「痩せて可愛くなった」は呪いの言葉? 独身アラサーOLが摂食障害に…美醜のプレッシャーと恋愛依存がもたらした転落
ORICON NEWS / 2024年6月21日 8時0分
「整形でキレイになった」「〇キロダイエット成功!」。多様性の時代と言われながらも、女性が求める美の基準はそこまで変わっていないように思える。ごく普通の女性が陥るさまざまな依存症をテーマにしたオムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』でも、摂食障害について描かれている。「痩せて可愛くなった」という些細な一言をきっかけに、過食嘔吐、ヒモ男への貢ぎ、そして不倫…。“美醜のプレッシャー”に囚われたアラサーOLの転落と再生の物語とは?
【漫画】「普通のOLがなんで…」“痩せて可愛くなった”からの怒涛の転落劇に読者戦慄!
■SNSで盛況な整形・ダイエット界隈、「他人基準の美醜に囚われる女性は少なくない」
女性の生きづらさと依存症の関係をテーマにした、オムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』(コミックシーモア (C) 駒井千紘/ソルマーレ編集部)。本作は「怖い」「自分もそうなってもおかしくない」と話題を呼び、このたびドラマ化されることになった(ABCテレビ 6月23日 後11:55~)。
コミック5~7話の主人公は、些細なきっかけから過食嘔吐になる独身アラサーOL。摂食障害は「女性が陥りやすい依存症の中でも、特にメンタルも健康も破壊する危険がある」と作者の駒井千紘氏は語る。
「女性ならば誰しも、痩せたり太ったりといった体型の変化に一喜一憂した経験はあると思います。自分の健康を気にするのはいいこと。でもそれが『痩せているほうが美しい』『女性は美しくあらねばならない』、さらには『結婚相手として男性に選ばれる対象でなければならない』といった社会的プレッシャーに振り回されているとしたら──。そうした他人基準の美醜に囚われている女性は少なくないのではと、昨今のSNSの整形界隈やダイエット界隈を見ていて気になっていました」
結婚を意識していた彼氏から振られ、体調を崩した主人公。数日寝込んだ後に出社すると、同僚から「痩せた?」と心配されながら、「でも可愛くなったよ」と励まされる。これをきっかけに、ぽっちゃりしている彼女は、「太っていたから彼氏に逃げられた」「痩せたら彼を取り戻せるかも…」という思いを募らせていく。
「この主人公は、恋愛依存の傾向もありました。誰しも一度や二度は恋愛でうまくいかなったことはあると思いますが、多くはそうした経験を通して転び方や立ち直り方を学びながら成長していくものです。ただこの主人公はネグレクト気味に育ったこともあり、両親の愛情の代替を彼氏に求めるようになってしまった。近年はホスト狂いが社会問題になっていますが、不健全な親子関係と特定の人物への依存との関係はよく耳にします」
やがて年下の男性と出会った主人公は、彼に気に入られるためにさらにダイエットにのめり込んでいく。しかしその男性は“金の切れ目が縁の切れ目”をチラつかせるヒモ体質だった。過食嘔吐を繰り返していた彼女は、かさむ食費と貢ぎ代を捻出するために、上司とお金を介する不倫関係に陥っていく。ほのかな痩せ願望をきっかけに、どこまでも転げ落ちていくさまが恐ろしい。
「摂食障害の怖いところは、体だけでなく脳も低栄養状態になり、正しい判断ができなくなることです。精神的に不安定に陥り、些細な引き金が自殺に繋がってしまうこともあるようです。しかし誤解していただきたくないのは、過食嘔吐は本人の意志の弱さの問題ではないということ。むしろ意思が強い人ほど『しっかりしなければ』『美しくならなければ』と自分を追い込んでしまうとも考えられますし、その結果、脳の食欲を司る機能が侵されてしまうのが摂食障害という病気です。あらゆる依存症は『自己責任だ』と切り捨てる風潮もありますが、そうした誤解がいざ依存症になった時に『恥ずかしい』と隠したり、治療が遅れる原因にもなります。自己責任論を振り回す人ほど、実は危険だということも知っていただきたいです」
もしも周りに摂食障害が疑われる人がいたら、「見過ごさないであげてほしい」と駒井氏は語る。コミックでは自殺未遂を図った主人公を、ある女性が自助グループに繋げる展開だ。
「人生でつまずくことは誰しもありますが、見捨てず立ち直りを支援する社会であってほしい。自助グループやカウンセリングといったセーフティネットの存在ももっと広く、当たり前のものとして利用できる環境になってほしいですね」
SNSで“美しくなる努力”として整形やダイエットが称賛される風潮も、少し疑ったほうがいいかもしれない。心や体の健康を引き換えにする“努力”は、決して自分のためにはならないはずだ。
(文:児玉澄子)
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