[社説]牛島司令官の句 再掲載 住民犠牲への配慮欠く
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月5日 4時0分
いったん取り下げたのに再び掲示することになったのはなぜなのか。背骨がふらつくような対応で信頼は得られない。
陸上自衛隊第15旅団のホームページ(HP)に、日本軍第32軍の牛島満司令官の辞世の句が再掲載された。
掲載を巡っては昨年10月末、第32軍と自衛隊の連続性を示したものとして批判を浴びた後、HPのリニューアルを理由に取り下げていた。
しかし、元日に改めて掲載されたのである。
15旅団の沿革として臨時第1混成群の初代群長である桑江良逢氏の訓示を記した資料を画像として掲示。その中にこの歌も記されていた。
資料から抜き出し大きく表示した前回と比べると不鮮明になった。一方、辞世の句であることははっきりと分かる。
15旅団は掲載についてあくまでも「歴史的事実を示す資料」とし、32軍との連続性や、牛島司令官を礼賛する意図はないと釈明する。
それであればなぜこの歌の掲載にこだわるのか。除いて掲載する方法もあったはずだ。
沖縄戦では本島南部への32軍の撤退が、多くの住民犠牲を招いた。
「秋待たで枯れ行く島の青草は 皇国(みくに)の春に甦(よみがえ)らなむ」とした歌は撤退を決めた牛島司令官が、自死する前に陸軍首脳に向けて打電したとされる。
掲載は住民犠牲への配慮を著しく欠く上に憲法の精神にも合致しない。
■ ■
15旅団では昨年、那覇駐屯地内の展示施設に牛島司令官の軍服を陳列していたことも判明した。
施設内で流れるナレーションでは日本軍を「わが軍」とし、スクリーンには牛島司令官の辞世の句も投影されていたのである。
日本軍との連続性を示しているとの指摘は当然だろう。同施設は現在リニューアル中だという。HPと併せて展示内容も抜本的に見直す必要がある。
今年は戦後80年の節目に当たる。
沖縄戦で牛島司令官は「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」として住民が降伏することを否定。そのためおびただしい犠牲が出たのである。
15旅団はこうした史実をどう捉えているのか。再掲となれば「意図はない」では済まされない。
旅団長は会見を開き、再掲の理由と歌の内容についての見解を示すべきだ。
■ ■
陸自では昨年、石垣市で開かれたまつりのパレードに、石垣駐屯地の隊員ら約70人が迷彩服姿で行進したことも問題となった。
「一撃必墜」などと書かれたのぼり旗を掲げる隊列に、住民から「沖縄戦を想起させる」との声が上がったのである。
自衛隊を巡っては、かつての戦争を「大東亜戦争」とするなど各地で認識が問われる事態が起きている。 辞世の句再掲載については、自衛隊の最高指揮官である石破茂首相の説明も求められる。
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