[社説]トランプ氏勝利 ガザ停戦急ぎ住民守れ
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月7日 4時0分
アメリカ社会は女性の大統領を迎える準備ができていなかったのだろうか。
5日投開票された米大統領選は、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領を破り、勝利した。
トランプ氏を支持する岩盤支持層の主張や行動で目に付いたのは、強さや力を信奉するマッチョイズム(男らしさを重んじる思想)である。
7月の選挙集会でトランプ氏に対する暗殺未遂事件が起きた時も、トランプ氏はひるまずに強い指導者像を打ち出し、支持層を熱狂させた。
だが女性候補だから敗れたとまではいえない。
米国の有権者は、経済・物価対策、移民問題、ガザ危機に対するバイデン政権の政策に強い不満を抱き、変化を求めたのである。
大統領選は、ハリス氏が敗れたというよりも、バイデン政権が敗れたというべきだろう。
トランプ氏は、ハリス氏を「ひどく無能で知能指数(IQ)が低い」などと差別的な発言を繰り返した。
ハリス陣営が同じ土俵で反論したため、中傷合戦がエスカレートし、社会の分断を深める結果を招いた。 米国社会の分断と対立は深刻である。
「米国第一主義」を掲げるトランプ新大統領の下で、世界は安定の方に向かっていくのか、混迷の度を深めるのか。
どちらとも断定できないような、予測困難な時代が始まろうとしている。
■ ■
注目したいのは、民主党の岩盤支持層とされてきた若者や黒人男性、アラブ系住民の中にトランプ支持を公言する有権者がみられたことだ。
ハリス氏はなぜ、岩盤支持層を固めることに失敗したのか。
イスラエルの自衛権を認め、イスラエルを軍事的に支援し、武器を供給し続けてきたのはバイデン政権である。
その結果、パレスチナ自治区ガザでは、あまりにも多くの罪なき市民が死んでいった。今もなお。
若者や大学生、アラブ系住民らが批判の声を上げたのは、米国民主主義の健全性の表れというべきだろう。
その矛先は、米国の政治家の中で、最もイスラエルに近いとされるトランプ氏にではなく、副大統領のハリス氏に向けられたのである。
■ ■
ハリス氏がパレスチナの苦境に寄り添う姿勢を示し、膨れ上がる民間人の犠牲を憂慮していたのは確かだ。
だが、イスラエルへの武器禁輸に踏み切ることはなかった。
本来の支持層の中から「ハリスを見捨てよう」という落選運動が起きたのは、今回の大統領選を象徴している。
トランプ氏には、ガザへの攻撃を止め、人道危機を回避するための支援策を早急に講じることを強く求めたい。
ガザの停戦。これが最優先すべき政策だ。
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