黄色のバス、中に入れば古本屋 北谷町砂辺のブックパーラー砂辺書架【久茂地ブックスクエア参加店舗紹介】
沖縄タイムス+プラス / 2024年10月1日 10時0分
10月5、6の両日、那覇市久茂地のタイムスビル1階で本のイベント「久茂地ブックスクエア」が開かれます。出店する個性豊かな古書店・専門書店、協賛の新刊書店などを紹介します。
ブックパーラー砂辺書架(北谷町砂辺)
北谷町砂辺の住宅街、公民館を目印に歩くと空き地に黄色いバスが現れた。2022年にこの場所で開店した、古書店・ブックパーラー砂辺書架(シナビヌショカ)だ。
店主の畠中沙幸さんは「生まれ育った沖縄で移動式のバスの古本屋を開きたい」と、県外から引き揚げてきた。「本が好きで、地元の砂辺で何かをしたかった。子どもたちと触れ合い、自分で体験や見聞きしてきたことを還元できる空間として、自分なりに出した答えが古本屋だった」
畠中さんは海外の大学を卒業した後、いったん沖縄に戻るも1年後に転職で東京へ移った。教育関係の仕事をメインに、最後は東京観光財団で働いた。関東で暮らした13年、いずれは沖縄に戻るだろうとの思いもあり、教育と観光の現場に携わった。
コロナ禍での出産を経て、地元で子育てすることを選び、家族3人で帰ってきたのが2021年のことだった。神奈川県にいる知人がキャンプ場で使用する米国産の中古のスクールバス2台を購入し、1台の譲り主を探していることを聞きつけ、家族で見に行って購入を決めた。
最初は砂辺に本屋というイメージが湧かなかった。古書店業界の大先輩にも「需要がないから本屋がないのか、これから需要を掘り起こすことができるのか。どちらか分からないよ」と言われ、不安もあった。だが、実際に始めると本を愛する人が多く訪れ、いい方向へと走り出した。
徒歩圏内の近所の人だけでなく、畠中さんの親と同世代の人や町外に住む人も訪ねてきた。本に苦手意識を持っている人が「バスに乗りたいから来た」と、本を買ってくれることもあった。「訪れる人々とのやりとりをきっかけに、北谷でも本の需要があることが分かってうれしい」と畠中さん。
車内のシートに座って読書 旅する気分
乗車口で靴を脱いで上がる店内では、シートに座って本を読むことができる。外国の雰囲気が漂うレトロなバスの中で、窓から差し込む光を浴びながら、旅をしている気分でのんびり過ごすのが心地よい。コーヒーなどのドリンクが楽しめるセルフ喫茶もある。数多く扱っている絵本をはじめ、児童書、洋書、沖縄本を中心に取りそろえる。米国人が多い土地柄もあって置いた洋書は、日本人が「かっこいいから」と買ってくれることもあった。
本棚には、畠中さん私物の店内読書用の本も並ぶ。「他の本屋に比べると『私はもう絶対これ』みたいなものは薄い。どちらかというと来てくれるお客さんに寄り添う形で、かつ自分の好みをそのジャンルにも入れていくのがこだわりかもしれない」と話す。
本と出合ってほしいとの思いから、古本屋に行くという敷居を下げ、親しみやすい店作りを目指している。パーラーと店名に付けたのも「気軽に来られる場所にしたいから」。月に数回、「たそがれ運行」と称して午後5時から9時までの夜の営業も行っている。明かりがともる夜の雰囲気も「きれい」と好評で、喜ばれている。
バスは移動できない。そのため、本を持っていって出張販売にも挑戦した。沖縄こどもの国、普天満山神宮寺、プラザハウス…。「こんな所で本を?」と思うような場所で、今までアプローチできなかった客層に本に触れてもらった。「本屋さんは意外とどこでも相性がいい。どんな場所でもそこに合ったテーマの本を持っていくことができるから」
ここ数年、県内の古書店それぞれの動きが活発になり、イベントや店舗をのぞきに来てくれる人たちが増えたように感じるという。今回の久茂地ブックスクエアには10月6日の1日のみ出店する。畠中さんは「純粋に楽しみではあるが、目が肥えた那覇の人たちに選書した本を見てもらう怖さも少しある」と笑った。訪れる人々とのやりとりから勉強する場にしようと意気込む。
おすすめは米国の社会教科書と「赤い鳥」
レトロな物が好きな畠中さんがおすすめの一冊に挙げたのは、東京で仕入れた米国の社会の教科書の日本語版。「触って当時の質感や熱が伝われば」と期待する。もう一つは大正時代の児童雑誌の復刻版「赤い鳥」。100冊ほど全巻まとめ売りをしていたものだ。昔のデザインやフォントのかわいらしさ、1冊ずつのイラストの違いを分け合いたいと、ばら売りしている。「本が貴重で大事にされていた時代にも思いをはせられるのでは」
書店情報
ブックパーラー砂辺書架
店主:畠中沙幸
住所:北谷町砂辺44 砂辺区公民館近く
営業時間:正午~午後4時
Instagram:@bookparlor.shinabi
定休日:不定休(Instagramでご確認ください)
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