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[社説]増える事業承継 廃業防ぎ地域に活力を

沖縄タイムス+プラス / 2024年12月13日 4時0分

 土地に根差し愛されてきた店は、地域の歴史であり文化でもある。その灯を受け継ぎ守る「事業承継」は地域活性化の新たな力となる。

 那覇市牧志公設市場隣に店を構え、今年5月に閉店したかまぼこ店「ジランバ屋」の事業承継が決まり、来年6月にも再出発する。

 ジランバ屋は1926年ごろに創業。沖縄戦を挟み、かまぼこなど庶民の味を1世紀近く提供し県民の舌を楽しませてきた。

 創業者が亡くなった後は子や孫が店を続けてきたが、従業員の高齢化と後継ぎ不在などから、閉店を余儀なくされた。

 店を引き継ぐのは、ジランバ屋の近くでポーク卵おにぎりを販売する「ポーたま」の清川勝朗社長だ。こちらも20年近く市場で店を営み、ジランバ屋がどれほど親しまれてきたかをひしひしと感じたという。

 店の看板商品だった「ちきあぎ」など、昔ながらの味を守っていくというから心強い。

 かつて、家業を受け継ぐのは子や孫だった。しかし最近は親族内に後継者を探すのが難しくなり、従業員や第三者が事業を引き継ぐケースも出てきた。

 事業承継で重要なのは、単なる経営権や財産の譲渡ではなく、店の歴史や理念までも受け継ぐことだ。

 県内では他にも、そば屋やおでん屋、生花店、精肉店などの承継例がある。地域の店が息を吹き返し活気を取り戻せば「地元の味」「地域らしさ」を求めて人が集まり、街も元気になる。その意義は大きい。

■    ■

 一方で、惜しまれながら廃業した店もある。背景にあるのは、全国に比べ深刻な県内の後継者不足だ。

 信用調査会社などのまとめによると、2023年の後継者不在率は66.4%で全国平均の53.9%より高い。経営者の高齢化も進み、70代で休廃業や解散した企業の代表者は、01年の約1割から23年には約5割に急増。60代以上も約4割から約8割に増えた。

 高齢化や後継者不在の悩みをどこにも相談できず、ひっそりと店を畳む「サイレント廃業」に追い込まれる事業者も出てきた。個人経営や小さな店ほど「もう潮時だ」と、閉店を決意することも多いのだろう。

 だが、店の常連客が後継者となった県内の事例もある。店を守り抜くという認識が、店、客、地域で一つになれば、新たな道を見いだす契機になるはずだ。

■    ■

 国の委託で47都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターは「譲りたい」「引き継ぎたい」という両者を仲介。23年度の県内の新規相談数は462件に上り、24年度は8月時点で229件と前年同期を30件上回る。

 だが一朝一夕にできるものではない。早い段階から相談を重ね、丁寧に進めていくことが重要だ。県内は開業率が全国一高く元気な経営者も多い。地元で踏ん張る老舗と手を組む選択肢もある。「地域の宝」を守る新たなビジネスモデルの構築につなげたい。

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