サンリオキャラクターにも変化? “見た目”だけじゃ足りない、「グッズなし」新人「がおぱわるぅ」が躍進
ORICON NEWS / 2024年7月24日 8時40分
数多くのキャラクターが存在するキャラクター大国・日本。新たなキャラクターもどんどん誕生しているが、ハローキティやシナモロールといった何十年にもわたって活躍するキャラクターの人気と知名度は盤石だ。一方、知名度はまだまだこれからだが、SNSの積極的な発信を通してスピード躍進を遂げたキャラクターがいる。2022年デビューながら、『2024年サンリオキャラクター大賞』で21位と大健闘した「がおぱわるぅ」を例に、現代のキャラクターとファンのコミュニケーションのあり方を見てみたい。
【一覧】がおぱわるぅ21位! その上は?『2024年サンリオキャラクター大賞』90位まで全部!
■ベテラン勢が上位を占めるなか、健闘した“新人”キャラクター
幼い頃に出会い、大人になった今も大好きなキャラクターがいるという人は少なくない。世の中には数多くのキャラクターが存在するが、デビュー50周年を迎えたハローキティが圧倒的な人気と知名度を誇っているのも、長年の歴史(=多くの人の大切な思い出)によるところも大きいはずだ。
サンリオが主催する人気投票企画『サンリオキャラクター大賞』でも、今年の10位以内には20年以上にわたって活躍してきた人気者たちが並んだ。歴史というアドバンテージを持たない新人キャラクターが、上位に食い込むハードルの高さが現れた結果だったと言えるだろう。
そうした中、2022年デビューながら21位とスピード躍進を果たしたキャラクター・がおぱわるぅに注目してみたい。がおぱわるぅとは「おむらいす島」に暮らす恐竜の子(本名・ぱわるぅ)。おむらいす島には親友のおばけ・ねずみピヨや“ちいさきものたち”(小さな生き物)も生息している。
「子どもとはいえ、恐竜なのでぱわるぅはとてもパワフルです。持ち前のパワフルさをポジティブに変えて、みんなと楽しく遊んだり、お困りごとを解決したりする優しい子です。ねずみピヨとの出会いも、森から出てきたねずみピヨが岩に押しつぶされていたところを、ぱわるぅが『がおっ』と岩を持ち上げて助けたことがきっかけでした。可愛い見た目からはギャップのあるパワフルさや、ちょっぴりおまぬけなところも好きだとおっしゃる方が増えています」(サンリオ 事業戦略本部 IP創造部 プロデュースチーム/以下サンリオプロデュースチーム)
キャラクターがファンを拡大するためには、グッズ展開が欠かせない。しかし、がおぱわるぅについては2022年にX(旧Twitter)で発表されて以来、長らくグッズは発売されてこなかった。主な活動な場はSNSで、イラストやマンガ、そして手描きアニメーションでファンを獲得してきた背景がある。
そもそも誕生の経緯も、これまでのサンリオキャラクターとは大きく異なっていた。
「がおぱわるぅは、新たなキャラクター開発手法を探るために実施したサンリオとCHOCOLETE Inc.による共同実験型プロジェクトで生まれたキャラクターです。完成されたキャラクターを世に送り出し、みなさんに知っていただくという従来の方法ではなく、生まれたてのキャラクターをSNSで発表し、反響を踏まえてブラッシュアップを行いながら育てていくという実験的な試み。SNSを通してキャラクターの造形だけではなく、ストーリーや世界観も含めてお伝えしていくのが狙いでした」(サンリオプロデュースチーム)
ぱっと見のフォルムから猫と勘違いされることもあるが、頭に付いているのは猫耳ではなく2本のツノ。フカフカのお腹や、もちっとしたピンクの足裏など可愛いポイントも多数備えている。しかし、がおぱわるぅがファンの心を掴んでいるのは見た目だけでなく、おともだちとのほのぼのした関係性やクスッとさせるツッコミどころといった、設定や世界観の要素も大きい。
「SNSの反響で多いのが、ぱわるぅを見ていると元気になれるというコメントです。中でも歌とダンスによるショート動画がクセになる、繰り返し見たくなるという声が多かったため、最近はTikTokやYouTubeも始めたりなど動画コンテンツに力を入れています。手描きアニメーションがゆるっとファンシーすぎないためか、男性ファンも多いのが特徴ですね」(サンリオプロデュースチーム)
キャラクターの造形の可愛さは一目で伝わる。しかし設定まで伝えるには、通常は時間がかかるもの。たとえばハローキティの身長=リンゴ5個分という設定も、おそらく50年前のデビュー当時には広く認知はされていなかっただろう。
一方であまたのキャラクターが存在する今、見た目の可愛さだけでコアなファンを掴むのは難しくなっている。キャラクターの内面性や設定をイラストやマンガ、アニメなど多角的な表現手法で、かつスピード感を持って伝えられるSNS戦略は、がおぱわるぅのスピード躍進に間違いなく奏功したようだ。
多くの人の目に触れることでデータを積み上げられる点で、SNSは有効なツールだ。とはいえ、データは必ずしもポジティブな意味を持つものばかりではない。キャラクターとそのファンダムを健全に育成する上で、時にSNSが諸刃の剣になるのも事実だ。
「たしかに『SNSの反響を踏まえて育てていく』というプロジェクトではありますが、数字に振り回されると大切なものが見えなくなることもあります。デザイナーががおぱわるぅに込めた思いを軸をあくまでブラさずに伝えていくことを、SNSを運用していく上ではしっかり意識していきたいですね」(サンリオプロデュースチーム)
なお、ぱわるぅはマンガやアニメでは日本語をしゃべらないが、サブキャラクターが具体的な言葉を発したり、説明したりなどしてユーザーとの架け橋になっている。こうした意図をデザイナーは次のように語っている。
「ぱわるぅは恐竜の子どもなので、基本的には『がおがお』といった鳴き声しか発しません。また“ちいさきものたち”は日本語を話すことができますが、普段は『キャッキャッ』と話していることが多いです。みんな言語は違いますが、おともだちなので意思疎通ができるんです」
姿や言葉は違っても、喜びを分かち合ったり、互いに思い遣ったり、パワフルなぱわるぅが勢い余って「わおっ」とみんなをびっくりさせても笑い合えたり、そんな優しさに満ちたおぱわるぅの世界に惹かれるファンは確実に増えている。
人気を受けて、いよいよグッズも発売。現在、東京・原宿「ハラカド」で初のポップアップショップが開催中だ(~7/30)。ショップ内ではグッズの販売をはじめ、巨大サイネージによる動画放映やフォトスポットなどのコンテンツもあるという。SNS生まれのがおぱわるぅが、リアルとなってどのように展開しているのか、気になるところだ。
(文:児玉澄子)
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