[社説][2024 衆院選]辺野古新基地建設 状況変わらず 重大争点
沖縄タイムス+プラス / 2024年10月23日 4時0分
名護市辺野古の新基地建設問題は、普天間飛行場の早期返還につながるかどうかだけではなく、地方自治の観点などからも政治の重要なテーマである。
当時自民党幹事長だった石破茂首相は2013年11月、普天間の県外移設を求めていた党の県選出国会議員5人を並べ、「辺野古移設を排除しない」と認めさせた。1カ月後に当時の知事が辺野古の埋め立てを承認し、事業は動き出した。
石破首相は9月の総裁選で、5人に「大変なご負担をかけた」と謝罪した一方、新基地建設を進める考えを鮮明にしている。
前回の衆院選後の3年間で象徴的なのが昨年12月の国による代執行だ。軟弱地盤の広がる大浦湾側の埋め立てに必要な設計変更を県に代わって承認した。
県は沖縄防衛局の設計変更を「調査が不十分」などを理由に不承認とした。防衛局は同じ国の機関である国交相に不服を申し立て、国交相は知事の不承認を取り消す裁決を出した。
さらに知事に承認するよう指示した。知事は「違法」と訴えたが、裁判所は「知事は裁決に拘束される」と退けた。不承認とした中身は裁判所で審理されなかった。
これがまかり通れば、地方が国の政策に反対しても、法を所管する大臣の裁決だけで覆し、「代執行」で推し進めることになる。
国と地方は対等と言えず、地方分権改革で培ってきた関係性が崩れる。
■ ■
27日投開票の衆院選で、普天間飛行場の辺野古移設について、沖縄1~4区の立候補者16人のうち、2人が推進、2人が容認、7人が反対、5人がその他と、本紙アンケートに答えた。
これまでに比べ大きな争点になっているとは言い難い。コロナ禍を経て、県内では物価高や人手不足、子どもの貧困など課題が山積するからだ。
とはいえ事業開始から10年たっても、状況が変わったわけではない。
陸や海では反対する住民たちの抗議活動が続く。国は総工費9300億円を見込み、1700億円を警備費に充てる計画だが、さらに膨らむ可能性が高い。
埋め立てを加速するために鹿児島県奄美大島の土砂の使用を検討するものの、自然破壊や外来種侵入など新たな問題に直面する。
■ ■
現政権は普天間飛行場の一日も早い閉鎖、返還のために「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返す。
果たしてそうだろうか。
軟弱地盤の改良工事は難航が予想され、辺野古新基地の完成まで10年以上かかるのは確実とされる。
その間の普天間の危険性除去についても十分に話し合われていない。
玉城デニー知事が求め続けている対話に応じない現政権の姿勢も問われる。
新基地建設問題は依然として重大な争点である。
衆院選では各政党、各立候補者が議論を深め、解決への道筋を示すべきだ。
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