[社説]琉大学長に喜納氏 女性活躍の先導に期待
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月20日 4時0分
琉球大学の次期学長に、副学長で国際地域創造学部教授の喜納育江氏が選出された。女性の学長は1950年の創設以来、初めてとなる。
国立で人文、社会、自然、医学の4領域の学部を持つ「総合大学」としては国内初の女性学長だ。
喜納氏は英米文学やジェンダー研究が専門。琉大のうない研究者支援センター長、ジェンダー協働推進室長などを歴任し、学外でも県の男女共同参画審議会会長などを務めた。
喜納氏は「多様性に対する意識が高い研究環境を整備したい」と意欲を語る。
女性研究者の育成、処遇改善を進めることで学内を活性化させるとともに、高等教育機関として沖縄の女性活躍を先導する役割を果たしてもらいたい。
先進国の研究者に占める男女の比率は、ほぼ同等レベルに達した。一方、日本の大学・大学院の女性教員の割合は2020年、比較できるOECD32カ国のうち最も低い30%だった。
家事や育児、介護は女性の仕事だとする旧態依然とした考え方が背景にある。「女性に研究職は向かない」との無意識のバイアスが、女性の職業選択の幅を狭めているのではないか。
産休・育休などによる研究の中断が、女性研究者のキャリア形成に影響するという不利益も残る。
琉大の女性教員の割合も2割と低い。学内のジェンダー平等はもちろん、働きやすい教育研究環境の整備へ手腕を発揮してほしい。
■ ■
国立大学の女性学長は極めて少ないのが現状だ。
2023年度の学校基本調査によると、86人中4人の4.7%だ。公立の20.0%、私立の14.9%を大きく下回る。
1997年に奈良女子大で初めて誕生した後、累計でも14人しかいない。
公立や私立でも女子大のほか、福祉や看護など女性教員の多い大学が中心だ。
理系学部のある総合大学では、女性の昇進やキャリアアップを阻む「ガラスの天井」がさらに高く、強固に存在する可能性がある。
世界に目を向ければ、理系に女性が少ない国は珍しい。どんな仕事でも多様な視点は新たな発見につながる。特に、研究分野ではそうした視点が求められるのではないか。
女性研究者が生き生きと働き、能力にあったキャリアを積む環境を得ることは、大学組織にも刺激を与えるに違いない。
■ ■
琉大は米軍統治下の布令によって設立した独特の歴史がある。
県内唯一の国立大学で、県経済や政治、教育など幅広い分野に人材を輩出し、数々の研究成果を挙げる。
来年には、宜野湾市の西普天間住宅地区跡地へ、琉大病院と医学部を移転し、開院と開学を控える。
県内初の薬学部設置の構想もある。県が目指す自然史博物館設置にも、琉大の知見や経験を生かす必要があるだろう。
喜納氏の任期は6年。県内の研究や高等教育のけん引役を期待したい。
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