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HiHi Jets猪狩蒼弥、映画初出演で「なんで僕?」から芝居の楽しさをつかむまで【インタビュー】

ORICON NEWS / 2024年6月30日 7時0分

映画『先生の白い嘘』に出演する猪狩蒼弥(HiHi Jets) 撮影:山崎美津留(※崎=はしごだか)(C)ORICON NewS inc.

 俳優の奈緒が主演する映画『先生の白い嘘』が7月5日に公開される。今作で映画初単独出演ながら、物語の重要な役柄に抜てきされたのが猪狩蒼弥(HiHi Jets)だ。撮影当時は演技経験もほぼないなかで、模索し続けた猪狩が、合同取材で、「なんで僕?」と不安も抱えながらつかんだもの、今後の俳優としての展望を彼らしい芯のある言葉で語ってくれた。

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 今作は2013年から17年まで「月刊モーニング・ツー」(講談社)で連載された、鳥飼茜氏の同名漫画(全8巻)を実写化。ひとりの女性が抱える「自らの性に対する矛盾した感情」や、男女間に存在する「性の格差」に向き合う姿を描くことで、人の根底にある醜さと美しさを映し出したヒューマンドラマ。男女の性差に翻弄(ほんろう)され葛藤する主人公の高校教師・原美鈴を奈緒が演じている。



 猪狩演じる美鈴の担任するクラスの生徒・新妻祐希(にいづま・ゆうき)は、ある日クラス内で人妻と不倫関係にあるとうわさされてしまう。担任の美鈴は、新妻を呼び出して事情を聞こうとするが、新妻はある衝撃的な性の悩みを打ち明ける。深いトラウマを抱えた高校生を猪狩が繊細に演じ、鮮烈な印象を残している。

■日常の会話から役柄を取り入れる “演じる”のではなく「新妻くんにならなきゃいけない」

――今回出演が決まった時の心境、企画や台本を読んだ時の印象を教えてください。

撮影は結構前だったので、その当時は今ほど忙しくなく、映画出演できると聞いて、まずうれしかったです。先に映画の仕事だと聞いて『やった、映画!』だと思ったのは覚えていますね。その後に詳しく話を聞いて『先生の白い嘘』という作品だとうかがい、原作を拝読した時、センシティブな話だし、これを自分が演じるのは大変なことだなとは思いました。

――お話をいただいた時は、ご自身の演技経験的なものは。

ほぼなかったです。身内で、といいますか誰かしら先輩や仲間がいる作品。主演が基本的に同じ事務所の誰かという作品だったので、そういう意味で言うと、主演が奈緒さん、横に三吉彩花さんがいて、風間(俊介)さんは先輩ではあるけど俳優として第一線で活躍されている方の中に自分1人で入ってくっていうのは初めてだったので、そういう意味で“胸を借りる気持ちで”とか言っていられないな、みたいな。胸を借りる気持ちでやる作品じゃないから(笑)頑張んなくちゃなって。

――結構プレッシャーは感じていた。

めちゃくちゃ感じましたね。ちょっと自分には荷が重いというか、自分のポテンシャルを超えている作品なんじゃないかなって正直思ってしまった。でも、結局やるわけだから、どうやって皆さんの邪魔をしないじゃないけど、皆さんにどれだけ追いつけるか、皆さんの中にどれだけなじめるか、撮影までたぶん1ヶ月半ぐらいから2ヶ月ぐらいで模索しなきゃなと思いました。

――今回の作品はかなりセンシティブな描写もあり、シリアスな空気で、ほかの同世代のジュニアの皆さんが出演している作品とはまた違ったジャンルですよね。

それで言うと、メンバーの作間(龍斗)が結構近い感じ。それ以前に自分はバラエティー(担当)だと思っていたから、映画のオファーが来たことの方が僕的には驚きでした。逆に作風がいわゆるキラキラ系ではなく、初めての作品がこういうジャンルだということは僕の中では特別感はありました。そういった作品から(芝居の仕事を)1歩踏み出せるっていうことが、僕はすごくうれしかったです。

――難しい役どころでありながらも、すごく役に入りこまれていたのですが、役作りや日常生活に取り入れたこととかはありますか。

役作りはまず監督と話し、自分のやり方をぶつけようっていう感じでもなかったから、とにかく本当すがるように、追いつかなきゃと。高校生らしさも考えた方がいいよねと、まず見た目から、前髪を一切切らないとか、ライブ期間中も毛量の調節とかも一切しないでツーブロックを伸ばすとか、結局剃りましたが、ひげもちょっとまばらに入っていた方がいいんじゃないか…みたいなこととか。意識から変えてかなきゃいけないなと思って。確かに新妻くんはたぶん髪を染めないし、そういうところから『演じよう』とも思っちゃダメ。新妻くんにならなきゃいけない。それでようやく僕はたぶん、新妻に近づけるような気がした。『自分が新妻くんを演じるんだ』という気持ちじゃ、たぶん全然追いつけないなって思いました。

――日常から新妻くんらしさ、を取り入れていたんですね。

撮影期間はしゃべり方もゆっくりしゃべることを結構意識していた気がします。僕は基本的にラップやっているし早口。語気も強いので、そこを穏やかにしなくちゃいけない。自信なさそうにしなきゃいけないので、ゆっくり声のトーンを落として話すことは意識していた気がします。

――たしかに私たちが普段見てきた猪狩さんのイメージとはかなり離れているかなとも思うんですけど、実際の学生時代とも結構ギャップありますよね。

ありますね。本当に逆ですね。真面目じゃなかったし、勉強は好きだったんですけど、はしゃいじゃうタイプだったから、新妻はすごく特殊だと思うんですけどそういう面でも自分とは違うなとは思いました。

――新妻とご自身は結構真逆のタイプとのことですが、なぜ自分にオファーが来たのか、考えたりすることはありましたか。

めちゃくちゃ思いましたよ。『なんで僕?』ってマジで思いました。それこそメンバーで言うと、作間の方が見た目もちょっと近いというか…。僕もなんでだろう、というのはすごく気になりましたけど、詳しくは聞かなかったです。聞くことも野暮な気がしてしまって(笑)。

――実際に作品を拝見すると、猪狩さんが新妻を演じることに納得感があるんですけど、自分自身の中ではモヤっとしたものがあった?

でも、結果的に僕にオファーが来たわけで、そこには何か理由があったのだろうから『なんで僕だったのだろう』よりも『猪狩にして良かったな』と思ってもらえる方に時間を割くべきだと考えました。

■風間俊介の計らいに感謝 “馴れ合い”では成立しない本気の芝居「怖さの中に、ものすごい優しさが、きっとあった」

――この作品に出演することについて、メンバーから反響はありましたか。

本当に何にもないですね。逆もしかりというか、あまりメンバーの作品を観たことがない。出演すること自体に対して『おめでとう』みたいなことは一切ないです。誰かが映画決まっても、僕も『おめでとう!』みたいになったことはなくて、後から『面白かったね』とか『あのシーンってどうやって撮っているの?』みたいなやり取りはあります。でもメンバーにも観てもらえたらうれしいです。

――奈緒さんや風間さん、三吉さんという共演者の方々がいて『胸を借りるつもりで…なんて言っている場合じゃない』とおっしゃってましたが、実際に奈緒さんと共演した感想はいかがでしたか。

奈緒さんは本当に、僕にとって女神のような方。とにかく現場が怖かったんです。僕にとって怖いは“恐怖”というより“不安”だった。この錚々(そうそう)たるメンツで僕なんだ、というのもあるし、トライアンドエラーでいけるものじゃない。絶対に決めに行かなきゃいけない。僕のニュアンス1つで作品の雰囲気が変わってしまう可能性もはらんでいるというプレッシャーももちろんあった。撮影が富山県だったのでホテルに帰っても1人だし、メンバーにも家族にももちろん会わない。コロナ禍でご飯にも行けない。結構過酷な環境だったんです。現場の皆さんもプロフェッショナルだから僕のことをちゃんとイチ俳優部として扱ってくれて、すごくありがたいことなんですけど、だからこそ現場のピリピリ感みたいなのは肌で感じていました。そのなかで奈緒さんは本当にオアシス(笑)。優しいし、作中ではお互いが唯一の味方だったので、お互いに寄り添える関係が裏でも築くことができました。

演技に関して『もっとこうした方がいい』みたいなやりとりがあったわけでもなく、なんの話したかも覚えてないぐらいの当たり障りもない『兄弟いるの?』みたいな話から、お互いを知っていく作業みたいなものを通してすごく安心しましたね。奈緒さんのすごいところは、支度部屋で話している時こそホンワカした雰囲気になるんですが、部屋を出た瞬間に“先生”になるんですよ。さっきまで奈緒さんだった人が先生になって存在している。僕の中で役に入るということは、集中する、周りを遮断して、オンオフをしっかり切り替えることだと感じていたのですが、先生がそこにいたら僕とこうやってしゃべるだろうなみたいな感じの空気をまとっている。普通に支度部屋でした話の続きとかを、ちょっと転換で時間かかる時とかにしても、先生と話している気持ちになる。本当に役に入るってたぶんこういうことなんだなっていうふうに思いました。

――そんな優しい奈緒さんにひどいことをし、0距離で圧をかけてきた風間さんとの共演はいかがでしたか。

怖くて…本当に怖かった(笑)。一緒のシーンは終盤にまとめて撮ったんですけど。現場にいらっしゃってごあいさつした時も、お互いの役を気遣ってくださって結構ドライな感じで『うん、おはよう。よろしくね』みたいな。 話しかけられる雰囲気じゃない。そんな僕も気軽にいける雰囲気じゃない感じだったので、本当に怖かった。

早藤が先生に、僕に関するひどい電話をかけるシーンがあって。本当なら僕はその電話を聞いてない設定なのですが、風間さんが監督に『この後、先生にかける電話を新妻の前でやっていいですか』と言って、先生にかけるセリフを僕の前で、オンのテンションで1回しゃべってくれたんです。最初は、自分は出ていないシーンだし、なぜそういうことをしているのか全然わからなくて…。周りのスタッフさんは何か察したように『じゃあ、やろう』みたいな感じで、カメラこそ回ってないけど、よーい・スタートも本番のようにやりました。でもそれによって、自分の中で、あくまで風間さんってどこかで思っていたところがあったのが、ひどい内容の電話だから、一気に新妻として早藤に抱いているであろう感情、早藤に対する憎しみを引き出してもらえた。ありがたいなって思ったんです。早藤との撮影が終わるやいなや、ディズニーとか飛行機のマイルの話をじょう舌に話してくれました(笑)。今、考えると、経験の浅い僕に“何もしない”というサポートをしてくれていた。生半可な優しさで『大丈夫だからね、一緒に頑張ろうよ!』みたいな対応をされていたら、逆に甘えちゃっていただろうし、新妻と早藤の関係には絶対になれなかった気がします。そこも風間さんが計算されていたのだと。怖さの中に、ものすごい優しさが、きっとあった。今はものすごく感謝しています。

――今まで怖かったのに急にディズニーの話をされたんですね(笑)。

それがまたすごいのですが、一気に話しかけていい雰囲気になるんですよね。それまではもう絶対話しかけられないんですが服の着方、脱ぎ方とかも全然違う。すごく偉大な先輩だなと改めて思いました。

■猪狩蒼弥が俳優一本でないからこそ目指す“俳優像”「猪狩蒼弥がチラつく役者に」

――今回の作品を通して演じる楽しさみたいなものはどこに感じましたか。

僕は基本、グループ活動していることもあり、これまではどちらかといえばバラエティーにウェイトを置いた方がいいのかな、と思っていたのですが、映像の大きな仕事をいただいて。撮影中も僕が出せる限りの力を出したけど、本当に皆さんの期待に応えられたのかはぶっちゃけ、終わった段階ではつかめなかった。試写まで2年ぐらい空いて『あれで大丈夫だったのかな』とちょっと頭のどこかでありながら過ごしていました。2年前の自分が一生懸命取り組んだものを初めて試写という形で観た時に、すごくうれしくて。自分がやったことが具現化されて、これから世に出される。初めて実る。いろんな人の思いが乗っかって…ストーリーがあって、その片隅に自分が存在している喜びを、すごく感じました。世に作品が出て、世間の人に届いて初めて“成功”と言えると思うのですが、すごく楽しい。もっと自分ではできていると思っていたところや、意外と僕が思っているようにはなっていないんだなみたいなところも結構あって、なんなら1回撮り直したいと思うぐらいのところまでいけたことも、自分本位かもしれないけど、すごく楽しいなと思いました。同時に、きっと楽しむからには成功させる責任もつきものだから、これからしっかりといろんな人に届けるように。お芝居の楽しみを味わわせていただきました。

――この出演解禁のコメントの時に、役者としてはまだまだ未熟だと。今後はこういう役者を目指していきたいみたいな展望はありますか。

もう未熟も未熟で、まったく場数も踏んでないですしワークショップも行くけど、本業の役者さんとはやっぱり厚みは全然違う。同世代の役者さんと差を埋めようと思ったら、音楽辞めるぐらいの覚悟がないとたぶん追いつけない。だからこそ、自分が目指したいのは、今回の作品は別として、僕は猪狩蒼弥がチラつく役者に逆になりたいです。この考え方がいいか悪いかはわからないですけど、プロの役者さんには絶対かなわないって正直思うんです。バラエティーに対しても言えることで、本職でやっている方、プロの芸人さんには絶対かなわない。プロのアーティストにも絶対かなわないんです。だけど、僕の中でスターの定義はやっぱり“その人がチラつく”ということ。『なにをやってもキムタク(木村拓哉)だよね』って、僕はこれ以上にない賛辞だと思う。今回のように作品の世界に染まることができることも、すごいことなんですけど、『何をやっても猪狩になってしまう』じゃなくて『猪狩がどこかにいる』というか…もっとこの先何年後かにそういうふうになれたらいい。僕はそれがすごくスターっぽいと思う。本気で役者をやりたかったら、音楽もダンスもやっている場合じゃない。役者一本ではないからこそ、役者さんとは違う意味で映像に携われる存在になれたらいいな。

――最後に今作の見どころをお願いします。

偉そうなこと言えないですが、こういうセンシティブな内容、社会的なテーマは触れづらいことだし、 あんまり主張しづらいことだと思うんです。僕も猪狩蒼弥としてテレビとか出ていきなり『おかしいじゃないですか!』とは言えない。だけど何かに変換して社会に投げかけることは、エンターテイメントの特権で、ある種アート。考えるきっかけを作るきっかけになるなと思います。もしかしたら作中に起こっているようなことに実際に遭われている方も大勢いるかもしれないから『ぜひ劇場でご覧ください!』っていうふうには僕はあんまり思わなくて、それよりもむしろそうじゃない人、無縁だと思っている人こそ、考えるきっかけになってくれたらうれしいです。

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