1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

[社説]増えるカスハラ 啓発と対策 両輪で臨め

沖縄タイムス+プラス / 2024年10月4日 4時0分

 顧客による理不尽な要求「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題となっている。従業員が精神的に追い詰められ、辞職したりうつ病を発症したりするなど、深刻な事例も増えている。働く人を守る仕組みを国や自治体、企業が早急に整備する必要がある。

 那覇市医師会が今夏、会員施設に実施した調査で、医療や介護現場の利用者による暴言や脅迫などの実態が明らかになった。

 アンケートに答えた285人のうち、直近2年間でカスハラを経験した人は55%と半数を超える。「6回以上」の回答も3人に1人に上った。

 ハラスメントの種類は、多い方から「暴言」「威嚇や脅迫」「同じクレームを執拗(しつよう)に繰り返す」などだ。大声で怒鳴ったり、ネット上に理不尽な書き込みをしたりするほか、「自宅や、子どもがいることは分かっている」と、脅しのような言葉をぶつけられた医師もいた。

 「医療や介護に対する不満」がきっかけとなるケースが目立つが「相手の勘違い」によるものも少なくない。被害を受けて「出勤が憂鬱(ゆううつ)になった」「心身に不調を来した」「睡眠障害」など、悪影響が出ていることも浮き彫りとなった。

 放置すれば業務に支障が出るほか、職場の魅力低下にもつながりかねない。

 不当な要求は毅然(きぜん)とした態度で断ることはもちろん、複数人で対応することや相談体制の確立、従業員に対する研修なども必要である。

■    ■

 厚生労働省の2023年度職場実態調査によると、過去3年間にカスハラを受けた労働者は10.8%。セクハラやパワハラなどのハラスメント相談の中で唯一、増加傾向だった。

 県外の自治体では、職員の実名で偽のアカウントが作られ、悪用されたケースもあった。

 那覇市は8月から、職員が常時着用している名札の表記を、顔写真付きのフルネームから所属部署と名字のみに変更した。

 カスハラの背景には「顧客第一」との考え方があるが、安心して働ける環境がなければ労働者は疲弊し、人手不足を招くことにつながる。

 悪循環を断ち切るため、東京都はカスハラ防止に向けた全国初の条例を来年4月に施行する方針だ。

 国も今年、対策強化の報告書をまとめており、来年の通常国会で関連法改正案の提出を目指している。

■    ■

 自分の要求を実現したいがための暴力的な言動は、社会通念上も、決して許されるものではない。

 一方で、利用者の正当な指摘や批判は、守られるべき当然の権利である。

 全ての発言をひとくくりに「カスハラだ」と見なすことは問題であり、社会全体でカスハラに対する認識を深め、理解することが重要だ。

 悪質なハラスメントをなくし安心して働ける環境づくりに向けて、社会や業界が連携し、一体となって取り組んでいくことが不可欠である。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください