【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た？】人体の構造について 肉体の奥にあるものは

人体の構造について

　私の家は坂をのぼった上の方にあって、学校帰り、赤いランドセルを背負い、そそり立つ坂を見上げては、ため息をついていた。

　ある夏の日、坂の途中に車にひかれた犬の死骸が転がっていた。気づけば私は急坂を駆け上がり、傍らで死骸を凝視していた。むき出しになった臓器から目が離せない。それと似たようなものが自分の中にあることは何となく知っていて、だからなのか、見入られるというより、知りたい欲望に駆られ、必死で観察していた。

　友人にこういうのは見るもんじゃないと促され、その場を離れたが、あの日以来、体と自分の距離が一気に近づいた気がする。

　この映画はその感覚を思い出させる。肉体の中の中、奥の奥にカメラを進め、人体がどういう構造なのかをただただ見せてくる。受け止め方次第だが、私はつい、どう生きるかを考えていた。（桜坂劇場・下地久美子）

◇桜坂劇場で上映中