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[社説]また米兵性暴力事件 「綱紀粛正」言葉だけか

沖縄タイムス+プラス / 2025年1月9日 4時0分

 「綱紀粛正」は言葉だけか。もはや信用はゼロに等しい。

 県警は、30代の在沖米海兵隊員を不同意性交等致傷の疑いで書類送検した。昨年11月、沖縄本島中部で20代の女性に性的暴行を加えてけがをさせたという。

 2人に面識はなく、事件直後に女性が警察署へ被害を相談し発覚した。

 女性は「命の危険も感じた」とし、今も事件の記憶にさいなまれている。観光地の建物内で被害に遭った。県内では女性の安全という当たり前の日常が脅かされている。

 昨年は米軍関係者による性犯罪の逮捕・書類送検が4件あった。これは過去10年間で最多だ。

 相次ぐ事件を受け、在日米軍司令部は昨年10月から全ての米兵に対し午前1~5時の基地外での飲酒を原則禁止する「リバティー制度」を適用している。

 ところが今回の事件は制度の運用からわずか1カ月後に起きた。事件発生は基地外での飲酒を禁じられた時間と重なっており、米兵一人一人が制度の趣旨を理解しているのか疑わしい。

 米軍は性犯罪について「米軍の中核的価値観を反映するものではない」とし、「全海兵隊員への教育や訓練を通じてこれらの価値観を浸透させるため努力している」とのコメントを出した。

 一体どんな教育をしているというのか。

 事件の防止を目的として昨年7月に創設を発表した「フォーラム」もいまだに発足しておらず、言葉に内実が伴っていない。

■    ■

 昨年6月に発覚した少女の誘拐暴行事件は、県などの地元自治体に伝えられず、報道機関へも公表されなかった。

 今回の事件は、県警が逮捕や書類送検の段階で県に情報提供する運用を開始してから2件目となる。

 しかし、米兵の所属すら明らかにされない状況で、提供された情報を基に地域の安全を確認することは難しい。

 県警は何のためにこうした情報を伏せるのか。

 米軍関係者の犯罪は増加傾向だ。性犯罪などの凶悪犯罪は昨年、1992年以降最多となる8件。窃盗なども含む刑法犯全体の検挙人数は、前年を上回る70人となっている。

 同じ兵士が2カ月連続で摘発される事態も起きており、米軍の組織としての管理能力も問われている。

■    ■

 日本政府の対応にも疑問符が付く。

 米兵事件が相次ぎ発生しているにもかかわらず「綱紀粛正を求める」との決まり文句を繰り返すだけだ。事件事故の防止に本気で取り組もうとする姿勢は見えない。

 頻発する米兵事件の根底には、県内に米軍基地が集中していることがある。基地の整理縮小と、海兵隊の移転計画の加速が必要だ。

 並行して事件事故を防ぐ効果的な対策の提示と実行を、米軍に強く迫るべきだ。

 県民の安全を守る責任を果たさなければならない。

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