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道交法改正から1年…電動キックボードと車&歩行者との共存の現在地は 『LUUP』代表に聞く

ORICON NEWS / 2024年7月18日 9時10分

『LUUP』代表に電動キックボードと車&歩行者との共存の現在地について聞いた

 改正道路交通法の施行から1年が経過し、電動キックボードをはじめとする新たな乗り物を街で見かけることも増えた。利用者には便利な一方で、悪質走行への批判もいまだ絶えない。そうした中、シェアリングサービスの『LUUP』が交通違反者への厳罰化を盛り込んだ「安全・安心アクションプラン2024」を発表。電動キックボードの“代名詞”として注目を集めるLuupの代表取締役社長兼CEO・岡井大輝氏に、『LUUP』の非ユーザーの視点から質問をぶつけてみた。

【画像】買い物も楽々! 座席・カゴ付きの新車両「電動シードボード」走行シーン

■新規ユーザーも順調に増加、そのためにも一部の悪質走行者を物理的にゼロにしたい

──電動キックボード等の新たな車両区分を定義する改正道路交通法の施行から1年が経過しました。現在までの手応えを伺えますか。



「まずは当初の想定以上に利用者が増えたことをありがたく思っています。最近はマンションやオフィス、駐車場などのオーナーさまからポートを設置して欲しいという声も多くいただくようになり、近所にポートができるとまたユーザーが増えるという好循環が起きています。ただそれに伴い課題も浮かび上がってきました。1つは高まる需要に対して、車両とポートの供給がまだまだ追いついていないこと。そしてもう1つがユーザーの増加と共に、一部の利用者の悪質走行が目立つようになったことです」

──実際、Xでは悪質走行者を撮影した投稿が毎日のように見られます。

「これまでも弊社では、重大な交通事故に繋がりかねない危険走行については、アカウントを凍結する対策を講じてきました。しかし、それを上回る勢いで新規ユーザーが増えているのも事実です。多くのユーザーがLUUPの利便性を実感し、正しく利用されているにも関わらず、そうした方が肩身の狭い思いをされるのは、本意ではありません。街の安全の観点からも、サービスの持続性の観点からも、これまで以上に悪質走行者を弊社のサービスから排除するような取り組みを強化していきたいと考えています」

──このたび発表された「LUUPの安全・安心アクションプラン2024」には、違反者の厳罰化制度が盛り込まれています。どのような内容なのでしょうか。

「一度でも重大な交通違反をしたアカウントは、これまで同様に無期限凍結します。加えて軽微なものを含め、取り締られた交通違反に対して違反点数を加算し、一定の点数に達したアカウントを30日間凍結します。その後、年内に一度でも違反走行で取り締まりを受けたら、無期限凍結となります。この制度の運用により、悪質なアカウントを物理的にゼロに近づけていきたいと考えています」

──厳罰化の実効性はどの程度あると思いますか?

「重要なのは軽微な違反も“罰点の対象”としたことです。電動キックボードの検挙の9割は信号無視と通行区分違反。つまり交通違反だとわかってはいるものの、軽微だからと軽視してしまっているケースがほとんどなんです。交通違反点数制度は軽微な違反を繰り返させないため、誤って交通違反をしてしまった利用者に対する注意喚起にも十分機能するはずです」

──厳罰化によって想定されるデメリットはありますか?

「安全に利用していただいている方に対しては、不要なプレッシャーをかけてしまうかもしれません。しかしすべての利用者に緊張感を持って乗っていただくための取り組みは、“ソフトウェアとハードウェアを融合し、既存のバスや鉄道では実現できなかった新たな公共交通インフラを作る”ことを目指す弊社の企業姿勢として極めて重要だと考えています」

■幅広いニーズに応える新車両、自転車感覚にしないデザインに

──今冬から新たなシェアリング車両として電動シートボードが導入される予定です。狙いを伺えますか。

「既存のモビリティの課題を解決し、より幅広いニーズに応えることを目指した特定小型原付に位置付けられる新車両です。座席付きですので、足腰の自信のない方でも乗れますし、人力で漕ぐ必要がないため中長距離の移動にも適しています。またご要望の多かったカゴ付きで、買い物や大きな荷物がある時にも便利です。こうした機能性に加えて、重要な特徴は“自転車”とは明らかに見た目が異なるデザインとしたことです」

──ペダルがなく、足をそろえて乗る仕様ですね。

「そうです。昨今はモペットやフル電動自転車といった、いわば“自転車擬態”とも言える乗り物の危険走行社会問題となっています。これらは弊社の電動キックボードや電動シートボートを含む特定小型原付とは異なり、運転免許が必要です。もちろん歩道走行はできません。ところが見た目が自転車に極めて似ていることから、無免許運転や危険走行に気づかれにくく、有効な取り締まりができていないことが懸念されています」

──特定小型原付も、歩道走行は「特定の標識がある歩道のみ」「6km/hモードのみ」といった自転車とは明確に異なるルールがあります。しかし共通ルールも多いため、“自転車感覚”で通行区分違反をしている方もしばしば見受けられます。

「特定小型原付においても“自転車擬態”は避けなければいけません。自転車との誤認を防止し、誰もが直感的に明確に自転車と区別できることが安全な交通環境を整備する上で重要だという弊社の考え方は、新車両のデザインにも込められています」

■改正道路交通法施行から1年「自治体と連携しより安心安全の取り組みを」

──電動キックボードをはじめとする特定小型原付にも「免許が必要なのではないか」「ヘルメットを義務化すべきではないか」という声も聞かれます。これについてはどう受け止めていますか?

「改正道路交通法の施行から1年が経過し、利用者の母数も増えました。弊社ではこれから交通ルールの理解・浸透度度合いや、啓発活動の認知度を調査するアンケートを継続的に実施します。これによって、たとえば免許を持っている人と持っていない人の安全意識の差や事故を起こしやすい属性といった実態が、肌感覚ではない数量的なデータとして積み上がってきます」

──電動キックボードをはじめ新たなモビリティが街に増え、既存の車両や歩行者との共存という視点が欠かせなくなりました。御社では共存に向けた取り組みをどう考えていますか?

「新モビリティも弊社のようなシェアリングサービスから個人所有のものまでさまざまあります。重要なのは市民全体の交通安全意識を高めることであり、そのためには自治体と連携した取り組みが欠かせないと考えています。ただ自治体のスタンスもさまざまで、弊社といち早く連携協定を結び、啓発に取り組んでいる自治体さんもあれば、個々人の意識に任せている自治体さんもあります。今後はさらに多くの自治体とコミュニケーションを図り、街全体を巻き込んだ安心・安全の取り組みをしていきたいと考えています」

──この1年で良くも悪くも“LUUP=電動キックボード”というイメージが定着しました。今冬には電動シートボードが導入されますが、電動キックボードの未来についてどのようにお考えですか?

「まず大前提として、弊社は電動キックボードの会社ではありません。電動・小型・一人乗りのモビリティを扱う会社です。それは、電動アシスト自転車のシェアリングからサービスを開始した当初からお伝えしてきたつもりなのですが、新車両の電動シートボードの導入で名実ともにその事実をお示しできるのではないかと感じています。また、電動キックボードの未来という点については、弊社に限ってはユーザーが決めることだと考えています。ユーザーに求められる限りは電動キックボードを提供していきますが、そうでなくなったら別の形のモビリティに入れ替わっていくでしょう。今回導入する電動シートボードもそうですし、弊社では若者からご高齢の方までご利用いただけるような3輪や4輪の新たなモビリティの開発も行っていきます。あくまで安全性が高く、かつ街のみなさまに求められるモビリティを提供するのみです。その意味でも、弊社では電動キックボードにこだわってはいません」

──今後の事業の展望を教えてください。

「弊社のミッションは『街じゅうを“駅前化”するインフラをつくる』ことですが、昨今は『LUUPのポートが近くにあるマンションに引っ越した』といった声も少しずつ聞かれるようになりました。まさに駅チカ物件を選ぶような感覚ですね。都市部でサービスが拡大すれば1台あたりのコストも下がり、それによって移動課題を抱えた地方にもさらに積極的に導入できるようになります。都市部、地方も含めた街の魅力向上を目指したポートの拡大展開。そして公共交通インフラとしての高い安全性。この2点に今後も力を入れていきます」

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