む嘉手納基地より南の返還地の跡利用への地主の不安を高めかねない。

 1996年に返還された嘉手納基地跡地の北谷町の宅地では、地主が住宅建設のため掘削した際に、米軍の廃棄物からダイオキシン類が検出され、建設を断念した事例もある。

 返還が予定されている浦添市のキャンプ・キンザー(牧港補給地区)の土壌が、ベトナム戦争中に持ち込まれた化学物資によってダイオキシンやPCBなどで汚染されていることも、2019年の米海軍海兵隊公衆衛生センターの報告書により、明らかになっている。

 環境調査を早期に実施する必要があるが、日米地位協定の「環境補足協定」は、返還7カ月前からしか、日本側に立ち入りを認めていない。それも米軍の裁量次第だ。

■    ■

 地位協定は返還に当たり、米側が「原状回復、補償の義務を負わない」と定めている。跡地利用の大きな障害となるのが環境汚染だ。

 ドイツなどと同様に、日米地位協定を改定し、米側に環境浄化や米軍基地内への国・自治体の立ち入りを認めさせるべきだ。

 それすらも、できないというのであれば、基地を提供する国が、返還地全域での環境調査と浄化に責任を持つのは当然である。

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