[社説]災害関連死 防止へ 情報共有を急げ
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月8日 4時0分
救えた命だったかもしれない。国は積極的に全国の事例を集めて原因を検証し、早期に抜本的な対策を自治体と共有するべきである。
1995年の阪神大震災以降、「災害関連死」に認定された人が全国で計5456人に上ることが、共同通信の集計で分かった。
地震による建物倒壊や津波に巻き込まれて亡くなる「直接死」とは別に、避難生活を通じて持病や体調の悪化、疲労やストレスなどで亡くなった人たちである。
真冬に発生した阪神大震災では、避難所でインフルエンザなどの感染症が流行し、921人が関連死で亡くなった。以降、認識されるようになったが、正確な実態はいまだにつかめていない。
2016年の熊本地震や昨年1月の能登半島地震のように、関連死の人数が直接死を上回ったケースもある。
能登半島地震では、被災地に高齢者が多く、避難生活が長期化する中で、電気や水道が止まったり、福祉施設や医療機関の機能が低下したりすることが、関連死の要因として指摘されている。
30年にわたり、災害のたびに避難所の環境などについて課題が指摘されてきたが、抜本的な解決に至っていない。
関連死は、暴風や豪雨などの災害時にも起きている。防止するための環境整備について、平時から検討を重ね、備えておく必要がある。
■ ■
関連死は、遺族の申請に基づいて審査される。認定されれば最大500万円の弔慰金が支給されるほか、民間の奨学金の対象になるなど、遺族支援の入り口になっている。
全国では大半の市町村が、それぞれ条例を定めて支給業務を担う。
一方、県内では、那覇市を除く40市町村が、合理化を目的に市町村でつくる県市町村総合事務組合(那覇市)に業務を実質委託している現状がある。
関連死の審査は、弁護士や医師らでつくる審査会が行うが、東日本大震災では、地元の市町村以外で審査されると、認定率が低くなる傾向があった。
県内でも昨年の本島北部豪雨を受けて、条例の制定に向けて検討し始めている自治体がある。
関連死を見逃さない体制づくりを各自治体が進めてほしい。
■ ■
石破茂首相は、事前防災から復旧・復興までを一貫して担う「防災庁」を設置する方針だ。内閣府の防災部門の人数と予算を増やし、専任の閣僚を置いて災害対応で指揮を執る。避難所の環境についても、1人当たりの面積などを定めた国際基準「スフィア基準」を全国で満たすとしている。
一方、関連死については実態を網羅的に把握する仕組みもない。どこでどんな理由で発生しているのか。国は都道府県や自治体と連携して実態を把握し、災害への備えや避難所の運営などについて地域格差の解消も目指すべきだ。
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