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[社説]メタ 事実検証廃止 健全性確保に逆行する

沖縄タイムス+プラス / 2025年1月10日 4時0分

 米IT大手メタが、運営するフェイスブックやインスタグラムなどでの第三者機関によるファクトチェックを、米国内で廃止すると発表した。

 世界中で利用者30億人を超える巨大プラットフォーマーが投稿管理を緩和することで、偽情報やヘイト発言の拡散が懸念される。

 メタがファクトチェックを導入したのは2016年。米大統領選の際にSNSで偽情報が拡散し、氾濫したことの危機感からだ。

 投稿された文章や写真、動画などについて第三者が真偽や正確性を分析し、「虚偽」「改変」などと評価されれば、表示を減らしたり、ラベルを付けたりして警告してきた。

 次期大統領のドナルド・トランプ氏のフェイスブックやインスタグラムを一時停止した時期もあったが、投稿管理について保守派から「リベラル寄りだ」との批判も出ていた。

 今回、マーク・ザッカーバーグCEOは検閲が行き過ぎたと説明し、政治的に偏り過ぎていたと語った。

 しかし、虚偽が疑われる情報の根拠を探し出し、その真偽を問う「ファクトチェック」と、国家や公権力が意に沿わぬ内容や不適当だと判断したものをはじく「検閲」は違うものだ。

 二つを同一視し、専門家らによるチェック体制を自ら廃止することは、ネット言論空間の健全化を後退させる。今月、大統領に就任するトランプ氏への「すり寄り」と捉えられても仕方がない。

■    ■

 大統領選の討論会では、不法移民が犬や猫などペットを食べているとのトランプ氏の発言が爆発的に拡散。差別や誹謗(ひぼう)中傷が広がり、多くの人を傷つけた。

 日本では、能登半島地震の際に助けを求める虚偽の投稿などがあり、救助活動に支障を来した。

 メタは今後、投稿管理について交流サイトの利用者同士でチェックし、虚偽の疑いや補足が必要な場合は利用者が書き込むシステムを取り入れるという。

 だがそれぞれが投稿を読んだ後に修正するには時間がかかるし、そのほとんどは匿名で、どこの誰かも分からない。チェック機能に期待はできないだろう。

 メタは世界のファクトチェック機関の有力な資金提供者でもある。今後、支援がなくなれば機関の運営に支障が出る恐れもあり、事態は深刻だ。

■    ■

 ネット上には「沖縄ヘイト」とも言うべき露骨な沖縄差別や沖縄叩(たた)きがあふれている。辺野古新基地建設に抗議する人が「日当をもらっている」との偽情報のほか、特に選挙になるとデマやフェイクが氾濫する。

 新聞もファクトチェックの取り組みを続けるが、拡散のスピードは速い。だからこそ、ファクトチェックの役割は大きい。適正な投稿管理は、健全なプラットフォーム運営に不可欠だ。

 今夏には、他人を傷つけるなどの有害情報を規制する、情報流通プラットフォーム対処法が施行される。正確な情報の入手は、民主主義の基盤である。

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