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Kitri、初となるカヴァーコンサートのオフィシャルレポートが到着

OKMusic / 2023年11月24日 18時0分

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(okmusic UP's)

ピアノ連弾を軸にしたクラシック由来の音作りと、ポップセンス溢れるメロディや歌を掛け合わせ、新しい音楽に挑み続けてきたKitri。彼女たちとしては初めてとなるカバー曲のみで構成された『Kitri 名曲カヴァーコンサート “Re:cover”』が11月10日、東京文化会館 小ホールで開催された。この日はKitriにとって2作目のカバーアルバム『Re:cover 2in1』のCDリリース日でもあり、同作から多くの楽曲が披露された公演となった。

昭和歌謡に的を絞ったカバーコンサートやカバーアルバムはよく見かけるが、Kitriの面白いところは、ジャンルも年代もバラバラな楽曲をセレクトしていること。それは、幅広い楽曲を独自解釈できるほどKitriの感性が豊かだからとも言えるし、時代が移ろっても変わらないポップスの真髄をKitriが大切に鳴らしてきたからでもある。カバー曲尽くしにもかかわらず、むしろKitriらしさが浮き彫りになるコンサートだったのもそのためだ。

また、自身のツアーシリーズ『キトリの音楽会』ではコンセプトごとに編成を変えてきたKitriだが、今回はMonaとHinaのベーシックな2人編成。いつものようにHinaがピアノ以外のさまざまな楽器(コンサーティーナ、カホン、鍵盤ハーモニカ、シンセサイザーなど)でアレンジを加えつつも、実験的な演奏よりは、あくまで楽曲の情緒を重んじた“歌”中心の構成になっていた。2人のハーモニーは間違いなくKitriの武器だが、ここまでその心地よさに浸り続けられるステージはむしろ新鮮だ。そして、東京文化会館という天井の高い神秘的な空間も相まって、一音一音がとても雄弁に楽曲のストーリーを表現していたように思う。Monaが約4年前にこの会場に足を運び、「いつか自分たちもここで演奏してみたい」と思ったことが決め手になったそうだが、相変わらずKitriは会場選びにも抜かりがない。

まず、コンサートの1曲目に選ばれたのは「異邦人」(久保田早紀)。拍手に迎えられたMonaとHinaがちょこんとピアノの前に座り、あのメランコリックなイントロを奏で始めると、会場は一気にレトロな雰囲気に包まれた。そこから「硝子の少年」(KinKi Kids)、「オトナブルー」(新しい学校のリーダーズ)と立て続けた冒頭3曲で、いきなり昭和・平成・令和の楽曲を網羅。それぞれの主人公の心情を、Monaのささやきとも張り上げとも違う絶妙な匙加減のボーカルで、繊細に表現していく。特に「オトナブルー」は意外な選曲だが、ダンサブルな中に散りばめられた歌謡曲のエッセンスが、Kitriの感性を刺激したのだろう。2人の掛け合いボーカルや、大人の恋に焦がれて逸る心を表現したようなピアノの疾走感が素晴らしい。

「そして僕は途方に暮れる」(大沢誉志幸)でしっとりとした空気を醸し出した後、「虹」(菅田将暉)でHinaがソロ歌唱した〈家族や友達のこと こんな僕のこと/いつも大事に笑うから 泣けてくるんだよ〉という歌詞は、本人が作詞しているのではないかと思うほどHina自身の内面とリンクして聴こえてきて、思わずハッとさせられた。

「『硝子の少年』に並ぶ名曲を」と思って、ラジオ番組のリクエスト投票に向けて選曲されたという「Make-up Shadow」(井上陽水)では、ストレンジポップなメロディに息遣いの伝わるハーモニーが見事に乗る。ファンからのリクエスト曲「ドラマティック・レイン」(稲垣潤一)では、Monaの跳ねるようなピアノに、Hinaが鍵盤ハーモニカで間奏にアレンジを加えたり、カホンでビートをつけるなど、Kitriらしく息の合った演奏を展開。語尾をスーッと伸ばすような2人の歌唱まで美しく決まった。

ここで、新たな試みとなるアニソンメドレーへ。しっとりと聴かせた「ムーンライト伝説」(DALI)、キュートな歌唱が会場を明るく照らした「はじめてのチュウ」(あんしんパパ)、盛り上がり必至のサビで会場を揺らした「ロマンティックあげるよ」(橋本潮)と、世代を問わず愛されてきたアニソンの名曲を見事な演奏で繋いでみせた。オリジナル曲が披露されないライブならではのハイライトと言えるし、感情が徐々にヒートアップしていくようなKitriの新しい魅力を堪能することができた。

そこから終盤に続く流れは本当に素晴らしかった。「二人セゾン」(欅坂46)、「水色」(UA)、「あじさい通り」(スピッツ)は、季節が巡る中で心に小さな光が差し込む瞬間を描いた楽曲たちであり、続く「嵐の素顔」(工藤静香)は泣きたいほどの失恋の情を嵐に見立てて、〈すべてを壊す〉ことで素顔を露わにしていく楽曲。時には自分の殻に閉じこもったり、かけがえのない大切なものに気づいたり、本音を吐き出したりするなど、細やかながらも見過ごせない感情を歌にしているのはKitriのオリジナル曲と同じだ。息継ぎさえ難関なメロディをMona一人で歌い上げた「二人セゾン」、ジブリ映画の主題歌のように繊細な情景を描き出し、シンセが水面のように揺らめいた「水色」、霧が晴れて木漏れ日が差すように静謐なピアノが響いた「あじさい通り」、心が掻き乱される様を表現した旋律に引き込まれる「嵐の素顔」……と、それぞれの楽曲で見せる表情も実に色鮮やかである。

そして、今回のライブで最も大切なクライマックスとなったのが、「深夜高速」(フラワーカンパニーズ)から「僕のこと」(Mrs. GREEN APPLE)への流れ。それはまるで〈生きててよかった そんな夜を探してる〉(「深夜高速」)と嘆く人生の路頭に迷った人間が、〈なんて素敵な日だ/幸せに悩める今日も/ボロボロになれている今日も〉(「僕のこと」)と、今この瞬間を肯定するまでのドキュメンタリーのようだ。さらに〈涙なんかじゃ終わらない 忘れられない出来事/ひとつ残らず持ってけ どこまでも持ってけよ〉(「深夜高速」)と〈努力も孤独も/報われないことがある/だけどね/それでもね/今日まで歩いてきた/日々を人は呼ぶ/それがね、軌跡だと〉(「僕のこと」)といった歌詞を聴くと、この2曲は本質的に同じことを歌っていたのだと気づく。自分の見てきた景色や歩んできた道のりが人生の色合いを決めるし、それは誇るべきオリジナルなものだということ。周囲と比べると自分の価値のなさに絶望するけど、それでも……と聴き手の心を奮い立たせてきたのがポップソングであるならば、Kitriもそんな歌詞に共振しているのだろう。以前、Monaは「どうフラットに自分を保とうみたいな葛藤がある」「音楽の中で自分を表現することが生きる道に繋がっている」と語ってくれたことがあったが(※1)、「深夜高速」と「僕のこと」のカバーを聴けば、Kitriがなぜピアノインストではなく、言葉で内面を表現する音楽に挑戦しているのかがよくわかるはずだ。

本編は、谷川俊太郎の言葉を坂本龍一のメロディが彩る「TAKESHIの、たかをくくろうか」(ビートたけし)という、これまた意外な選曲で締め括られた。シニカルな観察眼の先に希望に似たエッセンスが入っている点では、Kitriのオリジナル曲にも通ずると言えるだろう。アンコールでは、静やかでノスタルジックなアレンジが、燃えるような情熱を際立たせた「アン・ドゥ・トロワ」(キャンディーズ)を経て、ラストは童謡「この道」をカバー。故郷への帰路につくように、初のカバーコンサートは穏やかに終幕した。

中盤のMCで、「Kitriのカバー曲にはなぜか雨の曲が多い」とMonaが語っていたが、確かにその通りだと思った。それは、少年少女の移ろいゆく内面性、正解・不正解のないグレーな出来事、誰かと繋がりたいと願う孤独な心情……など、Kitri自身が曇った心模様に寄り添う音楽を鳴らしてきたからではないだろうか。年代という観点で見れば楽曲の幅は広いが、こうしてコンサートで聴いてみると、内省や苦悩を掬い取り、それを叙情的なメロディに乗せて昇華した楽曲が多いことが改めてよくわかった。全曲カバーという斬新な試みを通して、自身と通じ合う曲を歌ってみることで、2人も“歌う理由”を見つめ直せたのではないだろうか。Kitriのポップソングの核心と新たな可能性が詰まった特別なコンサートを目撃できたことを嬉しく思う。

photo by Susumu Miyawaki
text by 信太卓実(Real Sound)

【セットリスト】
01.「異邦人」(久保田早紀)
02.「硝子の少年」(KinKi Kids)
03.「オトナブルー」(新しい学校のリーダーズ)
04.「そして僕は途方に暮れる」(大沢誉志幸)
05.「虹」(菅田将暉)
06.「Make-up Shadow」(井上陽水)
07.「ドラマティック・レイン」(稲垣潤一)
08. アニソンメドレー(「ムーンライト伝説」~「はじめてのチュウ」~「ロマンティックあげるよ」
09.「二人セゾン」(欅坂46)
10.「水色」(UA)
11.「あじさい通り」(スピッツ)
12.「嵐の素顔」 (工藤静香)
13.「深夜高速」(フラワーカンパニーズ)
14.「僕のこと」(Mrs. GREEN APPLE)
15.「TAKESHIの、たかをくくろうか」(ビートたけし)
16.「アン・ドゥ・トロワ」(キャンディーズ)
17.「この道」(唱歌)

アルバム『Re:cover 2in1』

発売中



【配信】
https://kitri.lnk.to/recover2in1
【CD】
CEG-63/¥3300(税込)
※ライブ会場、コロムビアミュージックショップ限定販売
<収録曲>
1.「そして僕は途方に暮れる」(大沢誉志幸)
2.「BABY BABY」(銀杏BOYZ)
3.「僕のこと」(Mrs. GREEN APPLE)
4.「虹」(菅田将暉)
5.「あじさい通り」(スピッツ)
6.「水色」(UA)
7.「オトナブルー」(新しい学校のリーダーズ)
8.「嵐の素顔」(工藤静香) 
9.「アン・ドゥ・トロワ」(キャンディーズ)
10.「Make-up Shadow」(井上陽水)
11.「異邦人」(久保田早紀)
12.「シーラカンスと僕」(サカナクション)
13.「深夜高速」(フラワーカンパニーズ)
14.「パルテノン銀座通り」(たま)
15.「TAKESHIの、たかをくくろうか」(ビートたけし)

◎ コロムビアミュージックショップURL
https://shop.columbia.jp/shop/g/gS5157/




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