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[社説]解散権の行使 ルール逸脱 約束はほご

沖縄タイムス+プラス / 2024年10月7日 4時0分

 石破茂首相は、7、8日の代表質問、9日の党首討論の後、「新しい内閣が発足したこと」を理由に同日、直ちに衆院解散に踏み切る。

 首相就任から8日後の衆院解散は戦後最短である。

 総裁選で石破氏は早期解散に慎重な姿勢を示し、予算委員会開催にも前向きだった。

 なのに首相に就任したとたん「熱が冷めないうちに」「勝てそうなときに」という党内の声に、自説を引っ込めてしまった。

 9月に行われた自民党総裁選は、15日間というこれまでで最も長い選挙期間が設定された。

 テレビは連日、候補者の政策や一挙手一投足を報じ、自民党の思惑通り、低迷していた支持率は回復した。

 最長の総裁選と首相就任から最短の解散。それが党利党略に基づく解散戦略であることは明らかだ。

 だが解散を巡って表面化した事態は、民主主義の根幹を揺るがすような深刻な問題をはらんでいる。

 石破氏は9月30日、党本部で記者会見し「10月27日に衆院解散・総選挙を行いたい」と表明した。

 あろうことか首相就任前に衆院選日程を明言したのである。自ら「異例のことだ」と釈明しながら。

 野党が「まだ首相になっていない人が、なぜ解散を」と反発したのは当然。明白なフライングである。五輪の100メートル走なら1回のフライングでその選手は失格だ。

 解散を巡る問題は、それだけにとどまらない。

■    ■

 憲法で解散について触れているのは、7条と69条の二つしかない。

 7条は天皇の国事行為を定めた規定で、天皇は内閣の助言と承認によって衆院を解散することができる、と定めている。

 69条は衆院で内閣不信任案が可決されるか、または信任案が否決された場合の解散を定めた規定だ。

 戦後の解散のほとんどは7条解散である。衆院解散は「首相の専権事項」といわれることもあるが、そのような規定は憲法のどこにもない。

 厳密に言えば、解散権は首相ではなく内閣にある、というのが定説だ。国民に対して内閣が信を問う以上、それにふさわしい理由がなければならない。

 憲法教科書の定番、芦部信喜の『憲法』も「内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は、不当である」と指摘する。

■    ■

 石破氏はもともと、政権の恣意(しい)によって勝てるときに解散する7条解散には否定的だった。

 サッカーにはオフサイドと言って、ゴール前で待ち伏せしプレーすることを禁じるルールがある。

 内閣が好き勝手に自分の都合のいいときに解散することは、いわばオフサイドルールを破るのに似ていて公平・公正さを損なう。

 代表質問や党首討論では、解散問題を巡る疑問を取り上げ首相の見解をただしてもらいたい。解散問題は裏金事件の扱いと並ぶ総選挙の重要な争点だ。

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