『光る君へ』ファーストサマーウイカ、名シーン誕生秘話 演出変更「電話口で鳥肌が立った」

大河ドラマ『光る君へ』の場面カット（C）NHK

　大河ドラマ『光る君へ』（毎週日曜　後8：00　NHK総合ほか）に出演中のファーストサマーウイカがインタビューに応じ、ききょう／清少納言役への思い、藤原定子（高畑充希）のために執筆した『枕草子』誕生シーンについても語ってくれた。

【濃厚ラブシーン】吉高由里子に柄本佑が覆いかぶさって…

　主人公・紫式部／まひろは、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書きあげた女性。「光源氏」の恋愛ストーリーの原動力は秘めた情熱と想像力、そしてひとりの男性への想い。その男性の名は藤原道長。変わりゆく世を自らの才能と努力で生き抜いた女性の愛の物語だ。脚本は大石静氏が務める。

　ウイカが演じるききょう（清少納言）は、歌人・清原元輔の娘。才気煥発。一条天皇（塩野瑛久）に入内した定子（高畑充希）のもとに女房として出仕し、心からの忠誠を尽くす。『枕草子』は紫式部（吉高）や道長（柄本佑）にも影響を与えることに…という役どころだ。

　今作で大河ドラマ初出演を果たし、いきなり作品のキーパーソン役に大抜てきされた。改めて出演の心境について問われると「もちろんうれしい気持ちでいっぱいです。清少納言といえば、日本の教育を受けていたら、どんな人物なのか詳細は分からずとも名前はみんな知っていると思います。そんな歴史上の人物で、しかも紫式部が主役の作品で、そのライバル関係にあるような印象だった清少納言役でというのは、何よりも驚きが大きかったですね」と話す。

　喜びを語る一方で「吉高由里子さんが演じられる紫式部のお相手として不足がないようなキャラクターになれば」という重圧も大きかったようで、役作りのために『枕草子』をはじめ、清少納言に関する本を読み、研究を重ねた。その中で「非常に自分と考え方だったり表現の仕方が近い人物だなと思いました」という。

　ウイカが登場するやいなや、ネット上では「清少納言の生まれ変わり」とハマり役だと絶賛する声が多く見られた。本人にもそうした反響は届いているといい「そんな、言い過ぎですよ〜と謙遜する気持ちと同じくらい、『もしかするとそうかもしれない』と思うほど、彼女に親近感を持っています。それは脚本もそうですし、残された本や書かれたものを見てもそう思うんですね。感情移入というか、『こういうときはそう言うでしょ』みたいな重ね合うような瞬間が多くあって、役を知れば、彼女を知れば知るほど、不安というものが消えていきました。演じてきて『全然、気持ちが分からない』と思うことは一度もなかったですね」と胸を張った。

　そんな清少納言の印象的なシーンといえば、第21回「旅立ち」に描かれた歴史的名随筆『枕草子』の誕生秘話。悲運に沈む定子のために「枕草子」を書き始める清少納言の姿と、それを「春はあけぼの…」と定子が読み上げるシーンを重ねた演出が大きな話題となった。

　ウイカは「定子を取り巻く中関白家の没落という言い方は嫌ですけど、元気がなくなる始まりの頃。すごく複雑な気持ちではあったんですけど、今まで物語の中で異端、変わり者、ある種の浮いた存在であったききょうが、たった一人のために『枕草子』を書き始めるという、彼女の一番の使命というか、命がけで書き始めたものだと思ったので、そこに向けての緊張感はありました。演者としては『これが1000年後まで人々と魅了するものになる』というプレッシャーを抱えての撮影になりました」と回想する。

　続けて「書と共に流れる読みの音声は、私も実は『枕草子』の冒頭の春から冬まで、原文と現代語訳の2パターンを録音していました。最初は、ききょうが読んだものを流そうという構想があったんです」と告白する。

　それでも監督・スタッフ陣が「才気煥発でハツラツなききょうが文字通り黙々と書いて、定子様にお渡しするというところは、やはり読んでいる定子の心の声で再生した方がより内容が伝わるんじゃないだろうか」という話し合いを重ねて、演出が変更されたという。

　「別現場にいる時に、監督自ら私のマネージャー宛にお電話をくださって、電話口で演出の変更を説明いただきました。いろんな見せ方を想定されているのは知っていましたが、変更されたパターンは予想外で。監督は「音声収録していただいたのに申し訳ない」と言ってくださったんですが、むしろ私はそれを聞いた瞬間に『それだー！むしろそれしか無い！すごい！ありがとうございます！』と、一瞬で情景が浮かんで、興奮と鳥肌が止まらなかったです」。

　「どういう風になるのかなという期待値のまま第21回の次回予告を拝見した」と話したウイカは「『春はあけぼの…』というセリフで2人が背中合わせで映ったシーンで、『春は』が定子様、『あけぼの』が私の声だったんですよ。本編では使われなかった私の音声を予告に使ってくださったんです。ほんの一瞬ではありましたが、あのヒーローアニメ感といいますか、これだけでスピンオフを作ってくれないかなって思いましたね（笑）」と、興奮気味に名シーンの誕生秘話に花を咲かせていた。