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[社説]無形文化遺産に泡盛 伝統守り 伝える機会に

沖縄タイムス+プラス / 2024年11月6日 4時0分

 泡盛や日本酒、本格焼酎など、日本の「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが確実となった。

 ユネスコの評価機関が勧告した。12月にパラグアイで開かれる政府間委員会で正式決定する見通しだ。

 勧告の中で「酒は日本の生活に根ざし、社会的文化的な行事に欠かせない」と強調する。経験を積み重ねた杜氏(とうじ)や蔵人たちの仕事が「酒の品質を決定する」と高く評価した。

 沖縄では、泡盛が地域の神事やシーミー(清明祭)、ウガン(御願)などの文化を支えている。琉球王国時代から受け継がれてきた酒造りが認められたことを喜びたい。

 「伝統的酒造り」は、麹(こうじ)菌を使い、米や麦といった原料を発酵させる日本古来の技術だ。500年以上前に原型が確立し、各地の気候や風土に合わせながら受け継がれてきた。

 泡盛には黒麹菌を使うのが大きな特徴になる。製造過程でクエン酸を大量に生成することで、他の麹菌より、もろみの酸度を高くすることができる。雑菌による腐敗を抑え、温暖多湿の沖縄に適している。

 若い酒をつぎ足し古酒を育てる「仕次ぎ」など、貯蔵法にも独自性を持つ。

 沖縄の歴史と風土、それに職人たちの知恵と技術が溶け込んだ文化である。

 先人が培った製法を、世界が認めたことになる。

 守り抜く意識を高め、次世代に伝承する決意を固める機会としたい。

■    ■

 商品としての泡盛には課題も多い。

 出荷量は2004年をピークに、23年までの20年間で半減以下に落ち込んだ。

 ビールやハイボール、ワインなど好みの多様化に加え、飲酒の機会が減ったといった社会的要因がのしかかっている。

 5月には沖縄の復帰から続く泡盛の酒税軽減措置の段階的な削減が始まった。酒税分を価格転嫁することで、他の酒類との厳しい競争にさらされている。

 泡盛は県内消費が8割を占め、海外への輸出は全体の数%に過ぎない。

 観光客を含めた県内消費を伸ばすとともに、海外販路の拡大が重要だ。

 各酒造所は商品開発や、炭酸割りといった新たな飲み方の提案などで生き残りを懸けている。

 世界的な知名度を上げ、魅力の発信によりいっそう力を入れてもらいたい。

■    ■

 沖縄関係では「組踊」と「宮古島のパーントゥ」に次いで、3件目のユネスコ無形文化遺産登録になる。

 県は、しまくとぅばや琉球料理、三線、空手など「沖縄の伝統文化」の登録に向け、すでに推進協議会を設置している。首里城正殿の完成する26年までの国への提案を目指している。

 登録によって文化の継承や観光客の増加、地域の活性化、経済発展など、多くの利点が想定される。

 同時にオーバーツーリズムなどの課題もある。地域全体で沖縄の伝統文化を守り、後世につなぐ取り組みが求められる。

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