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「退職代行サービス」できることは“伝言”だけ? トラブル続出の退職時、弁護士が警鐘を鳴らす意外な盲点

ORICON NEWS / 2024年6月17日 11時30分

退職代行サービス、どこまでOK?

 近年、ニュースなどでも一躍話題になっている「退職代行サービス」。4月の新卒入社時には、「聞いていた給与と違う」「望んでいた配属先ではない」などの理由で利用者が激増し、GW明けにも増加。SNS上では「日本の会社のブラック事情に光があたった」「最近の若者は…」と賛否両論に。一方で、脚光を浴びる退職代行についても、「このサービスは法律的に問題はないのか」との疑問も上がっている。専門家である弁護士はこれをどう見ているのか。アディーレ法律事務所・島田さくら弁護士に聞いた。

【お役立ち一覧】退職代行は3パターン、「最後の給料は払えない」と言われたらどこへ相談する⁉

■民間の「退職代行サービス」ができることは「単なる『伝言』」、もしも『交渉』してしまったら…



 一般的に「退職代行サービス」は、退職を望む本人に代わって勤務先に退職の意思を伝えることを指す。原則としては、退職する2週間前に会社へ退職の旨を伝える必要があり、その代行を行う。また、弁護士や労働組合が対応する場合、即日退職や有休消化後の退職などを求めて交渉することも可能である。

――そんな「退職代行サービス」なのですが、民間の業者も数多くあるようです。弁護士から見て合法なのでしょうか?

 「端的に言うと、単なる『伝言』のみであれば、民間業者が行っても違法ではありません。本人が辞めることを決めていて、退職の意思を伝えるだけという場合、あるいは『退職に関する書類をください』『置いてある私物を送ってください』と、先方に伝えるだけであれば問題はありません。一方で、会社側が拒否した場合やもめてしまった場合、これを解決するための『交渉』をすることはできません。弁護士資格を持たない人が、弁護士業務を行って報酬を得る行為は、『非弁行為』として弁護士法第72条により禁止されており、違法となるわけです。非弁行為については、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が定められています」

――退職代行サービスの利用者は、そこまで考えずに依頼してしまう人も多いと思います。もし、利用した民間業者が非弁行為を行っていた場合、利用者が罰を受けることは?

 「それはないと思いますので、安心してください」

――退職代行を依頼する場合、いくつかの依頼先があると聞きました。それぞれができることを教えてください。

【民間の退職代行サービスの場合】
 「基本は、退職の意思や退職まわりの手続きについての意向を『伝える』だけです。会社側がこれに応じて、スムーズに手続きをしてくれれば、退職が実現できることになります。ただ、退職日について話がまとまらないとか、有給消化を認めてくれないなど、話が難航して民間業者が『交渉』を始めてしまうと、それは非弁行為になります。また、退職の意思を電話で伝えようとした際に、『本人でも弁護士でもない人間の話は聞かない』『本当に本人の意向かわからない』と電話を切られてしまい、そもそも退職の意思表示自体できていないということも。逆に、『拒否されてしまったので、これ以上の対応はできません』と言ってくる業者は、法的にクリーンな業者と言えるでしょう」

【弁護士の場合】
 「弁護士であることを示して、電話や書面で、退職の意思表示や交渉を行います。『本当に本人の意向かわからない』と言われた場合、本人からの委任状を示すこともできます。有給消化や即日退職についても、法律や社会保険料等の負担を踏まえて、会社を説得していくことが可能です。また、『急に辞めるなら最後の給料は払えない』『こちらも困るから損害賠償請求する』と、退職以外の部分が問題化することもあります。ほかにも、何らかのハラスメントや長時間残業が退職原因の場合の対処など、様々な問題をはらむのが退職時。弁護士はこのような法律業務に関してすべて対応できます」

【労働組合の場合】
 「労働組合には、労働問題に関する団体交渉権が認められています。そのため、民間業者と違い、有給消化や退職日などについて交渉をすることもできます。ただ、組合や担当者によっては、法的な知識の面や交渉のつめ方の面が不十分な場合があり、実際、会社側が退職届を受理しないなどと強弁した際に話を進めることができず、あらためて弁護士に相談に来た方もいます。適法であっても、弁護士と同等の対応ができるとは言い難い面があるということです」

――こう聞くと最初から弁護士に依頼するのがいいように見えますが、これほど民間の「退職代行サービス」が増加したのはなぜでしょう?

 「第一に考えられるのは、2~3万円で引き受けてもらえるなど、費用が比較的安いからでしょう。また、従来の終身雇用、年功序列型の賃金制度というのは崩壊しつつありますし、転職してキャリアアップするという考えも一般化してきているので、退職自体がそれほど重大な意味を持たなくなっているというのもあると思います。

 退職代行サービスを利用する方の状況はそれぞれです。何度も退職したいと伝えているのに辞めさせてもらえない方、介護、看護、保育など人手不足の業界で『残った人や利用者に迷惑をかけられない』との責任感から退職を切り出せない方、退職自体はできそうだけれど、誰かが間に入ってくれるならその方がよいと考える方。自分から言えないだけであれば、こうしたサービスを使うのも良いと思います」

――ただ、切羽詰まるまで追い込まれているとなると、会社側にも問題があり、そう簡単にはいかないように思えますね。

 「『退職は認めない』『シフトを組んでしまったので、すぐに辞められては困る』『資格者がいないと営業できない』『辞めたいなら代わりの人員を探して来るように』『引継ぎのためにあと2ヵ月は出勤してもらう』『昔起こした事故の修理代を払い終わるまで辞めさせない』など、退職自体を拒否されることもありますし、『退職で迷惑を被るから有給は使わせない』『退職関係書類は出さない』『最後の給料だけ手渡しにする』など、退職以外の問題が絡んでくる状況もあります。ですから、本当に全部まとめて交渉してほしいならば弁護士一択となります」

――ちなみに、弁護士事務所に退職の相談に来る人はどのような方ですか?

 「様々ですが、新卒の方の場合は親御さんが同席することもあります。また、『入社〇年以内に辞めるなら損害賠償を請求する』と会社に言われ、辞められない方も法律事務所を訪れます。ただ、本当に賠償しなければならないかといえば、そんなことはありません。弁護士が間に入った途端、損害賠償の話をしてこなくなったり、当初は会社側が息巻いていても、法的な説明をした上で『一度、御社も弁護士に相談したらどうですか?』と対応すると、大半がその話は二度としてこなくなります」

――そうした会社との間の交渉も民間業者ではできず、弁護士または労組となるわけですね。

 「民間業者の問題点については、先に述べたとおりですが、辞められないまま過労で心身を病んでしまい、次に働くことができなくなってしまったという方も多く見てきているので、個人的には、ここはまずいなと思ったら、民間業者を使ってでも早急に辞めるためのアクションをすべきだと考えます。ですが、トラブルが起こったとき、まともな業者であるほどそれ以上の対応ができないのはたしか。費用の安さから民間業者を使っても、結局は弁護士に相談する方もいるのです。そうなると、手間も費用も増えてしまうので、ご自身と会社の状況を考えて、できれば最初から弁護士に相談するのが良いと思います」

【監修】
島田さくら
弁護士、アディーレ法律事務所所属。 『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)、『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)など、メディア出演多数。

(文:衣輪晋一)

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