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「人工冬眠」実現へ前進 災害時の救命率向上が期待できる理由とは

沖縄タイムス+プラス / 2024年11月27日 13時29分

[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1348)

 今年の夏は世界的に異常な暑さでしたが、秋に入って幾分過ごしやすい日も増えてきたのではないでしょうか。沖縄と違って北国では、紅葉の季節となると動物たちも冬支度と冬眠の準備で忙しくなるようです。特に近年はドングリなどの不作も重なり、人里に下りてきたクマによる被害が相次いで報道されていました。

 さて同じ哺乳類でもクマやリスは冬眠しますが、ヒトやマウスは冬眠しません。冬眠とは餌不足の冬季を生き延びるため、低体温状態で基礎代謝を低下させる生理現象です。しかしヒトでも、雪山での遭難や冬の河川への転落などで長時間の低体温状態から蘇生したケースが多数報告されています。クライネ・レビン症候群という1日20時間近く眠る「冬眠」のような状態を呈する過眠症も存在します。

 2023年に開催された日本睡眠学会(第45回)で、クライネ・レビン症候群に関する興味深い研究が発表されていました。筑波大学の研究グループが発表した演題で「クライネ・レビン症候群で冬眠に関与すると考えられているタンパク質の異常」が報告されていました。

 この冬眠との関与が指摘されているタンパク質は、Qニューロンという神経回路の興奮で発現します。20年に科学雑誌「ネイチャー」に発表された論文で、本来冬眠しないマウスのQニューロンを人工的に活性化すると冬眠のような低代謝状態となったことが報告されました。

 この画期的な発見により、「人工冬眠」の技術が実現へ向けて大きく前進する可能性が期待されています。この技術がヒトに応用できれば、災害や事故などで重傷を負った患者を低代謝状態に誘導して臓器を保護したり、治療までの時間を稼ぐことで救命率を高めることができたりするのではないかと考えられています。

 将来、宇宙飛行士を人工冬眠させることができれば、これまで人類が到達できなかった惑星まで有人探索を行えるようになり、宇宙開発が飛躍的に進展する可能性も期待されているようです。=第2、4水曜日掲載

(普天間国博・琉球大学病院精神科神経科=西原町)

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