[社説]政府の経済対策 暮らしを支える内容か
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月24日 4時0分
前年度の補正予算と似たメニューが並び、緊急性のない事業も目に付く。これでは「ばらまき」と言われても仕方ない。
政府が新たな経済対策を決定した。
物価高を克服するため、住民税非課税の低所得世帯へ配る3万円の給付金が目玉だ。そのうち子育て世帯には子ども1人当たり2万円を上乗せする。
昨年は定額減税を受けられない非課税世帯へ7万円を支給した。
今回は賃上げで賄いきれない部分を補うことを重視し、子育て世帯に手厚くした形だ。低所得世帯ほど物価高の影響は深刻だ。暮らしへの目配りは理解できる。
12月に終了予定だったガソリン代の補助は縮小しながら継続する。電気・都市ガス代の補助は来年1~3月に再開する。
家計負担が大きく困窮層の支援につながる一方、大企業ほど恩恵を受ける側面もある。一時しのぎの延長ではなく、困窮層に絞った効果的な対策につなげるべきだ。
本来、補正予算での大規模な経済対策は緊急的な施策である。財源不足の中、より効果的な支出が求められる。
ところが、石破茂首相は衆院選公示日に「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」と表明した。
経済対策にかかる経費として一般会計補正予算案に13兆9千億円を計上。地方自治体や民間企業の支出分を合わせた事業規模は39兆円に上る。
いずれも前年度を上回る。「規模ありき」の感は否めない。
■ ■
昨秋の経済対策で当時の岸田文雄首相は、実質国内総生産(GDP)成長率1.2%程度が見込めるとした。
しかし今年7~9月の成長率は0.9%にとどまっている。同じようなメニューで物価高を克服できるのか。
経済対策の決定に際し石破首相は「暮らしが豊かになったと感じてもらうためには、現在、将来の賃金、所得が増えることが必要だ」とした。それについて異論はない。
だが、人工知能(AI)や半導体産業へ複数年にわたり公的支援する枠組みの設置などは本来、当初予算に計上すべきである。
地方創生に取り組む自治体には新たな交付金を配分する。一方、交付金を巡っては自治体の使い方に対する懸念も出ており、都度効果の検証が欠かせない。
■ ■
年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の引き上げも盛り込まれた。
選挙で公約した国民民主党が主導権を握り、今後引き上げ幅などの協議が始まるが、恒久的な減税策は国や地方の財政への影響が大きい。政治的アピールの材料とするのではなく、慎重な議論が必要だ。
補正予算は真に急がなければならない対策に重点的に充てられるべきだ。膨張する予算案に無駄はないのか。首相は国会で丁寧に説明すべきだ。
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