広がる“犬の介護”問題、専門誌語る「シニア犬との愛ある生活」

ORICON NEWS / 2019年8月24日 9時30分

『ぐらんわん!』最新号、表紙を飾るのは読者のシニア犬たち

 いつの時代も人間を癒してくれるペット。特に昔から人間と暮らしてきた犬は変わらず人気のペットだ。SNSでは人気ユーザーなどによる幸せな投稿で日々盛り上がっているが、近年は人と犬の距離が近づいたからこそ「介護」の問題も。シニア犬とは一般的に6~7歳から呼ばれ、日本の飼い犬たちの半数を占める。そんなシニア犬情報を専門としたフリーペーパー『ぐらんわん!』の編集長・中村真弓さんに、「シニア犬介護」の意識変化や、シニア犬の魅力などを聞いた。

【写真】犬ってこんなに笑うの? ニコニコ笑顔で表紙を飾るシニア犬たちズラリ

■創刊当時は「商品にシニアのイメージつけたくない」とメーカーに広告を断られ…

――『ぐらんわん!』を創刊されるまではどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

【中村真弓】本業はグラフィックデザイナーです。15年前に会社を辞めて自分でデザイン会社を立ち上げました。その時に、せっかく独立したんだったら好きなことを、と思い、野球も好きなので、最初は野球と犬のフリーマガジンを作っていました。

――そこから『ぐらんわん!』の創刊に至るきっかけは?

【中村真弓】学生時代に飼い始めたシーズーの子が実家にいたのですが、自分の事務所を構えた時にずっと一緒にいられるからと14歳だった子を東京に呼び寄せました。そうしたら生活面において沢山の不具合が出てきて。シニアだからということで色んなことを断られるんです。シャンプーやトリミングも断られたり、ペットホテルにも預けられなかったり。動物病院も「こんなシニアの子いきなりは見られないから、今まで行ってた病院に戻ったらどうですか」なんて言われて。

――中村さんご自身がシニア犬と暮らすときに不便なことがあったんですね。

【中村真弓】はい。調べても全然情報が出てこなくて。結局、個人の飼い主さんのブログに行き着きました。今でこそシニア犬に関しても情報過多な世の中ですが、当時はみんな困っていて、互いに情報交換しながら助け合っていたんです。犬の雑誌も子犬や、若いわんちゃんとの遊び方が多くて、老犬のページっていうのは1冊の本の中で2ページくらい。じゃあ自分がやろうかなと思ったのが、『ぐらんわん!』を立ち上げたきっかけですね。

――創刊は2008年。当時と比べて、今のシニア犬を取り巻く環境はいかがでしょうか?

【中村真弓】すごく変わりましたね。フリーペーパーなので、主に広告で運営をしているのですが、立ち上げの時はメーカーさんに「うちの商品にシニアのイメージつけたくないんだよね」と断られることもあったんです。ところが、創刊から5年くらい経つと、ちょっとずつ変わってきて。最初に変わったのはフードメーカーさんでした。だんだん犬の半数以上がシニアだということが認知され始め、一斉に細かくライフステージを分けて商品を出すようになったんです。そこから急速に色んなメーカーさんがシニア犬に注目して、異業種の参入が増えたという感じですね。

――異業種の参入というと?

【中村真弓】例えば学生服のトンボさんが歴史ある製法技術と生地で、老犬用のハーネスを作ったんです。後ろ足が弱くなった子用になど、トンボさんの技術で作ってくれるので、やはり評判が良くて。今のシニア市場が盛り上がったのは、異業種の参入が増えてきたおかげですね。今までは本当に、暗い老犬生活っていう表現が多かったんです。本とかも、とても痛々しい写真をいっぱい載せて、飼い主が希望を持てない内容が多かった。でもそうじゃなくて明るい未来があるよっていうのが、近年はかなり認知されていると思います。

■「介護ではなく介助を」 今日できたことを、明日も自分でできるよう手助けする

――『ぐらんわん!』内では“犬の介護ゼロプロジェクト”という言葉も出てきていました。改めてどんなプロジェクトなんでしょうか?

【中村真弓】犬も年を取ったら介護が絶対必要なんだ、と世の中で認知されてしまっていますが、そうじゃなくて「介護しなくてもいい状態にしてあげるっていうのが本来の務めなんじゃないか」という所から生まれたのが“犬の介護ゼロプロジェクト”です。介護を上手にできるようにするより、介護しなくていい育て方、暮らし方をしていきましょう、というプロジェクトです。

――介護ではなく、介助ということでしょうか?

【中村真弓】そうです。介助はするけれど、できるだけ老犬扱いせずに、介護ゼロである状態を作っていきましょう、と。そして、介助しながらワンちゃん自身の力を生かしてあげる。例えば首が曲がらなくても、水を飲ませてあげるのではなく台を高くしてあげて自分の力で飲む行為を続けさせてあげる。足腰が弱ってきてちょっとフラフラしても、それに付き合ってお散歩ゆっくりしてあげるとか。

――人間の介護でもできることを続けるのは大切だと聞きます。

【中村真弓】そうですね。私自身、人間のホームヘルパーの資格も持っていますが、人間のサポートも犬のサポートもマインド的にはあまり変わりがないように思います。今日ワンちゃんができたことを、明日もワンちゃん自身でできるようにしてあげる。それが”介護ゼロプロジェクト”です。

――飼い主さんの意識を変えていくことが大事だと。

【中村真弓】はい。「介護をしない、助けない」ということでは無く、飼い主さんの意識の違いですよね。また、飼い主さんの中には添い遂げていく中で少しずつ気持ちの整理ができて、お別れの覚悟と準備ができるという方が多くいます。あとは19歳や20歳くらいのワンちゃんを失くした方もやり切った感があって、ペットロスになりにくいみたいなんです。そういった意味でも介護ゼロで、ワンちゃんの生きる力を最後まで支えてあげるっていうのはペットロス予防としても必要だと思っています。

■シニア犬は少しずつできないことも増えていくけれど、それも含めて愛おしい

――ペットを飼うということについて、社会や飼い主の意識などがどのようになるのが理想でしょうか。

【中村真弓】犬はもう人間と共生していくには、人の手を借りないと暮らしていけないですし、犬を飼うということは、社会的な責任も果たしていかなきゃいけない。なので、飼い始めはそれなりの覚悟と、10年後、15年後に自分がどうなっているかをまず考えてから飼い始めてほしいですね。私はもう犬がいない生活は考えられないんですし、飼ったことのある人はわかると思うんですけど、犬を飼うって本当に素晴らしいことだと思うので。

――シニア犬の良さや魅力がこれからもどんどん広がっていって欲しいですね。

【中村真弓】はい。そして人間のシニアの人にこそ、ぜひシニア犬の保護犬を迎えてほしいんです。例えば、65歳の方が子犬を飼うと、人間もたくさんのエネルギーが必要です。だとしたら10歳くらいの落ち着いたシニア犬を飼うことで生活スタイルが意外と一致しているものなんですよ。うちの常連読者さんたちは、みんな自分の子が亡くなったら子犬を飼わずにシニアの保護犬を迎えることが多いんです。1つは『ぐらんわん!』に載りたいって理由もあるらしいのですが(笑)。もう1つは、自分の子を最後まで看取り切った自信があるから。シニアの良さを知ってしまった人たちは、シニアを飼いたくなるみたいなんです。少しずつできないことも増えていくけれど、それも含めて愛おしい、と(笑)。

――シニア犬と向き合うことで豊かに生きられそうですね。

【中村真弓】そうですね。命が短くなっていくにつれて、この子と過ごす時間が1日、1日削られていくんだって言う意識があると、今日を大事にする。1日が愛おしくなる。それがシニアの良さなのかなぁって思いますね。やっぱり、命に向き合うってすごく大事なことですから。

――では最後に。今後の夢や、すでに実現に向けて動いていることはありますか?

【中村真弓】目標は一都道府県に1店、今回のようなお店を作ること。そして、「シニア犬ってこんなに可愛いよ、楽しいよ」というのどんどん浸透させていきたいですね。最後を看取るまで犬を飼うのはとても大変なことなんですけど、そこまで責任を持てるように、「一緒に頑張れたね、ありがとう」っていう飼い方をしていけるように、サポートができたらといいなと思います。

(インタビュー・文/岩崎香織)

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