永瀬正敏主演・石井岳龍監督『箱男』頓挫もあきらめず、8月23日公開決定 予告編解禁
ORICON NEWS / 2024年6月6日 9時3分
石井岳龍監督が27年前に頓挫してもあきらめず、映画化を実現させた『箱男』の公開日が8月23日決定。予告編が解禁となった。原作は安部公房(1924-93年)の同名小説。段ボール箱を頭からすっぽりかぶり、のぞき窓から世界を見つめる箱男という存在を通して、人間と現代社会のありようを照らし出す作品。主演は27年前と同じ永瀬正敏、永瀬と共に出演予定だった佐藤浩市、さらに、世界的に活躍する浅野忠信、数百人のオーディションから抜てきされた白本彩奈らが出演している。
【動画】映画『箱男』予告編
『砂の女』『壁』など、その著作が海外でも翻訳され、今なお世界中に熱狂的な読者を持つ安部公房。生前はノーベル文学賞に最も近いとされ、日本が世界に誇る小説家の一人だ。『箱男』は、その安部公房が1973年に発表した小説であり、代表作の一つ。
その幻惑的な手法と難解な内容のため、映像化が困難と言われていた。幾度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督が映像化を熱望し、原作権の取得を試みたが、安部公房サイドから許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えるなどを繰り返していた。
そんな中、最終的に安部公房本人から直接映画化を託されたのは、『狂い咲きサンダーロード』(1980年)で衝撃的なデビューを飾った石井監督(当時:石井聰亙)だった。安部からの「娯楽にしてくれ」という要望のもと、1997年に製作が決定。石井は万全の準備を期し、ドイツ・ハンブルグで撮影を行うべく現地へ。ところが不運にもクランク・イン前日に、撮影が突如頓挫、撮影クルーやキャストは失意のまま帰国することとなり、幻の企画となった。
あれから27年。奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年、映画化をあきらめなかった石井監督は映画『箱男』の劇場公開にこぎつけた。今年2月に開催された「第74回ベルリン国際映画祭」にてワールド・プレミアが行われ、27年越しに完成された映画がお披露目となった。因縁の地・ドイツに永瀬、浅野、佐藤、石井岳龍監督がそろい、レッドカーペットや公式上映に登壇したことも記憶に新しい。ベルリン映画祭ディレクターからは「今年一番クレイジーな映画」と称された。
解禁された予告編では、一部ではあるが、箱男が一体どのようなキャラクターなのか垣間見ることができる。永瀬演じる「わたし」が箱という鎧をまとい、完全な孤立、完全な匿名性を手に入れて一方的に世界を覗き見、「箱男」になったと豪語する。
だがそこへ箱男という存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)や軍医(佐藤浩市)、そして謎の女(白本彩奈)までもが現れ、箱男を消し去ろうとし、「本物」をめぐる戦いが始まる。
箱男VSニセ箱男、この光景を見ることができるのは、安部公房自身が望んでいた、「箱男」をエンターテインメントとして昇華させた石井監督ならではの演出の賜物だ。
箱男はヒーローかアンチヒーローか。小さな箱の中で王国を作り、守られた状態で世界を一方的に覗く姿は、不確実性の中で揺らぎながら、小さな端末(スマホ)を手に持ち、匿名の存在としてSNSで一方的に他者を眼差し、時に攻撃さえもする現代の私たちと「無関係」と言えるだろうか…。そして最も驚くのは、著書が発表された50年前に安部公房は現代社会を予見し、描いていたということだ。
本作は、7月10日(現地時間)より米ニューヨークで開催される北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ」への出品が決定。さらに今回は映画祭側の強い希望により、石井監督作品『水の中の八月』(1995年)も特別に上映されることが決まり、石井監督は『箱男』『水の中の八月』の両上映日に登壇予定。
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