[社説]離島の職員定数割れ 強い危機感持ち対策を
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月14日 4時0分
小規模離島自治体の職員確保を巡る状況が深刻だ。将来にわたって必要な行政サービスの水準を維持することができるのか。県全体で「強い危機感」を持つ必要がある。
人口2千人以下の県内離島10町村の正規職員数を本紙が調べたところ、全町村で定数を割り込んでいることが分かった。
欠員が最も多かったのは与那国町で18人、定数の約2割に及ぶ。伊平屋、南大東、北大東の3村が各7人と続いた。
10町村の欠員は計70人、定数の11.5%に上る。
定数割れが深刻化する中、既に住民に不可欠な行政サービスへの影響が出始めている。
与那国町では町立幼稚園1カ所が休園。伊平屋村ではフェリー運航に必要な機関士を配置できていない。渡名喜村では島でただ一つの保育園が6年間、開園できないままだ。
欠員をカバーするために、残る職員の業務や負担が増え、新たな事業に着手できないといった「負のスパイラル」も生じている。
自治体にとって、質の高い行政サービスを担う若手職員や専門職の確保は大きな課題だ。
しかし応募者が少なく、採用が決まっても辞退するなど、急速な人口減は退職者の補充にも影を落としている。
非正規の会計年度任用職員などで対応しているところもあるが、このまま人手不足が続けば、役場の業務が成り立たないといった事態にも陥りかねない。
■ ■
長く出生率日本一の座を守り、最近まで右肩上がりで人口が増えてきた沖縄は、人口面からは「優等生」と見られてきた。
昨年、人口戦略会議が発表した「消滅可能性」のある744自治体の中に、県内からは一つも入っていない。逆に「自立持続可能性」のある65自治体のうち17を県内で占めていた。
人口戦略会議編著『地方消滅2』は、「島嶼(とうしょ)部も含め地域ごとに子育て支援の取り組みがなされていて、人口のボリュームとしては小さくても健闘している」と分析している。
全国と比較すれば健闘しているかもしれない。県全体では活気があるように映るのだろう。
ただ島ごとの人口動態を見ると、小規模離島で現実に広がる風景は危機的だ。
出生率日本一に引きずられ、少々のんびりし過ぎたのではないか。
■ ■
平成の大合併に際し、県内離島町村は「地域の個性をなくす」と国の姿勢を批判した。自然を敬い、伝統を大切にし、人々が深く結び付く島の魅力は、人口や効率性だけでは計れない。
まずは息長く組織を支える正規職員の確保が急務である。
政府は地方創生に向け、若手国家公務員が二つの地域を生活拠点にし、市町村を長期的に支援する制度を来年度から始める。
県も4月から渡名喜村に応援職員を派遣する。
人材派遣の枠組みづくりや財政面での後押しなど支援の充実が求められる。
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