[社説]首相 地位協定改定に意欲 県の考え聞く場設けよ
沖縄タイムス+プラス / 2024年10月3日 4時0分
石破茂首相は、1日の就任記者会見で、日米地位協定の改定を目指す考えをあらためて強調した。
現行の安保条約と地位協定は1960年に締結されて以降、条文の中身は全く変わっていない。
日本の首相が就任早々、正面から地位協定改定をぶち上げること自体、極めて異例である。
改定を疑問視する声が上がっていることについて石破氏は「日米同盟に懸念が生じるとは全く思っていない。同盟強化につながる」と述べ強い意欲を示した。
那覇市で開催された総裁選の演説会では「いつまでたっても運用の改善だけで事が済むとは思わない」とも述べた。
どの部分をどのように変えたいのか、今のところ、はっきりしない。
「米軍基地は自衛隊と共同管理」と言ったり、自衛隊の能力向上のため「米国に自衛隊の訓練基地を造る」と言ってみたり。
構想が具体的に示されなければ評価を下すことはできないが、現時点では、県が要請してきた地位協定の改定とは、その中身が「似て非なるもの」との印象が強い。
改定には私たちも大賛成である。問題はその中身だ。
石破新首相は、解散・総選挙を巡って、これまでの主張を撤回、早期解散を打ち出し、野党の猛反発を浴びた。
党内基盤が不安定なだけに衆院選の結果次第では地位協定改定も一気にしぼむ可能性がある。
■ ■
地位協定の前身は日米行政協定である。52年に国会での議論もないまま調印された行政協定は、米軍に過剰なまでの特権を与え、保守層からも強い批判を浴びた。
行政協定は安保条約改定の際、現行の地位協定に改められたが、米軍の既得権益を残したまま、行政協定の大部分が地位協定に引き継がれた。
地位協定の運用実態や合意議事録の存在を知れば、誰しも「日本は本当に主権国家といえるのか」と疑問を抱くはずだ。
歴代の県知事は繰り返し、地位協定の改定を政府に要請してきた。安全保障の名の下に県民の命と暮らしが脅かされ続け、人権が侵害されてきたからだ。
基地を抱える渉外知事会だけでなく全国知事会も、国内法の原則適用など地位協定の抜本的な見直しを政府に要請している。
■ ■
米軍の事件・事故による住民被害は多岐にわたる。
PFAS(ピーファス)などの有機フッ素化合物の環境汚染問題や、米兵による相次ぐ女性暴行事件は、とりわけ深刻である。
協定の運用見直しや環境補足協定には依然として問題点が多い。PFAS汚染の立ち入り調査を県が申請しても、米軍の同意が得られず、実現していない。
県は、石破首相と玉城デニー知事の会談を実現させ、地位協定の改定を直接要請すべきである。
そして何より、改定の機運を高めるためには、全国規模の運動の広がりが必要だ。
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