[社説]同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月1日 4時0分
社会の意識の変化、国際的な流れ、さらには憲法が保障する人権の観点から見ても、当然の判決である。
同性婚を認めない民法などの規定について、東京高裁は「違憲」との判断を下した。今年3月の札幌に続き、高裁レベルで2例目となった。
同種の訴訟は札幌地裁を皮切りに計6件起こされ、地裁では5件が「違憲」「違憲状態」と判断された。
今回の東京高裁は、同性間に配偶者としての法的身分関係を認める規定を設けていないことを「合理的な根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをするもの」と断じた。
その上で、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。
特徴的なのは、同性婚を巡る新たな制度の在り方について言及した点だ。
民法や戸籍法の規定を改正して立法すること以外に、婚姻とは別の制度を新設する方法などもあると踏み込んだ。
具体的な制度の構築は国会の裁量に委ねられるとした上で、ただしそれが男女間の婚姻に与える権利と異なる場合は、憲法違反になり得るとも警告した。
一方で、立法不作為による賠償請求については、同性婚を容認すべきだとする要請に対して、最高裁の判断が示されていないとして認めなかった。
だがもはや、司法の婚姻平等の流れは定着しつつある。最高裁の判決を待つのではなく、国会は是正に向けて早急に動き出す必要がある。
■ ■
東京高裁は、社会の意識の変化を示す根拠の一つとして、パートナーシップ制度の急速な広がりにも触れている。
現在、全国440以上の自治体が同制度を取り入れており、全人口の約85%の居住地域に達している。
各種世論調査でも「同性婚に賛成」とする意見は7割を超えており、異を唱える声は少数派になりつつある。
偏見や差別だけではなく、正式な家族と見なされないことで、病院での対応やアパート契約などの不動産手続き、学校関係など、さまざまな場面で生きづらさを抱えてきた同性カップルは多い。
原告の一人は「違憲と聞けた。生きていて良かった」と喜びの声を上げた。判決が、多くの人々に大きな勇気を与えたはずだ。
■ ■
先の衆院選では、主要野党が公約に同性婚の導入を掲げた。与党の大敗という結果を見ても、国民の意識がどこにあるのかを真剣に考える必要がある。
世界の潮流から取り残されていることも事実だ。
先進7カ国の中で日本だけが、異性婚と同等の権利を認める国レベルの制度を持っていない。
同性婚導入については、国連人権理事会から何度も勧告を受けているが、真摯(しんし)に向き合う姿勢は見えない。
国は問題を先送りにせず、判決を重く受け止めるべきである。
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