全国ドラマで活躍の沖縄出身俳優 中山琉貴の「ちゅうざんBAND」が新シングル テーマは戦後コザ
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月25日 10時0分
沖縄県出身の俳優・ミュージシャンの中山琉貴が中心となる音楽プロジェクト「ちゅうざんBAND」の2枚目のシングル「オーバーフェンス」がこのほど配信リリースされ、ミュージックビデオが公開されている。歌詞もサウンドも、本人が8歳まで過ごした沖縄市コザの歴史がテーマ。中山は「歴史を知り、学ぶということは、振り返りながら前進していくこと。沖縄・コザの戦後の歩みを知ることで、これからの僕たちへのヒントがあるように思う」と語る。
中山琉貴(なかやま・りゅうき)
1986年8月生まれ。沖縄市、西原町育ち。東京を拠点に映画やドラマなどに出演。2024年のレギュラー出演では、フジテレビ「木曜劇場 ギークス〜警察署の変人たち〜」、AmazonPrimeドラマ「龍が如く~Beyond the Game~」など。2025年1月24日公開の映画「INTERFACE 知能機械犯罪公訴部 第二部 名前のない詩」主演。エーミュージック所属。「ちゅうざんBAND」としては2025年春ごろにアルバムをリリース予定。
嘉手苅林昌の一節を受け継いで
今作の「オーバーフェンス」は、ゲストボーカルと三線に迎えた平安座美央の古典風の歌声や、エイサーやジェット機の環境音で始まるイントロから、エレキギターのひずんだ音色が重なって徐々にロック色を強めていく。中山のポエトリーリーディングラップ(朗読のようなラップ)を主体にして、歌詞そのものをより聴かせる楽曲構成となっている。
歌詞では「1972年以前、以降、だけじゃないよ」「俺はアギヤー 戦果のアギヤー」「かつて押し付けられた営み AサインBar」など、戦後沖縄の歴史をモチーフにしたフレーズを多く展開する。他に、メインセクションでは「唐の世(ゆー)から大和の世 大和の世からアメリカ世」と、沖縄民謡のレジェンド・嘉手苅林昌の「時代の流れ」の一節を拝借しつつ「ウチナー世からアジアの世 アジアの世から世界の世」と重ねるアンサーをすることで、未来性も持たせている。
ミュージックビデオは2024年12月中旬に県内で2日間にわたって撮影。監督はASATO HIGAが務めた。
コザをテーマにオキナワンロック要素も
―曲名「オーバーフェンス」に込めた意味を教えてください。
米軍基地のフェンスというイメージもありますが、フェンスを越えるということに「自分の固定観念や限界を超える」との意味を込めた側面も強いです。
―ミュージックビデオはどのようなイメージで作り上げていきましたか。
観光地で南国的なパブリックイメージの沖縄を排除して、自分なりに見てきた基地の街や戦跡から描き出せる沖縄を表現したつもりです。
―歌詞では、嘉手苅林昌さんの「時代の流れ」から「唐の世から大和の世 大和の世からアメリカ世」の一節をサンプリングしています。
かつて沖縄フォーク村の佐渡山豊さんが「ドゥーチュイムニイ」でこの一節を用いたように、僕も僕なりの表現でこの名句を語り継ぎたいという気持ちがあります。今も世界ではいろんなことが起きていて、それを語る時、「賛成か反対か」「保守か革新か」というような二元論的な構図で語られてしまいます。しかし、現地にはそこに生きる人がいて、営みがあって、理由がある。想像力を放棄せずに、常に知る努力、感じ取る姿勢、思いやる生き方をしたいと考えています。
―前作は歌モノの親しみやすいバンドサウンドでしたが、今作は俳優然とした声でのラップが特徴的です。サウンド面での表現はどのあたりを意識しましたか?
コザをテーマにしているので、1970年代の紫やコンディショングリーンのイメージでロックをやりたいという思いがありました。それに、沖縄の音のアイコンとして自然に三線も加わりました。なおかつ、コザはヒップホップのカルチャーも強いので、自分の気持ちをより乗せられるポエトリーリーディングラップを選びました。これがコザらしいサウンドで、自分の中のチャンプルーロックだと感じています。ポエトリーリーディングはもともと好きで、発表こそしていないですがここ10年ぐらい作ってきていたんですよ。
―8歳まで住んでいたコザは、中山さんにとってどのような存在ですか?
戦後沖縄はコザなしには語れないと思っています。悲しい事件事故など今なお続く課題はありますが、同時に、コザだからこそ育まれてきた異文化への許容や、器の広さがあると思います。
アイデンティティーに向き合って
―2022年リリースの前作「オキナワ」でも、沖縄と平和をテーマに歌っていました。沖縄を軸にして歌い続ける理由は何ですか?
高尚なことではないんですけど、創作欲求と突き詰めれば突き詰めるほど、自分のルーツやアイデンティティーと向き合わないと、これ以上自分からは何も湧いてこないと感じ始めていました。それは上京してからしばらくしてからの心境の変化でした。当初は「沖縄を出たくて出た」という面があったのですが、時間がたつごとに沖縄に後ろ髪を引かれている気がしています。「自分の中で強く燃えているもの」として、沖縄と表現に向き合っていこうと決めました。
「自分にしか作れないものがある」とは思っていません。センスもスキルもあるわけではありません。ただ「自分が作って表現することに意味がある」と思って、その欲求にシンプルに従っています。
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