[社説]海兵隊グアム移転 18年かけたった100人か
沖縄タイムス+プラス / 2024年12月16日 4時0分
あまりに少なく、あまりに遅い。今後どのくらいの規模で、いつまでに移転完了するのかも一切明かされていない。これで本当に基地負担が軽減するのか。
在沖米海兵隊員約9千人を国外移転する計画について、中谷元防衛相が先遣隊約100人のグアムへの移転が開始されたと発表した。
2006年に日米両政府が合意後、移転が実行されるのは初めて。
06年の「再編ロードマップ」では、普天間飛行場の移設・返還と嘉手納以南の基地返還に合わせ、14年までに在沖海兵隊員約8千人をグアムに移転させることが決まっていた。
だが、実効性を疑問視した米議会が11年にグアム移転費を凍結。日米両政府は翌年、約9千人をグアムやハワイなどに移転することで再合意した経緯がある。
今回、最初の合意から18年たちようやく実行に移された形だ。
中谷防衛相は「大変意義がある」と言うが、第1陣が第3海兵遠征軍の後方支援要員たった100人とは驚くほかない。
グアムには4千人以上が移転予定だ。今後、第3海兵遠征旅団(キャンプ・コートニー)、第4海兵連隊(キャンプ・シュワブ)、第4戦闘後方支援大隊(キャンプ瑞慶覧)の全員か一部を移転するという。
しかし、県民が最も知りたい移転完了時期について防衛省は「海兵隊が計画を決めておらず、示せない」というのである。
米側任せの姿勢で、日本政府の主体性が全く見えない。
■ ■
そもそもグアム移転は沖縄の基地負担軽減のためとされ、日本政府は移転費のうち28億ドルを上限とする支出も決めた。すでに移転した部隊が駐留予定のグアムの海兵隊基地「キャンプ・ブラズ」の整備などで約98%に当たる27.5億ドルを負担したという。
移転費はほぼ使い切っているのに対し、なぜ移転が進まないのか。今後、追加要求もあるのではないかとの疑念も湧く。
防衛省はこれまで支出した詳細について国会で説明しなければならない。それが県民に対する義務である。
この間、在沖米海兵隊による事件事故は後を絶たない。
16年には海兵隊のオスプレイが名護市安部の沿岸に墜落。翌17年には海兵隊ヘリが小学校に窓枠を落下させる事故も起きた。移転が遅れたことへの日米両政府の責任は重い。
■ ■
中国への対処を念頭に日米の軍事一体化が進む。
昨年はキャンプ・ハンセンに駐留する第12海兵連隊が、島しょでの戦闘に特化した第12海兵沿岸連隊(MLR)へ改編された。
日米合同訓練も活発化・大規模化。移転が完了しないまま沖縄に残る部隊が増強され、さらなる負担増となる懸念も出ている。
ハワイへの移転規模や移転開始の時期についてもいまだに不明だ。「負担軽減」を単なる政治アピールとすることは認められない。
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