芸道精進、花開く時 選抜芸能祭グランプリ公演 10月19日午後5時タイムスホール
沖縄タイムス+プラス / 2024年10月12日 13時17分
「2024年度選抜芸能祭」(主催・沖縄タイムス社、協賛・沖縄芸能協会、沖縄新進芸能家協会)のグランプリ公演が19日午後5時から、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれる。晴れ舞台に挑む受賞者(三線4人、箏曲3人、太鼓1人、舞踊2人)の抱負などを紹介する。記事末のデータは住所、受賞歴、師匠名=敬称略。
公演入場料は2千円。問い合わせは沖縄タイムス社事業局文化事業部、電話098(860)3588。
さらに稽古励む決意 三線・川平旭人(44)
社会人になってから三線を始め、のめり込んだ芸能の世界。選考会では明るい気持ちで稽古の成果を出し切った。
グランプリの受賞が決まった当初は現実味がなく、日を追うにつれてうれしさが込み上げてきた。今は実感が湧き「さらに稽古に励まなければ」と気を引き締めている。
本番で披露するのは「本花風節」。別れを歌う歌詞のしみじみさと美しい曲調は、自身も好きな曲。「グランプリの栄誉に恥じないよう、曲の魅力を伝えられる演奏をしたい」と力を込めた。
東京都三鷹市。2014年新人賞、17年優秀賞、19年最高賞。宮城康明。
三線の良さ伝えたい 三線・小柳果野子(29)
2度目の挑戦となった今回、グランプリ受賞が決まった際は「前回、悔しい思いをした分、やっと師匠に恩を返せると思った」。これまでの成果を発揮することを心がけて、やり切った。
「これからは一人でも多くの人に、三線の良さを伝えていきたい」。伝統継承に向けて、さらなる目標を抱く。
披露するのは「二揚下出し仲風節」。「これまで、あまり演奏してこなかった曲。だからこそ、貴重な機会に感謝している」。より一層の力を込めて本番に臨む。
那覇市牧志。2015年新人賞、18年優秀賞、21年最高賞。城間盛久。
感謝の思い込め本番 三線・花城清生(27)
初挑戦で受賞した。師匠や共に稽古に励んできた仲間が一緒に喜んでくれたことがうれしかった。
「グランプリは、これまでの賞とは別格だと感じているため緊張した」。しかし、選考会ではミスなくやり切った。意識したのは師匠からの「雑念を捨てて集中すること」「練習通りに臨むこと」というアドバイスだった。
本番では「二揚下出し述懐節」を披露する。「支えてくれた人たちへの思いを込めて、選考会の時よりも上手に演奏したい」と熱がこもる。
沖縄市高原。2017年新人賞、19年優秀賞、22年最高賞。大湾朝重。
受賞はスタート地点 三線・山内盛貴(34)
「グランプリはスタート地点」と、既にさらなる先を見据えている。歌唱力と演奏力のある実演家を目指し、日々稽古に励む。
選考会に向けて東京にいる師匠に教えを仰ぎ、稽古をつけてもらった。生活の中でも常に、弾いているイメージ訓練を欠かさなかった。グランプリ受賞を果たし、安(あん)堵(ど)する半面、「他人を気にせず自分を信じて演奏する感覚が必要」と課題にも目を向けた。
「本番では、自信を持ってのびのびパフォーマンスをしたい」と前を向いた。
那覇市首里大名町。2012年新人賞、17年優秀賞、19年最高賞。野村香司。
続けることで恩返し 箏曲・島田かおり(23)
小学1年で箏曲を始めたきっかけは「祖母が持っていたから」だ。「正直、最高賞を取るまでは楽しいと思ったことはなかった」という。それでも、部活のバレーボールと両立しながら続いたのは「負けず嫌いだったから」と振り返る。
選考会は「茶屋節」で受けた。音程が狂わないかと緊張したが「本番は自分へのご褒美」と気持ちを切り替えて臨んだ。「合格は師匠をはじめ芸能を通して出会った人たちのおかげ。続けることで恩返しがしたい」と感謝する。
那覇市大道。2015年新人賞、17年優秀賞、19年最高賞。譜久原美和子。
石垣から挑み続けて 箏曲・知念ノリ子(73)
石垣を拠点にする研究所からのグランプリ受賞は今回が初めてという。「石垣の芸能発展に貢献したい」という思いで、何度も挑み続けてきた。ようやく悲願の受賞を果たし「ホッとしている」。
日々の稽古に割ける時間は限られており、不安を感じていたものの、家族の支えが大きな力になった。選考会本番では「穏やかな気持ちで、一音一音を丁寧に奏でることができた」と振り返る。
本番では「自分が出せる精いっぱいの演奏を届けたい」と意気込む。
石垣市真栄里。1995年新人賞、97年優秀賞、2008年最高賞。上原ミキ。
演奏に情感を乗せる 箏曲・津嘉山風子(32)
大学を卒業後、仕事以外に趣味が欲しいと考え、箏曲を始めた。グランプリの選考を通して、基本の技法などの難しさを改めて感じたという。伯母の紹介で入門した師匠からは「覚えるのはもちろんだが、歌詞の意味を考えて、情感を乗せるように」と指導を受け、合格を果たした。
公演では「子持節」の独唱と「二揚下出し仲風節」の伴奏などを務める。独唱では、会えないつらさを浜千鳥に託す歌詞の理解を深め、伴奏では歌三線とのコンビネーションを大切に舞台に臨む。
宜野座村漢那。2015年新人賞、17年優秀賞、19年最高賞。山城真理子。
祝いの日「秋光」響く 太鼓・島尻紀希(32)
公演で演奏する「器楽合奏 秋光(しゅうこう)の響き」は、師匠が名付けてくれた。秋の穏やかな日差しや光景、秋らしい柔らかな光を表す言葉だという。「お祝いの日にふさわしい名前を下さった」と感謝する。
「渡りぞう」や「島尻天川節」など4曲で構成され、曲想やテンポの違いに合わせた打ち分けが聞きどころとなる。人間国宝の故島袋光史さんの芸風を継ぐ光史流太鼓保存会に属する。「先生方の教えを学び、自分の色も出したい」と抱負を語った。
豊見城市名嘉地。2013年新人賞、15年優秀賞、17年最高賞。上原じゅん子。
音を守り堂々と踊る 舞踊・石川詩織(22)
幼い頃から母に師事しているが、選考会前には国の重要無形文化財「琉球舞踊」保持者の祖母、山田多津子さんの指導も受けた。「合格したことで『孫です』『娘です』とやっと言えるようになったと思う」と語る。
公演で踊る「作田」は「踊りの基礎が詰まっていて、難しい。音をしっかり守り、すがすがしく踊りたい」との思いで稽古を重ねてきた。堂々と胸を張って務めるつもりだ。祖母や母のような舞踊家を将来の目標に、腕を磨いていく決意を固めている。
読谷村楚辺。2016年新人賞、18年優秀賞、21年最高賞。石川詩子。
基礎学ぶ大切な時間 舞踊・森山和人(22)
「自分の未熟さを改めて感じる日々だった。芸能人生の中でも基礎を身に付ける大切な時間だった」。選考会に向けた稽古をこう振り返った。琉球舞踊独特の体の使い方、細かい所作、歌詞に合った表情…。師匠や、大師匠で国の重要無形文化財「琉球舞踊」保持者の又吉世子さんの細かい指導から多くを学んだ。
公演では大好きな雑踊の「むんじゅる」を披露する。「爽やかに、しっとりと、軽快にと、さまざまな雰囲気がある」という村娘の踊りの練り上げに余念がない。
那覇市壺屋。2016年新人賞、18年優秀賞、21年最高賞。佐辺良和。
2024年度伝統芸能選考会のグランプリ部門の選考委員(五十音順、敬称略)
【三線の部】池原憲彦、糸数春美、大湾朝重、神谷好弘、城間盛久、宮城竹茂、宮城康明、山城暁
【箏曲の部】伊良皆順子、上地七重、大城清子、喜屋武初江、末吉弘子、比嘉淳江、比嘉玲子、屋嘉比桂子
【太鼓の部】神山常夫、漢那七子、金城盛松、金城安惠、志喜屋順子、島袋君子、平良律司子、比嘉聰
【舞踊の部】新垣和代、新崎恵子、漢那七子、島袋君子、高嶺久枝、照屋倫子、真境名英美、宮城裕子
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