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国による補償ない民間の戦争被害者 「日本は極めていびつな補償体系」弁護士の瑞慶山茂さんに聞く 少なくなる戦争体験者 救済立法に意味

沖縄タイムス+プラス / 2024年10月17日 3時59分

[戦が始まった「10.10空襲」80年](9)

 国による補償がない太平洋戦争中の空襲や沖縄戦などによる民間の戦争被害者を救済しようと戦後、国家賠償訴訟や新規立法を求める運動が展開されてきた。2000年代以降の運動をけん引した一人で大宜味村出身の弁護士、瑞慶山茂さん(81)=千葉県=に補償の現状や取り組みについて聞いた。(聞き手=社会部・當銘悠)

 -戦争被害者の補償について。

 「軍人や軍属だった人には 戦後恩給が支給され、遺族には年金など国による補償がなされてきたが、民間被害者は一部を除き補償がない。日本は極めていびつな補償体系だ。同じ敗戦国のドイツなどでは、民間人も原則、軍人・軍属同様に補償されている」

 -全国と沖縄の戦争被害者の取り組みについて。

 「07年、東京大空襲の被害者が国を相手に国賠訴訟を提起し、私も常任弁護団に加わった。沖縄戦についても調査を進める中で、民間被害者を救済するために、裁判を起こす運動と新しい法律をつくる運動を両輪で進めていこうと決めた」

 「沖縄戦の民間被害者に呼びかけると次々連絡があった。10年に『沖縄10.10大空襲・砲弾等被害者の会』(後に『沖縄・民間戦争被害者の会』に改称)を結成。同じ年に結成されていた『全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)』にもすぐに加わった。沖縄で交流集会が行われ、県外の空襲被害者と沖縄戦被害者が連帯する形で運動が広がっていった」

 -12年8月には、沖縄戦の民間戦争被害者が初めて国賠訴訟を起こした。

 「戦争の被害を国民が我慢すべきだという『戦争被害受任論』や、明治憲法下では国の責任は問わないという『国家無答責論』などが理由で却下された。『東京大空襲訴訟』や『大阪空襲訴訟』も敗訴したが、いずれも『受任論』が理由。国が起こした戦争で国民は被害を受けたのだから、救うのが当然ではないか」

 「『沖縄戦被害・国家賠償訴訟』では、当初40人だった原告が最終的に79人になった。国の法的責任は認められなかったが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が初めて事実認定され、深刻な被害実態も認められた。裁判を通して、県民に沖縄戦の実相を理解してもらうこともできた」

 -新規立法に向けた取り組みの現状は。

 「国会では超党派の議員連盟が救済法の要綱案を作成している。全国空襲連や『民間戦争被害の補償を実現する沖縄県民の会』は、救済法実現のための署名活動を行っているところだ」

 -戦後80年を前にした今の思いは。

 「戦争体験者が少なくなる中、風化しないうちに救済立法を実現させることに意味がある。沖縄で軍事強化が進む中、戦争の再来を許さないためにも過去への反省を込めて補償、謝罪をすべきだ。単にお金の問題ではなく平和の問題。過去の問題ではなく現在、そして将来の問題だ」

 「原告の方々の怒りの声や涙ながらの訴えを聞いてきた。一人一人の顔が思い出される。まだ闘いは続いている。何としても被害者を救わないといけないと決意している」

(おわり)

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