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[社説]米大統領「ガザ所有」発言 国際法に違反する暴論

沖縄タイムス+プラス / 2025年2月7日 4時0分

 グリーンランドの購入やパナマ運河の返還を要求し、カナダは51番目の州にと公言するトランプ米大統領が、今度は突如「ガザを所有する」と言い放った。

 訪米中のネタニヤフ・イスラエル首相との会談後、記者会見で語った。

 ガザ危機から1年3カ月以上。荒廃した市街地が再び住めるようになるまでガザ住民を域外に再定住させるという。

 色めき立つ記者から、ガザ復興後に住民の帰還を想定しているかと問われると「世界中の人々が住むことになると思い描いている」と回答した。

 もはや常とう手段となっている「取引」かもしれないが、暴論が過ぎる。

 ガザ地区はイスラエルとパレスチナとの合意で自治区になった。米国が所有する法的な権限などあるわけもない。

 そもそもガザ住民は移住を望んでいない。強引に移住させればジュネーブ条約や国際人道法に違反する。

 米政府が今回の構想を事前にパレスチナ自治政府に打診した形跡もない。住民意思を置き去りにした一方的な表明であり、大国の大統領による発言とは思えないほどだ。

 中でも警戒すべきは、ガザ地区への米軍動員についてトランプ氏が「必要であれば派遣する」と述べたことだ。

 一時停戦がようやく実行に移され、停戦合意の第2段階に向けた交渉が始まったばかり。そうした中での暴言は交渉継続を阻害しかねない。

■    ■

 米国はイスラエルとパレスチナ国家が共存する1993年のオスロ合意を後押しし、2国家による解決を支持してきた。今回の発言はそうした長年の中東和平政策からも逸脱する。

 48年のイスラエル建国に伴う第1次中東戦争で約70万人のパレスチナ人が故郷を追われた「ナクバ(大惨事)」をも想起させる。

 ガザには当時難民となった人々が多く住んでいる。再び故郷を追われるような経験は許されない。

 各国からは次々と批判の声が上がっている。国連のグテレス事務総長も「あらゆる形の民族浄化を回避することが重要」と述べた。

 国内外からの反発に米政府は釈明に追われている。ルビオ米国務長官は「米国が再建に責任を持つという意志だ」と軌道修正。ホワイトハウスの報道官も「米軍を派遣するとは約束していない」とした。

 トランプ氏は発言を撤回すべきだ。

■    ■

 民族浄化との強い批判がある中で、岩屋毅外相は「推移を見極めた上で対応を検討したい」と述べるにとどめた。即座に反応した各国の対応との違いが目に付く。

 石破茂首相は日本時間の8日未明、就任後初となる日米首脳会談に臨む。

 そこで、日本の首相がいったいどういった対応をするのか。国際社会は注目しているはずだ。

 同盟国として独善的なトランプ発言に、毅然(きぜん)と不支持を表明すべきだ。

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