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[社説]大浦湾でくい打ち 首相は知事と協議せよ

沖縄タイムス+プラス / 2025年1月30日 4時0分

 国による「代執行」から1年余り。県と対話することもなく、ついに大浦湾にくいが打ち込まれた。

 名護市辺野古の新基地建設を巡り29日、沖縄防衛局は軟弱地盤改良に向け、海底に砂くいを打つ作業に着手した。

 巨大な作業船から、鋼管を打ち込む様子が確認された。

 地盤改良が必要な範囲は、大浦湾の埋め立て区域約111ヘクタールの半分以上に当たる66ヘクタール。使用されるくいは7万本以上という途方もない数だ。海面下最大70メートルまで打ち込んだ上で埋め立てるが、軟弱地盤の最深部は90メートルに達すると指摘されている。

 政府は70メートルより下は「非常に硬い粘土層」で、70メートルまで改良すれば建設は可能だと説明してきた。

 しかし「非常に硬い」との判断は最深部を調査した結果ではない。周囲のデータから類推したものである。

 玉城デニー知事が2021年11月、軟弱地盤改良のための防衛局の設計変更申請を不承認とした理由の一つが、最深部の調査がなされていないことだった。

 国内で前例のない工事だけに、調査で安全性を証明すべきだった。

 技術上の課題のほか、環境保護の面からも多くの懸念がある。

 ジュゴンはどこへ行ったのか。サンゴは本当に守られるのか。生物多様性豊かな海を埋め立てることによって、生態系への悪影響は避けられない。

■    ■

 石破茂首相は24日の施政方針演説で「大浦湾側の地盤改良工事に着手することで、普天間飛行場全面返還の実現に向けて大きく前進した」と述べた。

 工事完了は33年ごろ。米軍へ引き渡すまでさらに3年ほどかかる。

 普天間の危険性を「あと十数年我慢せよ」という政策を、「大きく前進」とアピールするのは無責任な言い方だ。

 工期だけでなく工費も大幅に膨らんでいる。民意をないがしろにし、巨額の税金を投入する計画が「唯一の選択肢」であるはずがない。

 きょう30日、政府、県、宜野湾市による普天間飛行場負担軽減推進会議の作業部会が開かれる。

 米国防長官でさえ「世界一危険」と認める飛行場である。

 普天間の危険性除去について、具体的な工程を示す必要がある。

■    ■

 石破氏が首相に就任して以降、玉城知事との対話の場は設けられていない。

 少数与党を率いる首相は、野党の主張にも耳を傾けた合意形成を強調する。

 ならば早期に知事と会い、普天間の一日も早い危険性除去と沖縄の負担軽減について、県民の納得と共感が得られるよう誠実に向き合うべきだ。

 国との対話を言い続ける玉城知事の側も、重要なのはその場で何を主張するかである。普天間の早期返還と跡利用に向けた枠組みづくりなど新たな提案と覚悟を持った対応が求められる。

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