1stアルバム『A.R.B.』から紐解く、ARBの先見性とクオリティーの高さ

okmusic UP's / 2014年7月30日 18時0分

『A.R.B.』ジャケ写 (okmusic UP's)

1970年代後半では未だ珍しかった社会派メッセージを携えて、時代に喝を入れたARB。孤高のロックバンドとのイメージを抱く人も少なくないだろうが、その多彩でポップなサウンドは現代にも充分通用する親しみやすさを持っている。多くのフォロワーを生み出したことにも納得できる豊かな音楽性は、ロックファンなら触れておいて損はないだろう。

サザンオールスターズのデビュー、YMOの台頭、RCサクセションのブレイクと、1970年代後半から80年代初頭にかけての邦楽シーンは、その後のバンドブームにつながる礎を築いた時期だったと言える。上記のバンドの他、アナーキーやザ・スターリンといった和製パンクバンドも出現し、アルバム単位での作品制作やライヴコンサート中心の活動がバンドにとって常態化していった。そんな中にあって、このARBも後世に多大なる影響を与えたバンドのひとつであることは間違いない。

ALEXANDER’S RAGTIME BAND(アレキサンダー・ラグタイム・バンド)の頭文字を取ってARB。その全盛期を知る者にとってはストイックな社会派バンドというイメージが強いのではないかと思う。バンドスタイルがシーンに定着しつつあったと言っても歌詞に関してはまだまだ恋愛をモチーフにしたものが多かったあの頃、戦争や社会問題を歌うバンドなんてそうは居らず、石橋凌(Vo)の佇まいと相まって実に硬派に映った。ARBがまったくラブソングを歌わなかったバンドかというとそんなことはないし、実際にはラブソングも少なくなかったが、社会派の側面が目立ったことは確かだ。また、ディレクターからの「他のバンドのように洋楽をパクれ」という要求を拒否し続けたとか、アイドルバンドとして売り出そうとした所属事務所と袂を分かって独立したとか、それらの逸話もロックバンドとしてのARBの存在感を大きくした。独立後に発表したシングルが、《家も 町も 遠く離れて 一人道を走る ボクサーのように闇切り開け!》と歌われる、ARBを代表する名曲「魂こがして」というのは今もってシビれるエピソードだ。

1stアルバム『A.R.B.』からしてその片鱗は垣間見ることができた。《狭い箱に入れられ 鎖に つながれて 俺らと同じ月を見て 涙 流すのか》(M3「野良犬」)や、《人はみんなつくり噺に あいづちうって つくり笑い 今にきっと おちてゆくさ》《浮かない顔した男が 今日も仕事 終わらせて 下の通りを 過ぎてゆく いつも一人 一人で》(M7「夜街(よるのまち)」)といったシニカルな視点は見逃せないし、《おふくろが きらいになったんじゃない この家が いやになったんじゃない 今は ただ この灰色に褪せた 街を 出てゆきたいだけ》(M4「淋しい街から」)とイニシエーションをストレートに綴っているのも興味深い。これらはBOOWYや尾崎豊もモチーフとしていたが、本作の発表は彼らの出現よりやや早い。白眉はM9「喝!」だ。《TVに 洗脳された子供達は そうさまるで ロボットみたいに 機械的に 男を誘う街の女が 立ってるすぐ横を 学校終わって アスファルトの 学路を急ぐ》と強烈な社会風刺をぶつけ、《クールな時代の産物が まかり通る 大手を振って 路地の裏まで やってくる 人は 知らず 知らずのうちに 熱を吸い取られて 姿こそ 見えないけれど》と残酷な現実を直視しつつも、《今が 戦う時だぜ 風が 凍てつく前に 引き裂く前に 心が 凍てつく前に 色褪せぬまに 街が 凍てつく前に 引き裂く前に 地球が 凍てつく前に 色褪せぬまに ここで一発 喝!》と文字通り、時代に喝を入れている。デビュー作品でこういったことを歌うバンドは今もそれほど多くはない。後に発表される、連続幼女誘拐事件を予期していたかのような「MURDER GAME」(12thアルバム『SYMPATHY』に収録)等に連なるARBらしさの萌芽と言える。ちなみにこの《喝!》は張本勲氏より相当早い。

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