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電子コミック戦国時代、「どこも同じ」大量生産に無料利用…“スナックコンテンツ化”にどう挑む?

ORICON NEWS / 2024年8月20日 9時10分

懐かしい…ケータイ時代の電子コミック(『北斗の拳』/イメージ)

 日本のマンガ市場が、4年連続で過去最高を更新することがわかった。その7割を占める電子コミックが、今や確実にマンガ業界の成長エンジンとなっている。サービスも国産から外国産まで無数に存在し、今まさに電子コミック戦国時代。競争の激化は電子コミック発のヒット作を次々と生み出す一方で、作品の陳腐化や無課金利用の増加といった懸念をはらむのも事実だ。電子コミック配信サービスを世界に先駆けて展開し、今年で20周年を迎えるコミックシーモアに電子コミックの未来について聞いた。

【画像】電子コミック人気のきっかけを作ったのはこの作品! 意外な大御所が…

■ケータイからスマホへ…、あらゆる業界が参入する電子コミック市場に「どこも同じ」課題感



 個人所有のデバイスでマンガを読むという、今や当たり前のライフスタイルを開拓したコミックシーモアが今年で20周年を迎えた。前身であるコミックiが世界に先駆けて電子コミック配信サービスを開始したのは、スマホが登場する前のケータイ時代のこと。「ガラケーの小さい画面でどうやってマンガを読むの?」といぶかしむ人もいるかもしれないが、そこにはマンガ愛に溢れる工夫があった。

 「コミックiではガラケーの画面に合わせて、コマを切り分けて1コマずつマンガを見せる形で配信していました。とはいえ、ただマンガのコマをカットしていたのではなく、コミックシーモア内に専門の職人がいて、1コマずつでもマンガの面白さを損ねないよう、むしろ1コマずつだからこそ楽しめるようこだわりながら、手作業でコマを切り分けていました。デジタル事業ながら、現場では極めてアナログな作業をしていましたね」(コミックシーモア・多田知子さん)

 そうしたマンガ愛は読者にも伝わり、サービス開始から2年後には5000万ダウンロード、5年後には5億ダウンロードを達成する。コミックiの公式サイトは、iモードは79ヵ月連続1位、EZwebは302週連続1位と、名実ともに他の追随を許さぬサービスとして隆盛を極めた。

 「ところが、時代はやがてケータイからスマホにシフト。それまで大手3キャリアが抑えていたコンテンツ配信もオープンな世界になり、電子コミック配信サービスにもあらゆる業界が参入するようになりました。一方、それまでコミックiではコマの切り分けにこだわっていた分、スマホ対応にやや出遅れたのも事実です。ただそれ以上に課題に感じていたのが、『どこの電子コミック配信サービスにも同じ作品ばかり並んでいる』ということでした」(コミックシーモア・奥田茂さん)

 そもそもコミックシーモアは電子書店であり、出版社から配信許諾を得たマンガを電子コミックとして販売するのがその業態だ。これは多くの電子コミック配信サービスも同様であり、同じ作品が並ぶのは必然となる。

 「あまたのサービスから選んでいただくためには、独自性を打ち出す必要がある。そうした考えから力を入れているようになったのがオリジナルコミックの制作です。つまり、書店に加えて、オリジナルコミックを電子で創出する機能も持つようになったわけです」(奥田さん)

 2011年にはオリジナルのデジタルコミック誌『オヤジズム』を立ち上げ。同レーベルで連載された『家政夫のナギサさん』がドラマ化され大ヒットするなど、一大ムーブメントを起こした。その後もオリジナルの制作と共にメディアミックスにもたゆまず力を入れており、2023年には実に13作品がメディア化。これは電子コミック業界でもトップクラスだ。

 「コミックシーモアはユーザーの7割が女性であり、オリジナル作品も女性に喜ばれる作品がメイン。それも電子コミックらしく、エッジが効きつつも最後はハッピーな気分になれる作風にこだわっています。女性向け風俗を描いた『買われた男』やBLの『体感予報』など、一般的にはセクシャルさを想起させるテーマも、しっかりと読み応えのあるストーリー性にこだわってきたことがメディア化にも繋がっているのではないかと自負しています」(多田さん)

■大量生産にタイパ重視、無料利用…スナックコンテンツ化する電子コミック

 近年は、多くの電子コミック配信サービスがオリジナル作品に力を入れている。とはいえ、当然ながらメディア化に至る作品ばかりではない。むしろ参入ハードルが下がったことで、紙のマンガ時代以上に玉石混交が目立つようになってはいないだろうか。

 「たしかに、海外からの参入など大量生産的になっているかもしれません。また読者も二極化しており、コアなマンガ読者も多く存在する一方で、特に若年層はタイパ重視と言いますか、セリフが少なくスピーディーな展開のものが好まれる傾向があります。それが決して悪いわけではないのですが、しっかり作り込まれたマンガが埋もれてしまうのは懸念するところです」(多田さん)

 そうした、いわば“スナックコンテンツ的”な作品が増えたことで、もう1つ課題となっているのが無料利用の増加だ。同社ではサービス展開当初から無料施策を行なってきたが、これはかつてリアル書店で見られた“立ち読み”に近い意味合いで、無料で試し読みし、続きが気になったら課金するという好循環を生んできた。

 「無料がきっかけになればいいのですが、無料で読むだけで終わってしまうと、出版社さん、作家さんに還元できず、ひいては日本のマンガ文化を衰退させかねません。無料施策は今後も新しい作品に出会ってもらう施策として継続しますが、続きが気になる紹介の仕方、続刊を購入しやすい施策など、にこれまで以上に力を入れていかなければと感じています」(多田さん)

 コミックシーモアのサービス開始から20年。今やすっかり世界中に定着した電子コミック業界は、LINEマンガ親会社の米・ナスダック上場、めちゃコミック運営会社のアメリカ投資ファンドへの売却など、グローバル規模で大きな転換期を迎えている。日本から世界に先駆けて業界を牽引してきたコミックシーモアも、この電子コミック戦国時代に決して安穏としてはいられない。2022年には、全米最大級のデジタルマンガストア『MangaPlaza』を立ち上げた。

 「従来、アメリカでウケる日本のマンガといえば、ジャンプ作品を中心とする少年マンガ。女性向け作品ではコアなBLファンはいるものの層は厚くないというのが定説でしたが、MangaPlazaではストーリー性のある女性向けコミックが非常によく読まれています。また海外向けマンガではwebtoonが注目されていますが、購買傾向を見るとむしろ作品重視で見開きマンガも人気です。電子コミックの普及で、海外のマンガ読者の目も肥えたのかもしれません」(奥田さん)

 紙と電子を加えたマンガ市場は2020年以来、4年連続で過去最高を更新し続けている。とはいえ、人口減が続く日本でマンガ市場が今後も安泰だとは言い切れない。マンガ大国・日本の会社という自負を持ち、日本の良質なマンガの海外展開に意欲を見せるコミックシーモアの次の20年に期待したい。

(文:児玉澄子)

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