[社説]嘉手納 降下訓練が最多 合意順守は日米の責任
沖縄タイムス+プラス / 2024年12月20日 4時0分
嘉手納町や北谷町、県が中谷元防衛相に中止を要請した直後に、米軍は嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した。
嘉手納基地での降下訓練は、これで今年9回目。年間最多だった2019年の4回を大きく上回った。もはや訓練は「例外」ではなく完全に「常態化」している。
嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長代理の當山宏嘉手納町長は「住民の安全と平穏な生活を守る立場から、訓練の中止」を強く求め、玉城デニー知事も「県民の思いを踏みにじるもの」と強く批判した。
読谷補助飛行場で実施していたパラシュート降下訓練は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、伊江島に移すことが合意された。
しかし、2007年の日米合同委員会で「自然条件などの制約によって伊江島の使用が困難な例外的な場合、定期的でない、小規模の訓練は嘉手納基地を使用できる」とした合意が交わされた。ただ、この例外規定は地元の了解も得ず、説明もされない「密約」だった。
具体的な運用は全て米軍の裁量に委ねられているのが現状だ。米軍は伊江島補助飛行場の滑走路の改修工事を理由に挙げるが、完了までに1年近くかかる可能性もある。滑走路の改修を計画的に実施してこなかった責任は米軍にある。
相次ぐ訓練強行は明らかに日米合意に反している。 政府同士の合意をいとも簡単に覆すことは、住民の信頼をも失うものだ。
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パラシュート降下訓練を住宅密集地や国道が隣接する嘉手納基地で実施することは危険というほかない。
米政府監査院(GAO)がまとめた12~22米会計年度の米軍特殊作戦部隊の事故に関する最新報告書で、発生件数が最も多いのはパラシュート降下訓練関連だった。期間内の事故3624件のうち、パラシュート関連が972件に上った。
事故原因の約86%は「訓練基準の順守失敗」など人為的ミスだった。事故はいつでも起こり得る。
風に流されて民間地域に兵士や物資が落下すれば、大惨事につながりかねない。
リスクの高い降下訓練を「例外」を盾に、嘉手納基地で続けることは、地元住民の安全をないがしろにするものだ。
■ ■
戦闘機の深夜早朝の激しい爆音、無人偵察機MQ9の配備、悪臭や環境汚染問題など、嘉手納基地周辺住民の負担は増している。
伊江島補助飛行場の滑走路の不具合などを理由に米軍の「例外的」との主張を追認している日本政府の責任も問われる。
日米両政府は、地元の懸念を払拭するためにもSACO合意の原点に立ち返り嘉手納での降下訓練を全面的に中止すべきだ。どうしても訓練が必要というなら伊江島補助飛行場の滑走路改修が完了するまで県外・国外に移転するべきだ。
例外を常態化することは、許されない。
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