[社説]高額療養費引き上げ 負担増 患者の声を聞け
沖縄タイムス+プラス / 2025年2月5日 4時0分
患者の医療費を一定額に抑える高額療養費制度について、政府が今年8月から自己負担額の上限を段階的に引き上げることを決めた。
高齢化などに伴い、医療費の総額は膨らみ続けている。患者に一定の負担増を求めるにしても、がんや難病などで治療を続けている人にとって高額療養費制度はセーフティーネットだ。慎重な対応を求めたい。
現在、手術や入院などで医療費が高くなった患者の自己負担額の上限は、年収に応じて70歳未満は5区分に分かれる。
今年8月には、住民税非課税を含む全5区分で上限額が引き上げられる。
その後は住民税非課税を除く4区分がそれぞれ三つに細分化され、2026年8月と27年8月にも区分ごとに上限が上がる。
平均的な年収の区分とされる「370万~770万円」の人は、現在は月額の負担上限が約8万円だが、細分化後の区分で例えば「650万~770万円」になれば約13万9千円に上がる。ひと月に6万円近い負担増を強いられることになる。
上限を超えた医療費は公的医療保険から賄われる。患者の負担を増やすと、現役世代が負担する保険料は1人当たり年間1100~5千円程度減るという。
一方、年々治療は高度化し、高額な薬を長期間、服用し続ける患者も増えている。高額療養費の上限が引き上げられれば、生活苦や受診の抑制、治療断念につながる恐れもある。
■ ■
患者や家族からは懸念の声が上がっている。
小学生と未就学の子どもがいるという30代の男性は「休職し今の上限額でもかなりきつい。治療を断念する可能性もある」と危機感を募らせる。
治療費が生活費に重くのしかかっている子育て世代をはじめ、幅広い年代から「重い病気の時に負担を大きくするのは残酷」「命を諦める患者が増える」などと、高額療養費の上限額の引き上げには反対の声が根強いという。
政府は上限額の引き上げに当たり、これまでがん患者などの当事者に意見を聞いていない。患者から見れば、政府のやり方はあまりにも一方的だ。
石破茂首相は1月31日の衆院予算委員会で、患者団体への意見聴取を検討する意向を明らかにしたが、遅きに失していると言わざるを得ない。
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高額療養費の支給総額は16年度に2兆5600億円だったが、21年度には2兆8500億円に伸びた。
高度な治療法の発達や高齢化の進展とともに、がんの免疫治療薬やアルツハイマー病の症状の進行を遅らせる新薬が保険適用になったことなどが背景にある。
患者や家族にとっては待望の治療や薬である一方、健全な医療保険財政とのバランスが課題となる。
政府は上限額の引き上げ幅を修正する調整に入った。当事者に真摯(しんし)に向き合い、全ての人の命が優先される持続的な医療保険の仕組みを目指すべきである。
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