安住紳一郎、ラジオがつないだ田中敦子さんとの“縁” 『にち10』リスナー「完熟マンゴー」の軌跡

安住紳一郎アナ （C）ORICON NewS inc.

　25日放送のTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』（毎週日曜　前10：00）では、20日に亡くなった声優の田中敦子さんが、同番組のリスナー「完熟マンゴー」として出演していたことを受け、過去の音源などを流しながら、偲んだ。

【動画】正体がバレるまで…『にち10』リスナー「完熟マンゴー」の軌跡

　同ラジオでは、パンダの命名企画が行われており、リスナーたちで「パンダJAPAN」A代表を結成。そのメンバーのひとりに「完熟マンゴー」がおり、当初は正体がわからないまま“意気込み音源”がオンエアされた。その後の放送で、安住紳一郎アナが「メンバーとのやり取りを聞き直していて、気になることがありまして。ひとり、やたら上手な人がいませんか？完熟マンゴーさんなんですけど…」と切り出し、そこから田中さんが「完熟マンゴー」であることが発覚した。

　この日の放送で、安住アナは「事務所の方からも、快く許可をいただきました。ぜひ、田中敦子さんの活躍をお聞きいただきたいと思います」と紹介、当時の音源をオンエア。田中さんの“プロな一面”と“チャーミングな一面”が垣間見える内容となった。パンダJAPANのメンバーをはじめ、リスナーから悼むメッセージが読み上げられた後、安住アナが「完熟マンゴー」というラジオネームの由来を紹介した。

　「直木賞をお取りになった山本文緒さんという小説家がいらっしゃるのですが、この方も3年前に若くしてお亡くなりになっているのですが。山本さんは大変繊細で温和な方なんだけど、書かれる作品は大胆な描写があり、そこに毒気もあって、田中敦子さんが大好きということなんですよね。その山本文緒さんの『20×20』という小説があって、その小説の主人公が小説内で名乗っているペンネームが『無花果（いちじく）たわわ』なんですよね。そこから真似て『完熟マンゴー』というラジオネームを考えたんですと教えてくださったことがあります。『私は普段、そんなに大胆な行動をする方ではないんだけど、この無花果たわわから考えた完熟マンゴーという名前を名乗ることで、今までと違う自分になれるんじゃないかという気がして、ラジオでの投稿を始めました』ということなんです」

　山本さんが亡くなった時、田中さんは同ラジオに曲のリクエストを送っていたそうで、安住アナは「当時、リクエスト理由は番組ではお話ししなかったんですけど、実はそういう理由があって、この曲をリクエストしたということだったようです。その当時は山本文緒さんのためにかけてくださいということだったんですけど、きょうは田中敦子さんのためにお聞きいただきたいと思います。荒井由実さんで『瞳を閉じて』」とコメント。曲が終わると「田中敦子さん、どうか御霊が安らかな眠りにつかれますように、心よりお祈り申し上げます。そして、ありがとうございました」と呼びかけた。

　同ラジオに出演している中澤有美子は、同番組のホームページで「放送後記」として「田中敦子さんが、にち10を聴いてくださり、また、パンダJAPANのメンバーとして私達と遊んでくださり、本当に光栄なことでした。ただただ寂しいです。心より、ご冥福をお祈りいたします。“背番号2番、完熟マンゴー”は、永遠です」と記した。

　4年前、安住アナにインタビューを行った際、視聴者・リスナーとの関係について次のようなことを語っていた。「私たちがやっている放送、つまりテレビもラジオも、受け手となる視聴者や聴取者の皆さんと決して強い絆っていうものを作ることはできません。ただし、それは悪いことだけではないです。強い絆も大事なんだけど、それだけだと息がつまるから、薄くつながっている人たちをたくさん持っておくことが、ピンチの時に助けてくれることがあるのではないかと感じています。そういった部分は放送が担えるところで、それがこれからの社会にも必要になってくるのではないかと考えています」。

　安住アナ、中澤、そしてリスナーが作り出す「にち10」ならではの“つながり”から生まれた「完熟マンゴー」との縁。「薄くつながっている」からこそ、最初は正体を明かさず、フラッと企画に参加することもできたのかもしれない。当時の音源を聞きながら、フッと笑い、そして涙するリスナーも多かっただろう。

　番組の模様は、放送後1週間以内は「radiko」で聞くことができる。