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[社説]宮城島から辺野古土砂 島の土を基地に使うな

沖縄タイムス+プラス / 2024年11月22日 4時0分

 名護市辺野古の新基地建設を巡る土砂搬出のため沖縄の豊かな自然と風景が壊され、生活環境への悪影響が懸念される。

 新基地建設で、沖縄防衛局は、うるま市の宮城島から埋め立て土砂の搬出を始めた。沖縄本島北部以外からの搬出は初めてである。

 防衛局が、搬出開始を県やうるま市に対して通知したのは当日の午前だった。宮城島の採石場では、土砂を積んだダンプカーが次々と入っては出て、幅の狭い道路を抜けて、中城湾港に向かった。

 本島と海中道路を通じて結ばれる宮城島は、面積が5.5平方キロ。四つの集落から成り、伝統文化が息づき、農地が広がる地域だ。

 昨年の台風による土砂崩れで、伊計島へつながる農道は一部で片側交互通行になったまま。日常的に観光客らで300メートル近く渋滞することもあるという。

 ニュースで詳細を知って採石場前を訪れた島に住む80代の女性は「畑仕事をしていて、行き交うダンプの数に驚いた」と語った。

 小さな島にダンプが何百台も往来すれば、深刻な渋滞が発生するのではないか。事故が起きる懸念も高まる。

 防衛局は、中城湾港全体を管理する県には、使用申請を出さず、同じ国の機関の沖縄総合事務局が一時的に使用し、管理権を持っている区域を拠点にするという手段を取った。

 当日に連絡するというのは、いかにも形だけのやり方だ。地元軽視に他ならない。

■    ■

 軟弱地盤改良のため防衛局が県に提出した設計変更申請で、県内調達可能量は当初の670万立方メートルから4476万3千立方メートルへと約6.7倍に増えた。

 変更前の土砂採取地は、北部地域だったが、国の代執行で承認された南部(糸満市、八重瀬町)、宮古島、石垣島、南大東島と共に、新たに宮城島が加わった。宮城島の調達可能量は計画全体で必要な約2020万立方メートル(東京ドーム約16.3個分)の約1.5%だが、30万立方メートルにものぼる。

 宮城島、伊計島周辺海域は過去に赤土流出があっただけに、モズク生産など漁業への影響も心配される。

 土砂の採取が全県的に広がれば、ダンプによる騒音や粉じん被害が拡大する。島の形が変わるほどの大規模な採取により、沖縄の自然や風景が変わってしまうのではないか。地域社会へ及ぼす影響を危惧する。

■    ■

 大浦湾の軟弱地盤の改良工事は難航が予想される。新基地は供用開始まで12年以上かかるとされ、政府は普天間飛行場の返還期日さえ示していない。

 県民が求めているのは、基地の整理縮小や負担軽減である。危険性除去を早期に図るという観点から計画は、破綻していると言わざるを得ない。

 沖縄戦の戦没者の遺骨が混じる可能性のある本島南部の土砂はもちろん、島の土を使って新たな基地を造ることは、県民の政府への不信と新基地への反発を強めるだけだ。

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