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[社説]現行保険証「廃止」 一本化強制せず併用を

沖縄タイムス+プラス / 2024年12月2日 4時0分

 医療機関への受診時に使う現行の健康保険証は、きょう2日で新規発行が停止される。

 マイナ保険証への一本化に向けてあらわになったのは、政府の強引なやり方だ。国民の根強い不信と懸念を置き去りにした見切り発車と言わざるを得ない。

 政府は「デジタル社会のパスポート」と位置付けるマイナンバーカードの普及を目指し、2022年、健康保険証の廃止とマイナカードに保険証機能を持たせたマイナ保険証への一本化を表明した。

 マイナ保険証はマイナカードを取得し、利用登録することで使える。医療機関や薬局の窓口にある読み取り機にかざせば、顔認証や暗証番号の入力などで本人確認ができる。患者が同意すれば、医師らが受診歴や薬の処方歴などを閲覧できる。

 政府はデータに基づいた治療法の選択や、過剰な投薬が防止できるとしてメリットを強調する。

 しかし10月時点の利用率は15.67%と低迷している。都道府県別では沖縄が最も低い7.43%。一本化には程遠い状況だ。

 普及が進まない要因の一つが、マイナンバーを巡る別人情報のひも付けなどミスが相次いだこと。全国保険医団体連合会の調査では、7割に当たる医療機関が5月以降にマイナ保険証のトラブルを経験したと答えている。

 個人のプライバシー、時に命にも関わるデリケートでセンシティブな情報だけに不安を覚える人は少なくない。

■    ■

 そもそもマイナカードの取得は任意である。

 他方、健康保険証は病気やけがなどの際、必要な医療を受けるためになくてはならないもの。それが廃止され一本化されるのは、カード取得の義務化にほかならない。

 2年前、当時の河野太郎デジタル相が一本化を発表したのも唐突だった。マイナカードを定着させたいため強行策に踏み切った形だ。

 さらにカード普及に向けては、住民の取得率を自治体の交付税配分に反映させるとした政府の手法も批判を浴びた。

 プライバシー侵害への懸念からドイツやフランスでは行政分野ごとに異なる番号が使われている。

 個人番号を確認できるICチップ付き身分証と健康保険証を一本化させているのは先進7カ国では日本だけである。

■    ■

 急速なデジタル化や唐突な一本化に、特に高齢者や障がいを持った人たちは戸惑いを隠せない。

 発行済みの健康保険証は最長1年間使える。マイナ保険証を持たない人には保険証代わりになる資格確認書が交付される。

 しかし、それでも不安は尽きない。

 一本化を巡り石破茂首相は自民党総裁選で「納得しない人がいっぱいいれば、併用も選択肢として当然だ」と発言している。

 カード取得を一方的に強制せず、現行保険証を使い続ける道を残すべきだ。

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