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[社説]石垣陸自がパレード 軍事色前面で不適切だ

沖縄タイムス+プラス / 2024年11月5日 4時0分

 島の祭りのパレードで、迷彩服の隊員が「一撃必墜」の旗を掲げ隊列を組んで行進する-。そうした状況には違和感が拭えない。

 石垣市で開かれた石垣島まつりの市民大パレードに、陸上自衛隊石垣駐屯地の隊員ら約70人が参加し、迷彩服姿で行進した。

 まつりは1953年の商工祭に由来。市長を委員長として経済関係者などの実行委員会形式で開催され、地元の団体・企業と市民の交流を図る一大イベントだ。

 メーンプログラムのパレードでは、企業のほか自治会や小学校など地域のさまざまな団体が日頃の活動をPRしながら練り歩く。

 そこに昨年から陸自が参加している。「公務」の位置付けで、昨年も約120人が迷彩服で行進した。

 指揮官が部隊の状況を調べる「観閲行進」さながらの行進に、一部の市民からは「戦争を想起させる」と懸念する声が上がった。

 一方、中山義隆石垣市長は、市議会で自衛隊の参加を問われ「問題ない」との認識を示した。

 その結果、今年も再び参加したのである。まつり会場には陸自の「出店」も設けられ、軍用車両などの装備品が展示された。

 パレードは昨年より規模を縮小したものの、「一撃必墜」や「闘魂」などと書かれたのぼり旗を持って歩く隊員もいた。

 「一撃必墜」は敵のミサイルを一撃で撃ち落とすという意味だ。第348高射中隊のスローガンのようなものという。

■    ■

 沖縄戦では、日本軍第32軍が「一人十殺」(1人で10人の敵を殺すこと)を合い言葉に、県民を戦場に駆り出した。

 32軍の長勇参謀長は「全県民が兵隊になり、一人十殺の闘魂を持って敵を撃破するのだ」とげきを飛ばした。

 のぼり旗は、そうしたことを彷彿(ほうふつ)とさせる。地域の行事に自衛隊が参加することはこれまでもあったが、今回のように軍事色を前面に出すのは異例のことだ。

 このところ各地で自衛隊のこうした政治的な行動が目立つ。年明けには陸自幹部や宮古島駐屯地の幹部らが制服を着て神社に集団参拝する問題が相次いだ。

 4月には陸自が公式X(旧ツイッター)で、「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」と投稿していたことも明らかになり、防衛省が「誤解を招いた」として削除した経緯がある。

■    ■

 憲法9条の下、自衛隊には「専守防衛」や「非核三原則」などさまざまな制約が課せられてきた。それが安保法制により大きく転換してきた。

 集団的自衛権の行使容認をはじめ、敵基地攻撃能力の保持など「平和国家」の根幹に関わる決定が、十分な国会議論もなく押し進められてきたのである。

 今回の祭り参加はこうしたなし崩し的な変化の延長線上にあり、市民との交流というより政治的なものに映る。不安をあおる行動は厳に慎むべきだ。

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