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新聞の力を読者に届ける ネットワークランナー1300人と500の販売店奮闘[新聞週間]

沖縄タイムス+プラス / 2024年10月20日 12時10分

新聞スクラップ教室で、記事の感想を発表する子どもたち=7月28日、浦添市社会福祉センター

[沖縄タイムス・ネットワークランナー 2024永年勤続表彰者 10.20]

 沖縄県内の各家庭や事業所などに届けられる沖縄タイムスの新聞は、約500の販売店と約1300人の配達員(ネットワークランナー)によって支えられている。近年はインターネットやSNS(交流サイト)などの普及もあり、情報収集の選択肢が多様化している。「新聞離れ」が叫ばれる中、学習教材としての新聞の価値が見直されてきている。紙面を呼んでもらう努力を続ける販売店主や、新聞を活用した学習塾の取り組みなどを紹介する。「流されない 私は読んで 考える」を標語にした第77回新聞週間は21日まで。

独自ツールで魅力発信・浦添上港川販売店の照屋恵一さん(57)

「情報氾濫の時代にこそ価値」

 上港川販売店(浦添市)の店主、照屋恵一さん(57)は「未来の読者を育てる種まき」という信念を持って子どもたちと向き合っている。10年以上前から新聞スクラップ教室や、記事に一言コメントを書き込む「新聞ツイッター」など、新聞に親しめる取り組みを続けてきた。今年7~8月に本紙で連載したクイズ企画「じんぶん貯金箱」もアイデアの一つ。「新聞は最高の教科書」と話す照屋さんの活動を取材した。

 ネットの普及と反比例するように、国内の新聞購読率は低下の一途をたどる。新聞業界のピンチを身近に感じ取っているのは、読者に一番近い存在の販売店だ。照屋さんもその一人で、購読中止の連絡を受けるたびに「読むのが当たり前の時代から、読ませる努力が必要な時代になった」と危機感を募らせていた。

 新聞に親しんでもらうため、記事を読んでクイズに答える「じんぶん貯金箱」を独自に作り、2013年に読者向けに配布した。小学生から高齢者まで多くの意見が寄せられた。

 「新聞がこんなに楽しいものとは思わなかった」「知らないジャンルに興味を持つことができた」「固いイメージだったが、親しみやすくなった」など前向きな意見が多く、新聞の持つ魅力を再発見した。

 その経験が、本紙の「じんぶん貯金箱」の連載にもつながった。設問を解答していくと記事全文が読める仕組みや、解答者が自ら考え、自由に答える問題も照屋さんのアイデアだ。読解力や思考力、想像力を養い、各世代が楽しめるよう趣向を凝らした。

 新聞の可能性を見いだすと、さらなる取り組みを始めた。販売店敷地内の掲示板に切り抜いた記事を貼り付け、自由に意見を書き込める「新聞ツイッター」。多くの小中校生が自由な感性で記事に書き込んだ。子どもたちがニュースをイメージしやすいように、日本地図や、登場する赤ちゃんや動物と同じ重さの重りを添えるなど工夫した。

 近所の学習塾と連携した年1回の新聞スクラップ教室も普及活動の一環だ。「写真」「見出し」「リード(前文)」など、新聞の構成や簡単な読み方を伝授。気になる記事を切り抜き、要約や感想を書くスクラップの簡単な方法なども教えた。

 学習塾の先生は「子どもたちが自発的に新聞記事と向き合うようになった。塾の勉強だけでは教えられない情報が詰まっていて、子どもたちの可能性を広げてくれる」と絶賛する。今では、県内各地から200人以上が参加する夏の恒例イベントとなっている。

 照屋さんは「多くの情報が氾濫する今の時代こそ、裏付け取材がされた正確な情報を掲載する新聞の必要性が求められている」と指摘。「新聞自体の価値が落ちたとは思わない。新聞業界は未来の読者に目を向け、読ませる工夫がもっと必要だ。習慣になれば自然と読者は帰ってくる」と話した。

感謝の心込め毎朝配達・浦添中央販売店の友利正雄さん(71)

「楽しみにしている読者へ」

 沖縄タイムスと日刊スポーツを自転車に乗って軽快に配達するのは、浦添市の沖縄タイムス浦添中央販売店(吉本大介店主)の友利正雄さん(71)だ。今年3月から健康づくりの一環で新聞配達を始めた。配達でエネルギーを消費する分、妻の料理が一層おいしく感じるようになったそうだ。新聞配達をきっかけに生活にもメリハリが出て、充実した毎日を過ごしている。

 友利さんは寝付きが悪く、睡眠不足になることが多かった。午後11時にベッドに入るものの、眠りに落ちるまで2時間かかることもあった。「どうせ眠れないのなら」と、たまたま新聞に折り込まれていたランナー募集のチラシに目が留まり、吉本店主に連絡した。

 小学生の時に那覇市内で夕刊配達をしていた経験もあり、スムーズに業務を覚えていった。電動アシスト付き自転車にまたがり、約90件の読者宅へ新聞を届ける。

 配達を続けていると、寝付きの悪さが改善しただけでなく、以前よりも食欲が増した。体重の変化はないものの、周囲から「痩せたね」「体が引き締まってきた」と驚かれるそうだ。 「最初は体力的にきつかったけど、続けた結果、階段は息切れなしで上り下りできるようになった」と配達業務の効果を実感している。今では、読者宅の花木が季節ごとに変化する姿を楽しむ余裕も生まれた。

 ただ、友利さんは責任感を持って配達することの重要性を常に意識している。「配達ミスなく丁寧に届けることが大切。毎朝楽しみにしている読者がいるからこそ、この仕事を続けることができる」と読者への感謝を述べた。

学研教室 授業で教材に やり抜く力や読解力養う

 学習塾の学研エデュケーショナル(東京)が運営する県内の学研教室では、教材としての「新聞の魅力」に着目し、授業に取り入れている。子どもたちの問題を解く力や、最後まで諦めずにやり抜く力など、数値化が難しく見えない力と言われる「非認知能力」を養う上で、新聞が効果的だと位置付けている。

 浦添市の港川教室(町田晴美先生)では、新聞記事を読んでクイズに答える「じんぶん貯金箱」を活用している。クイズの答えを探すためには、記事を最後まで読み込む必要があるため、自然と文章を読む集中力が養われているという。

 町田さんは「子どもたちは今も昔も『読む』ことが苦手。文章を理解することで、問題が分かる喜びや、読む楽しさを知ってほしい」と話す。

 那覇市のまあじ教室(島尻亜希子先生)では、4年前からオピニオン面の投稿を活用している。同じ学年の児童の投稿を素早く読み込み、要約した内容を発表するスタイルだ。読解力だけでなく、自らの意見を述べることで想像力や伝える力を育む。

 島尻さんは「近年の入試の傾向は、筆記試験でも面接試験でも、伝える能力を試す問題が増えている。自らの考えを落とし込み、伝える能力は、小さな積み重ねを続けていくことで養われる。新聞はその能力を伸ばすいい教材だ」と語る。

 沖縄市の諸見里アリーナ教室(伊良皆優子先生)では、切り抜いた新聞記事を壁に貼り付け、気になる内容に丸印を付けている。伊良皆さんが難しい漢字の読み方を教えたり、ニュースの内容を補足したりすることで、子どもたちの興味・関心を引き出し、知識を広げる狙いがある。

 伊良皆さんは「記事をコミュニケーションツールの一つとして活用している。自らの興味以外のジャンルに触れることで、『知りたい』という気持ちを育むことができる。興味・関心が広がり、将来の選択肢も増えていく」と意義を話した。

ランナー募集 健康増進■短時間で収入

 それぞれのライフスタイルに合わせて働くことができる新聞配達員(ネットワークランナー)。沖縄タイムス社は、県内各地で配達員を募集している。

 問い合わせは同社読者局、電話098(860)3565。

時代と家庭、結び続ける・永年勤続の配達員表彰(敬称略)

◆勤続47年
 柳=上地高正

◆勤続44年
 神森・浦添西=下地マツ

◆勤続42年
 真嘉比店=比嘉憲明▽宮古南販売センター=奥原初江

◆勤続41年
 新都心北店=古堅ハル子▽繁多川・新川真地=竹盛トシ子▽壺川=神里政子▽胡屋=松田キヨ子▽本部谷茶=仲間里枝▽辺土名=宮里辰男

◆勤続40年
 繁多川・新川真地=阿嘉京子▽高良=赤嶺清志▽古島=嘉手納知昌

◆勤続39年
 安謝・曙・天久=真喜志ミヨ子、真喜志康伸、名城ミツ子▽与儀・寄宮=新里和子▽東小禄=儀間紀志子▽伊江島=与那城博美

◆勤続37年
 泊一丁目=儀間ヒロ子▽安謝・曙・天久=我部悦子▽東小禄=新城裕美、赤嶺春美▽野嵩・中原=武島功

◆勤続35年
 与儀・寄宮=宮尾美智代▽城間・安波茶=小浜伸子▽後原・富盛北=新城米子▽南桃原=宮城千恵子▽西原中央販売センター=高江洲勝江▽北谷中央=安里輝美▽石垣東西=立津美智子

◆勤続34年
 宮古南販売センター=洲鎌勝子、謝敷美登子

◆勤続33年
 神森・浦添西=渡慶次須枝子▽津嘉山公民館=金城光子

◆勤続32年
 繁多川・新川真地=桃原朋子▽石嶺団地=日嵩純子▽金城・具志=湧川典子▽南桃原=池宮久子▽有銘=石川朝子

◆勤続31年
 安謝・曙・天久=国吉典子▽壺川=田港明美▽真和志南センター=渡嘉敷正子▽浦添東=中村ひふみ▽豊見城東センター=上原順子▽津嘉山公民館=吉本津也子▽久保田=仲宗根洋一▽伊江島=下門真澄▽宮古北販売センター=下地洋子▽石垣東西=垣花和子

◆勤続30年
 与儀・寄宮=儀間清江▽金城・具志=稲嶺和美▽神森・浦添西=喜久川マチ子▽城間・安波茶=知念幸子▽高原中央=新屋末子▽東江=玉城正樹▽北里=崎浜秀信

◆勤続25年
 泊二丁目=新城喜美子▽宜野湾販売センター=知念清美▽小波津団地=島袋貞子▽南上原=川上淳▽大木=比嘉稔、山田英子▽松田=島袋徳也▽ビル原=久田旭風

◆勤続20年
 西崎西=大城孝子▽宜野湾販売センター=保里恵子▽美越=當間キヨ子▽胡屋=町田良子、町田ひろゆき▽豊原=島袋武雄▽小波津団地=又吉和子▽波平第一=宮城守

◆勤続15年
 新都心南店=照屋弘之▽壺川=大嶺三郎▽浦添東=宇良輝三▽南部西販売センター=佐久川道子▽嶺井=城間一治▽伊佐・大山第二=當眞嗣幸▽沖縄中央=福原忠▽知花販売センター=森根朝江▽平安座=前森エリカ▽水釜第二=池原ケイ子▽大中・大西=神山昇敬

◆勤続10年
 首里東=山城茂樹▽兼城ハイツ=與那嶺勇▽与根第一=上原淳、安谷屋美玲▽真栄原=玉寄幸男▽胡屋=渡久地政良▽知花販売センター=石川清一▽赤道・江洲=仲栄真恵▽西原中央販売センター=新垣進▽大木=伊波哲男▽金武南=安富貞子▽備瀬=仲村留美

◆勤続7年
 那覇西販売センター=兼元りえ子▽新都心南店=比嘉豊▽壺屋=金城みさえ▽首里西=大嶺真勇▽壺川=比嘉美智代、新垣勝也▽小禄宇栄原店=古波津英子▽国場・識名=下田将亀、玉寄賢▽沖縄中央=安慶名恵子▽胡屋=久高信孝▽久保田=与儀清▽泡瀬崎・桃原=桑江一男▽知花販売センター=小渡善徳▽南上原=當眞政嗣▽平安名=盛小根正一▽済井出=古堅輝希

◆勤続5年
 泊二丁目=国場匠善▽与儀・寄宮=大城国▽繁多川・新川真地=譜久島広、山川幹雄▽石嶺団地=平良信徳▽東小禄=高良清美▽当山=大田真弓▽前川=中村初子▽嶺井=城間昌代▽沖縄中央=屋宜美智代▽美越=島袋勇▽胡屋=屋良和子▽久保田=森初男▽南桃原=宮城進▽みやざと=島袋勝太▽楚辺=真栄田茂子▽波平第一=喜友名政美▽県営名護団地=東江司

◆勤続3年
 石嶺団地=山城秀人▽石嶺四丁目=嘉陽宗康▽首里大名店=長山諄▽糸満南=大城忠▽大里南販売センター=平良明美▽新城・喜友名=濱比嘉浩、比嘉康子▽普天間販売センター=米須辰生▽宮里東・美里=宮城政信▽高原中央=宮城清志▽坂田・西原台=崎浜秀二、徳元博人▽水釜第一=金城陸広▽伊芸=山里孝一▽石垣直送=前田恒明

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