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目を離した5秒の隙に溺れた小1 泡を吹き呼吸なし 「考えている暇はない」母親、とっさの心肺蘇生で救う 保育士として学んだ救命講習生きる

沖縄タイムス+プラス / 2024年9月5日 8時28分

自らの経験から水難事故の怖さを語る森本育美さん=8月28日、うるま市・勝連こども園

 海のレジャーが盛んになる季節は、どんなに意識をしていても水難事故のリスクと隣り合わせだ。命の危険が迫る「もしも」の際には、迅速な対応や勇気ある行動が求められる。沖縄県うるま市の保育士森本育美さん(39)は今夏、海で溺れた小学1年生の息子にとっさに心肺蘇生を施し、命を救った。「救命講習を受けていたことが命運を分けた。知っているかどうかで助かる命がある」と力を込めた。(社会部・大庭紗英)

 事故は7月、友人家族と出かけた本島北部のキャンプ施設で起きた。息子は友人家族と足首が漬かるほどの浅瀬で遊んでおり、次第に沖の方へ。波は穏やかだったが、満潮に向かい水位が上がり始めた頃、凹凸の激しい海底の深みにはまり、溺れた。その日に限って、いつもは欠かさないライフジャケットを着用していなかった。

 森本さんは浜辺からずっと息子の様子を注視していたが、友人家族の赤ちゃんの体調を気にかけ、目を離した5秒の隙に事故は起きた。「最初はふざけているのだと思った」。だが、大人の腰ほどの水位から息子の手と青いラッシュガードが見え隠れしている姿にただならぬ雰囲気を感じた。「走っていった時には、すでに沈みかけて、驚くほど静かに溺れていた」

 引き上げられた息子は泡を吹き、呼吸がない。目は見開かれ、口もあんぐりと開いていた。呼びかけへの反応もない。「考えている暇はなく、やるしかなかった」。森本さんはすぐさまそばにあった岩の上で心肺蘇生を始めた。

 無我夢中でわが子の胸を押す森本さんの体は震えていた。気道を確保し、人工呼吸を試みると、肺が風船のように膨らみ空気が入っていく感覚があった。数回の心肺蘇生で心拍が再開し、呼びかけには応えないものの意識を取り戻した。

 ドクターヘリで南風原町の県立南部医療センター・こども医療センターに運ばれ、小児集中治療室(PICU)で治療を受けた。その後は回復し元気を取り戻している。

 森本さんは、緊急時で出た自身の行動を「職場で救命処置の研修を受けていたことが大きい」と振り返る。勤務するうるま市の勝連こども園では、毎月欠かさず、職員がローテーションで消防署で行われる応急手当講習に参加している。その他、園児の保護者と共に行う防災研修を園で開催するなど、積極的に危機管理対策を行う。

 園長の外間ケイ子さんは、2年ほど前に同市で子どもが死亡する水難事故が発生し、危機感を覚えた。「人ごとではない。いざというときのために研修を充実させる必要を感じた」と話す。

 研修の企画を担当する副園長の須賀祥乃さんと主幹教諭の山城智香さんは森本さんの即座の行動が人命救助につながったことを受け、普段から行う備えの大切さを改めて痛感。「子どもの命を守る危機管理の取り組みを続けていきたい」と声をそろえた。

 誰にでも起こりうる事故。森本さんは「沖縄は海が身近だからこそ、危険意識が薄れやすい。誰もが責任を持って楽しむための安全対策を怠らずにしてほしい」と実感を込めた。

■医師「初期対応が重要」

 県立南部医療センター・こども医療センターPICUの藤原直樹医師は「水に溺れた場合、現場で行う初期対応が重要」と強調する。現場で対応が遅れると、病院で処置をしても救命できなかったり、後遺症が残ってしまったりするため、「森本さんが現場で迷わず、迅速に行動したことは救命できた大きな要因」と指摘する。

 まずは胸と腹の動きを見て呼吸の有無を確認し、必要に応じて心臓マッサージや人工呼吸を行うなど、一次救命処置の最低限の知識は身に付けるよう呼びかける。「事故時は、大声で助けを呼ぶことも意外と勇気を伴うこと。普段から繰り返し講習を受けておくことが大事」と言う。

 さらに大切なのは、その予防。「ライフジャケットの着用や監視員のいる場所を選ぶ、泳げると過信せず危機意識を持つこと」と注意喚起した。

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