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日本独自の成長を遂げた“紅茶市場” 40周年『リプトン』がもたらした「気軽に屋外で紅茶を飲む」という革命

ORICON NEWS / 2024年5月31日 8時50分

発売40周年となった『リプトン』チルド紙パックのレモンティーとミルクティー  撮影/岡田一也(C)oricon ME inc.

 1984年に発売され、今年40周年を迎えた『リプトン』チルド紙パックのレモンティーとミルクティー。それまで紅茶といえば、英国式の紅茶イメージが大半を占めていた国内では、茶葉から淹れて飲むのが一般的だった。「気軽に屋外で紅茶を飲む」という新たなTPOとして風穴を開けたのが、同社が提供した紙パックによる“チルド紅茶”だった。その後の『午後の紅茶』をはじめとしたペットボトル紅茶飲料と一緒に紅茶市場を盛り上げた同商品は、いかにして国内の紅茶市場にニュースタンダードをもたらしたのか? 同商品を製造・販売する森永乳業の担当者に聞いた。

【貴重写真】パッケージに人が…!『リプトン ミルクティー』1984年発売当初のパッケージ



■コンビニの台頭により売上も伸長、「青春の味」として中高校生の定番アイテムにも

 1980年代初頭、缶入りの烏龍茶や緑茶が各メーカーから発売され、お茶が茶葉からRTD(Ready to drink/開けてすぐ飲める飲料)へと変わる転換期を迎えていた。そんな最中の1984年、リプトンは「紙パックシリーズ」の定番商品として『リプトン レモンティー』を発売。紅茶カテゴリーでは、これがRTD商品のパイオニアとなった。

「当時、紅茶と言えば、茶葉から入れて飲むのが定番のイメージでした。その紅茶をいつでも気軽に楽しんでいただきたい、紅茶の飲料文化を広げたいとの思いから、RTDを発売しました」(森永乳業 マーケティング統括部 濱口雅史さん/以下同)

 発売当初、紙パックは200mlのサイズだったが、その後、1985年に『レモンティー』の大容量(約1000ml)、1988年に中容量(約500ml)が登場。そして1989年より『ミルクティー』の1000ml、500mlもラインナップに加わった。だが、「発売当初からすごく売れていたわけではなく、少し紆余曲折があった」そうで、ラインナップを広げていく中で、少しずつリニューアルを行ってきた。「当初は紅茶党や果汁飲料に飽き足らない主婦層をターゲットにしていましたが、1988年のリニューアルのタイミングで、より若者層にターゲットを広げて『自分の時間をカラフルに彩るための商品』という打ち出し方をしました」

 たとえば、後発ながらも大ヒットを記録した『午後の紅茶』では、アフタヌーンティーを広めたとされるアンナ・マリア公爵夫人が商品パッケージに描かれ、格式の高さが表現されている。対してリプトンチルド紙パックは「紅茶をもっと気軽に手軽に楽しめるように」との思いから、今にも飲みたくなるような”シズル感”や”みずみずしさ”を重視。風味の本格感を強調しながらも、紅茶飲用に馴染みの薄い人でも「おいしそう」と感じられるようなデザインに変更した。その後、若年層への広がりとともに、レモンティー(黄)、ミルクティー(青)など、若年層が手に取りたくなるようなカラフルな色使い、季節に合わせたイラストのデザイン、コラボ限定デザインなども発売された。さらに1980年代から2000年代にかけてコンビニエンスストアの店舗数が急激に拡大したことも、チルド紅茶にとっては追い風となったようだ。

 2000年代に入ると、マスカット、ライチ、オレンジ、ストロベリーなど彩り鮮やかなシリーズも続々登場。いまやすっかり定番となった多様な“フレーバーティー”にも先んじて取り組んできた。こうした展開は「リプトン」チルド紙パックが若年層にターゲティングを行い、”高校生の定番アイテム”と言われる所以でもある。

「高校生に受けた理由としては、当時500mlという比較的大容量で100円とコスパも良く、手に取りやすかったこと。教室の机に置きやすい形状だったこと。また飲み口を開いてストローを差したあと、飲み口を閉じてストローを固定させるという飲み方も当時新しかった。あれは弊社から訴求したのではなく、自然発生的に広がったと思います。さらに味の支持も大きいです。あの特有の甘さのある味わいは唯一無二で、『この味じゃないとダメ』というお声をいただきます」

 2001年には、シールを集めて応募すると携帯電話のストラップが当たるキャンペーンも行われ、これが当時の高校生に受けて大ヒットした。そうしたキャンペーンも含めて、「リプトン ミルクティー」をはじめとした紙パック紅茶シリーズは高校生との親和性が極めて高い商品だったと言える。

「今も『高校生の頃から飲んでいます』『青春の思い出です』といったお声をたくさんいただきます。私も世代だったのですが、当時クラスほとんどがリプトンを飲んでいる光景が本当にあったので…たくさんの方々に商品を愛していただいていた。毎朝買ってから学校に行く、授業中でも机の角っこに必ず置いてある、放課後に皆で話している時に飲むなど、皆様の思い出のシーンの中に入り込んでいるというのは、商品として非常に幸せなことだと思います」

■大幅リニューアルを敢行も、たった1年で元の味に戻すことに…「でも、それは”失敗”ではなかった」

 こうして順調に推移していた『リプトン ミルクティー』に大きな転機が訪れる。それは2020年、『リプトン ロイヤルミルクティー』へのリニューアルだった。

「『リプトン ミルクティー』は2008年を売上のピークとして、それ以降、牛乳を除く紙パック飲料市場の縮小とともに減少してきました。学生数の減少や、タピオカブームで様々な競合品が出たこともありますが、一番大きかったのは2020年からのコロナ禍です。人々の通学・通勤の機会が減り、コンビニで買われる数が一気に減りました。今後もお客さまに選ばれ続けるためには、ここで期待感を高めるリニューアルが必要だと考えたのです」

 この時、乳固形分を1.5倍以上にして、紅茶飲料から乳飲料へと変更。茶葉も5%増やして、より本格的な美味しさが感じられるようにリニューアルを行った。この『ロイヤルミルクティー』は発売前の消費者調査でも良い評価を得て、発売後の初速も好調だった。ところが、しばらくして「元の味に戻してほしい」との声が寄せられるように…。

「『従来品に戻してほしい』とのお声が667件もあり、これは当社最多の問い合わせ数でした。多い日には1日40件もいただくこともあり、これは尋常ではないと感じました。我々スタッフは1通1通目を通しましたが、『高校生の時からずっと飲んでいました』『今までのミルクティーがなくなって、身近な相棒がいなくなったような気持ちになりました』など、皆様の強い気持ち、思い、熱量を感じて、まるでラブレターのようだと社内で話していました」

 こうした反響を受けて、「何とかしないといけない」と社内で対策を検討。その結果、発売1年足らずで元の味に戻すという、業界でも異例の対応を英断した。

「まず『リプトン ミルクティー』に戻すのか、『ロイヤルミルクティー』をさらにリニューアルするのか、全然別の新商品を出すのか、など様々な選択肢がありました。『発売1年で元に戻すのは時期尚早』という慎重な意見もあり、何が最善なのかという議論がたくさん行われました。結局、お客さまが一番望まれていることは何かと考えた時、”『リプトン ミルクティー』を復活させること”が最善と判断しました。お客様のお声に真摯に耳を傾けて寄り添っていくことは非常に大事だと分かり、大きな学びになりました。

 元に戻したこと自体を”失敗”とはとらえていません。ただ、ミルクティーを終売して『ロイヤルミルクティー』を出す前に、もう少しお客様の声に真摯に耳を傾ける必要があったのだと。そこは反省点としてあります。やはり40年も愛されているロングセラー商品だからこそ、味というのはすごく慎重に決める必要があると思っています」

■苦悩したからこそ見えた愛飲者との絆「これこそがリプトンブランドの資産」

 『ロイヤルミルクティー』を終売し、2023年に『リプトン ミルクティー』を“旧”発売した。すると「元の味に戻ってうれしい」と喜ぶユーザーが続出。その反響は258件(※取材時点)に上り、「これも異例のこと」と同社スタッフ。この258件の”声”はトータルで65000字にも及んだ。

「学生時代の思い出を書いてくださる方もいらっしゃって、読むだけでこみ上げてくるものがありました。それほど気持ちの込められたお声をくださる商品というのは、なかなかないと思います。こんなにも多くの方に支えられているんだ、こんなにもファンとの絆が深い商品なんだと改めて痛感しました」

 こうしたファンとの絆、つながりが「リプトンブランドの資産」だと胸を張る濱口さん。この”資産”を大切にして、今後も商品展開を進めていきたいと抱負を述べる。

「今回のリニューアルと旧発売でお騒がせしましたが、これを一つの学び、糧として今後もお客様に愛していただけるよう努めます。引き続き、皆様と一緒に歩んでいける関係を続けていきたいと思います」

 現在、チルド紅茶の発売40周年を記念して『リプトン エモミルクティー~ミルクセーキ味』も期間限定で発表。パッケージの表裏には男女のレトロなイラストが描かれ、「あの子が好きだった思い出の味」というコピーは、淡い恋の想い出やノスタルジックな雰囲気を想起させる。リプトンを「青春の味」と位置付ける世代にとっては、“あの頃”に思いを馳せる極上のツールとなるだろう。

取材・文/水野幸則 撮影/岡田一也

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